第4話 初めての戦い


 ジャンは今、母ミティアと飼い犬のアルフ、飼い猫のミー、キュート、ギンと共に村の集会所に居ます。

 

 老人、子供、女性は皆集会所に集まり、若い男達はジャンの父ゼルゴや自警団と共にゴブリン討伐に参加しています。


 ジャンは昼間のゴブリン達を思い出し身体を震えさせます。


 そんなジャンを心配そうに見つめるキュートとギン。


 皆が不安げな顔をする中、集会所に一人の若者が入ってきました。


 「皆、ここから避難してくれ!! ゴブリンの数が思ったよりも多い。このままだとここにもゴブリンが来る。だから早くフィンデの街に向かって逃げる準備をしてくれ!!」


 若者はそう言うと、来た道を戻って行きました。

 戦いの場へと戻ったのでしょう。


 皆、若者の言葉に動揺します。


 「皆落ち着くんだ。冷静に避難しよう!!」


 村長が声をかけ、混乱する事なく避難が始まりました。


 ですがジャンは動きません。


 「ジャン、どうしたの? 早く移動しないと」


 母ミティアがジャンの手を引きますが、ジャンは顔を俯かせたまま動きません。


 「···父さんや他の戦っている皆はどうなるの?」


 ジャンの言葉にミティアは何も答える事ができません。


 それで父親達が絶望的な状況にある事をジャンは理解し、涙目になりながら父親達の方へと向かおうとします。


 「行っては駄目よジャン!! あなたが行っても足手まといになるだけ」


 ミティアはジャンを抱きしめ、ジャンを引き止めます。


 「でも父さんや皆が!!」


 大粒の涙を流しながらジャンは必死に振り解こうとしています。


 「ジャン。お前が行って、お前が危険に晒されたらゼルゴが悲しむ。分かってくれ、頼む」


 村長が頭を下げたのを見てジャンは身体の力を抜きます。


 「···僕はなんて無力なんだ。父さんのピンチだというのに何も出来ない」


 涙を地面に落としながらジャンは己の無力さを嘆きます。


 キュートはそんなジャンを見て決意します。


 「ジャン、大丈夫にゃ!! オイラがなんとかするにゃ!!」


 「な、なんとかって?」


 ジャンがキュート見ると、キュートはニヤリと笑います。


 「オイラに考えがあるにゃ!!」



        ◆◆◆



 ところ変わってゼルゴと自警団はというと、村の前に作ったバリケードをゴブリン達に壊され、村へと侵入しようとするゴブリン達と戦っています。


 「なんとか皆持ち堪えるんだ!! 時間さえ稼げればフィンデの街から応援が来る。耐えてくれ皆!!」


 「「「おう!!」」」


 ゼルゴの叫びに皆が応えます。


 しかし、皆一生懸命戦うもののゴブリンの数が多く、次第に後方へと押されていきます。


 「くっ、敵の親玉さえ倒せればどうにかなるんだが」


 敵の親玉であるゴブリンジェネラルは用心深く後方に陣取ったまま動きません。


 だんだんと疲弊が溜まっていき、自警団から怪我人が出始めます。


 「怪我をしている者は後方に下がれ!!」


 指示を出しながらゼルゴは死を覚悟します。


 せめてミティアやジャン達が逃げれるだけの時間は稼ぐと心に誓った時、横合いから近付いてくる集団が。


 応援の騎士団かと思ったゼルゴですが、その集団は、動物の群れで形成されていました。

 その動物達はゼルゴや自警団の者達にとって見慣れた動物ばかりでした。


 何故ならその動物達は、村で飼育されている動物達だからです。


村で飼育されている鶏や牛、飼い犬や飼い猫もいます。

 その中には、ゼルゴか飼育している羊や飼い犬のアルフ、飼い猫のミーの姿もありました。


 動物の集団はゴブリン目掛けて突進します。


 ゴブリン達が怯み、隙が出来ました。


 今がチャンスとゼルゴと自警団の皆は怯んだゴブリン達を倒していきます。


 動物達も一緒にゴブリンを倒すのを手伝ってくれます。


 だけど、問題の敵の親玉であるゴブリンジェネラルはゴブリン達を置き去りにして逃げ出そうとしています。


 ここで逃がせば、また襲いに来るに違いありません。


 ゼルゴは逃がすものかとゴブリン達を切り伏せながら追いかけます。


 しかし、ゴブリン達があまりにも多く、先へと進めません。


 ゴブリンジェネラルに逃げられると思ったその時、ゴブリンジェネラルの元に一匹の銀狼が向かいます。

 ギンです。


 ギンの背中にはキュートも乗っています。


 ギンはゴブリンジェネラルに襲いかかると、簡単にゴブリンジェネラルの首を噛みちぎりました。


 ゴブリンジェネラルを失ったゴブリン達は烏合の衆と成り果て、ゼルゴ達と動物達により討伐される事となりました。


 ゴブリンを倒した後、何故動物達が助けてくれたのかゼルゴが不思議に思っていると、息子であるジャンがゼルゴの元へとやって来ました。


 「ジャン、どうしてここに!? 逃げなかったのか!?」


 「···うん、ごめんなさい。父さん達が心配で」


 申し訳なさそうに謝るジャンを見てゼルゴは溜息を吐きます。


 「わかった。その事はいい。で、この動物達はお前の仕業なのか?」


 ゼルゴの言葉にビクッと身体を震わすジャン。


 「···うん、キュートにお願いして、動物達に父さん達を助けてもらうようにお願いしてもらったんだ」


 そのジャンの言葉にゼルゴと自警団の皆は目を丸くさせます。


 「驚いた。キュートが動物達と話せるのは知っていたが、まさか動物達が助けてくれるとはな」


 自警団の皆は助けてくれた動物達を笑顔で撫でています。


 ゼルゴも羊や飼い犬のアルフ、飼い猫のミーを撫でながらジャンに視線を向けます。


 「ジャン、ありがとう。お前達のおかげで助かったよ」


 ゼルゴに褒められて、ジャンやキュート、ギンは嬉しそうにしています。


 ジャンはキュートとギンを撫でながら、いつの間にか登った朝日を眩しそうに見つめます。と同時に遠くの方から騎士団がこちらに向かっているのが見えました。


 皆、来るのが遅いと笑いながら駆けてくる騎士達を見つめています。


 動物達の助けによって村の危機は去りました。

 

ジャンは動物達の力を借りてゴブリン達を倒したのです。 

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