第17話
財布と銃を持って奈々川さんの後を追う。彼女はラーメンショップへとスケッシーをつれて歩いて行く。
「はは。そんなに急がなくてもラーメン屋は潰れないって」
私は珍しく冗談を言った。
「そんなことありません。現に……お客さんがいませんよ」
ラーメンショップ(嵐のラーメンという名だ)の店内は客が一人もいなかった。そういえば私はこのラーメンショップの餃子を、島田と津田沼にあげた時があった。まずいが独特の味でまた食べたくなるのだ。
日課である島田への電話は後でもいい。
ラーメンショップへと入ると、無愛想な店主と一人の女性バイトがいた。女性バイトが席に着いた私たちに無愛想に「何にする」とメニューを持って来た。スケッシーは私の足元でナルトを要求する。
店内は少しだけ薄暗くカウンター席だけのようだ。
店主は奥の調理場だ。
「私。チャーシューメン。夜鶴さん。頑張ってください」
奈々川さんがメニューを受けずに注文した。
「……俺は餃子と……ラーメン二杯」
女性バイトがメニューを受け取って奥に行く。
「ねえ。夜鶴さん。私たちって、不思議ですね。何と言うか……私を匿っている……という仲なんですよね?」
女性バイトの配る御冷やを飲みながら、私たちは小声で会話をする。
「ああ」
私は下を向いた。
「でも、いつまで……なの……かしら……?」
「うーんと」
答えがでない。そういえば考えたこともなかった。
「私……ずっと……自由になりたかった。……子供の時から。でも、今は幸せなの。本当に……。何でだろう?」
ラーメンとチャーシューメンが届いた。
「さあ。栄養取りましょう」
ラーメンはうまい。
餃子は……うーん。
ラーメンを食べ終わると、店主が二杯目を奥の調理場から目を輝かせて作っている。
店主と女性バイトが何やら目を合せる。
次の瞬間。
「ハイッ!」
店主が奥の調理場から空を飛んだ!女性バイトの袂に着地し向き合った!
「ハイッ! ハイッ! ハイッ! ハイ! ハイ!!」
と両者が両手を信じられないスピードで打ちつける。
その次は手を繋いで両者は美しいバレリーナよろしく片手を広げ合い。こちらにお辞儀をした。店主がそれを終わらせると、奥に置いてあるラーメンを私の元に静かに置いた。
「百杯目のラーメンです」
…………
「ラーメン美味しかったですね。また来ましょうよ」
奈々川さんが私に言う。
「わん!」
スケッシーもまた来たいようである。
「ああ。餃子をまた食べたいし、来週にでもまたくるか」
「運が良かったですね。特別な百杯目のラーメンですね」
「わん!」
「ああ。藤元に感謝しないと……」
スケッシーの散歩はまだ続いている。3回と近所をグルグル……。
途中、藤元さんの家にあの芸能人?の藤元が自転車で帰ってきた。
「あ、藤元さんですよ。そういえば藤元さん家の近くのラーメン屋で……と言っていましたっけ。ご近所だったんですね」
奈々川さんの家の正面にある藤元さんの家が藤元だった。今まで2年間も何度も通っていたが……。(藤元が云話事町のテレビに出るようになって有名人になったのはつい最近だ。)興味がないので気が付かなかった。
黒い色の家だった。
「有名人なのに、どうして信者がいないんですかね?」
「さあ。きっと鼻毛が伸びているからだろう」
私が冗談を言うと、自転車を置いてから藤元が走って来た。
「鼻毛! 鼻毛! 言うな!!」
藤元が怒っている。
「ああ……。すまん。でも、何で信者がいないんだ?」
私は顔に近づかれた神社なんかで使う棒を気にせずに言った。
「解りません……。」
奈々川さんが可哀そうと呟いて、
「あの。百杯目のラーメンを食べて、栄養を取ってみては?信者の人が来るかも……」
「うーん。それしか……無いか……。僕は栄養失調なのかも……。」
藤元が下を向く。
「テレビで宣伝しても駄目なら……諦めるのは?」
私が真顔で言うと、
「違う! アナウンサーの人が宣伝の邪魔をするだけなんだ!」
「祈るのは?」
「全然駄目だった……。毎日祈っているんだけどね」
「うーん。やっぱり諦めるのがいいのでは?」
藤元が泣いた。
スケッシーが野良犬のメスを発見、早く散歩の続きをと急かす。
「わんわ、わん」
仕方なく、藤元を置いて散歩を再開した。
「いつかきっと! 信者をたくさん集めてやる!!」
藤元の断末魔が轟いた。
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