第16話

「おい! てめえら!」

 数人の男たちの間から発砲するものが出た。

「あ、はははー! 打つぞー!」

 島田が発砲し、私もハローポイントを疑問も付けずに撃った。

「ぎゃあ!」

 一人の男の腹に命中し、その男はアスフャルトの上に倒れる。

 向こうも撃って来た。

 私と島田、そして津田沼は、島田の車の後ろに素早く身を隠す。

車が被弾する。

「ああー! 俺の車に何て事しやがる! 夜鶴!あいつら絶対殺そうぜ!」

 回りの人々が逃げ惑う。

 私と島田は車から少しだけ身を乗り出しては発砲した。相手も応戦する。バリケードの島田の車が、弾丸でべこべこになる。

 発砲で耳が痛い。

「死ねー!! 貧乏人!!」

 数人の男の中にはウージーを持つ者がいた。

 イスラエル製のサブマシンガンだ。

 大量に弾丸を吐き出し、島田の車が廃車になってしまいそうなので、急いで隣の知らない奴の車へと、私たちは走り出した。

「この野郎―!」

 島田が走りながらベレッタの空になった弾倉を素早く交換した。

私もそれにならって弾倉を交換すると、昔の射撃場での訓練を思い出しながら銃を構えた。

 精神を集中した私はあっという間に、ウージーの奴を撃ち落とし。

 しばらく、B区の奴らの雨のような弾丸と私と島田は撃ち合っていた。

 


「夜鶴さん。お帰りなさーい」

 手に付いた硝煙の匂いをそのままに家に着くと、奈々川さんがキッチンでスケッシーと遊んでいる時だった。

「今帰ったよー」

「ご飯は熱々のコンビニ弁当ですよ」

 コンビニ弁当が二人分テーブルに置いてある。

「ああ。でも、俺って朝は食べないんだ」

「え、そうなのですか?栄養取りましょうよ。おいしいですし」

 私はスケッシーの頭を撫でながら。

「この犬も朝は食べないんだ。俺と一緒で」

 奈々川さんが小首を傾げて、

「え、そうなのですか? でも、さっきいっぱい食べてましたよ?」

「え?」

 見ると、スケッシーは大きかったであろうドックフードの塊を食したようだ。口の周りにころころしたものが付いている。

「ね。栄養取りましょうよ」

 私は空いていない腹を気にせずに……。

「解った……」

 奈々川さんが微笑んで、

「あ、そろそろ云話事町TVが始まる頃です。テレビ付けて下さい」

 私と奈々川さんが黒いテーブルに着くと、私はテレビを点けた。


「おはようございます。云話事町TVッス」

 美人のアナウンサーがマイクを握りなおした。背景は珍しくB区のビルディングだ。

「ここB区で殺人事件がとある工場で起きました」

 美人のアナウンサーが声のトーンを少し落として、

「最近多いですね……。けれど、警察の調べが遅れていて詳細はお話出来ません。で……何かが起きているのでしょうか?」

 美人のアナウンサーが藤元にマイクを向ける。

 藤元は神社でお祓いなどで使う棒を一二度振って、

「さあー、解りませんねー」

「解れ!」

 美人のアナウンサーが眉間の皺を気に出来ない程に微笑む。

「では、今日の運勢とお天気は!」

「はい。運勢はA区にある僕の事務所兼マイホームの近くにあるラーメンショップで、ラーメンを二杯食べると……とても良いことが起きます。でも、決して宣伝してるわけじゃありません。そして、今日の天気は……」

 藤元が空を見つめる。

「晴れです……多分」


 テレビを消すと奈々川さんが立ち上がり、

「夜鶴さん。夕食はラーメンにしましょうよ。近所のラーメン屋。そこにしましょう」

 さっきの藤元の今日の運勢どおりの行動を、奈々川さんが実践したがった。

「きっと、いいことが起きるはずです!」

「ああ。そこで食い終わったらスケッシーの散歩を一緒にしたい」

「ええ。いいですよ。私もスケッシーが大好きです」

 私は銃撃戦のせいで、徹夜ハイが通り過ぎて適度な眠気がでるまで、奈々川さんとゲームをした。

 島田の車も無数の弾痕ができて、私の車もスヌーピーの絵のところに傷がある。金がないから修理できないし……。

 弥生も不自由な足の治療も不可能だし……。

 このA区に来たら再び立ち上がれる者なんていないのだ。一生B区の食い物となる運命になる。

 

「うー。わんわん」

 スケッシーだ。

 私は床から起き出して、頭のところに置いてある目覚まし時計を見た。17時少し前。スケッシーは時間に正確だ。隣のベットには奈々川さんが昼寝をしていた。

 私は奈々川さんの寝顔を覗く。目元のホクロがチャーミングなのはもう知っている。向日葵のプリントの付いた黄色のシャツと青のジーンズの姿だ。向日葵が好きなようだ。

 自然に瞼を開けた奈々川さんが、起き上がった。

「ふあ……。さあ、ラーメン屋さんに行きましょうよ。確か二杯でしたよね。しっかりと栄養をとりましょう」

「ああ」

「わんわん」


…………

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る