姉と妹 46日目

 鈴音が部屋に来てから、今日で三日が経とうとしている。

 まだ一緒の空間にいることには馴染めていないけど、殺風景だった生活が一気に華やかになったみたいで、日々のルーティンにも少し張り合いが出てきていた。

 夕食もほどほどに済ませ一息ついたところで、大家さんからかかってきた電話に鈴音は部屋で応対をしている。

 その間、私は二人分になった食器を洗いながら戻ってくるのを待っていた。


「ブレーカー、日曜日までには直るって」


 話し始めて十分程度過ぎた頃にリビングにひょっこりと現れ、ようやく進んだ修理の話に鈴音は胸を撫で下ろしていた。


「それは良かった」


 少し遅れて洗い物を済ませて、手を拭いてから先にリビングでくつろいでいる彼女の隣に腰を降ろして二人でテレビでしている映画をぼんやり眺めていた。



 ふとすぐ横に顔を向けば、誰かさんの置き土産のクッションをひいて足を崩している友達がいる。



 この間までは体育座りをしていたのに、私の部屋に慣れてきたのか体勢にも少し変化ずつ安心が出てきていた。


「どうかしたの?」


 視線に気づいて、鈴音が振り向いて訊ねてくる。


「何でもないよ」


 くつろげていることを確認できただけで十分だったので、そのまま首を横に振ってテレビに向き直る。

 私の部屋が、こうして安らげる場所になってくれているのを知れただけでも今は嬉しかった。

 


 できれば、もう少しこのままの時間が続いてくれたら——。



 そう想って、考えるのを止める。

 ここのところ、自分の欲だけが肥大していくばかりでまだ鈴音のことをきちんと知っていない事実が消えていきそうになる。

 誰にだって言えないことの一つや二つはあると思うが、私はあまりにも理解しないままに欲張りになっているので、いつか愛想を尽かされてしまうんじゃないだろうか。

 そんな不安が、ぽつぽつと浮かんでくる。

 濁り始めていく頭の中を無視するようにテレビに集中する。



 今は、家に戻るまでの間鈴音を無事に泊めてあげることだけを考えることにした。

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