心と贈り物 16日目

 私たちがいつも使っている駅は大型ビルが隣接していて、その中には全国でも有名な雑貨店が地下から屋上までを自社の製品で埋め尽くしていた。

 そのビルにある食料品店のお菓子コーナーで、私はショーケースとしばらく睨めっこをしている。


「三咲って、チョコとか食べるのかなぁ」


 クッキーや生チョコの詰め合わせの商品を一つずつ見比べながら、一人でそう呟く。

 あの時のお礼をまだ何も決めていなかったので仕事が終わってすぐにここへ来たのは良かったのだけれど、実際に何を渡せばいいのかまだ検討すらついていなかった。


 

 服やアクセサリーは個人の好みで変わってくるからお礼の品としては難しいし、かといって今眺めているお菓子の類は何だか社交辞令みたいな感じがして友達に送るにはよそよそしい気がしている。

 そもそも、前に三咲自身が物事に興味がないって言っていたからこういった粗品を送っても喜んでくれるのか少し怪しい。

 よく身に着けている服の色や形の傾向もまだはっきりとは分からないので、贈り物選びは思っていたより難航していた。



* * *



 長い時間続いたショーケースたちとの睨みあいも、閉店のジングルと共に終了を迎える。

 結局、これといって目ぼしいものは見つからず、どれもしっくりとはこなかったので進捗としてはあまりよくはなかった。



 いっそのこと、本人に聞こうかな。



 思い立ってすぐにスマホを取り出す。

 それからすぐに、三咲の回答が脳裏をよぎる。



 おそらく『何でもいいよ』って言いだしそう。

 何の迷いもなく言いそう。



 今まで私の言ったことに否定的な態度をしたことはなく、何でも頷いてくれる彼女なのでその光景がすぐに目に浮かんでしまい、わざわざ聞くのもどうかなと思い取り出したスマホを再び鞄に戻す。


 それに、こういうことは本人には内緒の方がサプライズとして良いかもしれない。

 

 そう理由をつけて、なかなか思い通りに進まないプレゼント選びに落胆しながら入り口にまでとぼとぼと引き返していく。



 帰路に着く中で、最初に出会った時の美咲の顔が不意に映し出される。

 あの優しさに見合うお礼を選ぶのには、もう少し時間が掛かりそうだった。

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