心と贈り物 15日目
照り付ける日差しの強さは先週よりもさらに勢いが増していて、外を少し歩くだけでもじわじわと身体が汗ばむようになっている。その暑さを感じる度に、夏が本格的に始まったことを告げられているような気がしていた。
燃えるような熱に悩まされながらも、今日の仕事も半分終わってお昼休みに入ったところでスマホが小さく音を鳴らす。持ってきたお弁当のお箸を一旦置いて取り出すと、三咲から『今日暑いけど大丈夫?』と心配するメッセージがきていた。
彼女からの通知に心が躍りだし、『今日の残りは屋内で仕事だから大丈夫だよ!』とにこにこしながら打って返信をする。
この間のバーでの出来事以降、三咲も遠慮なく色々送ってきてくれるようになり、やっと友達みたいになれたのが嬉しくて、ここ数日は彼女から何かが届くのが楽しくなっていた。
「……何だか嬉しそうね。良いことでもあったの?」
送ったメッセージが早く届かないかなと祈りながら再びお箸を手にすると、野中さんが一人勝手に喜び続ける私に不審感を募らせながら訊ねてくる。
「ある人と、ようやく友達と呼べるようになれたので」
私の回答に、野中さんはまだ首を傾げたままでいる。
けれど、このことは私だけが分かっていればいいので特に気にしたりもしなかった。
誰かからの何気ない言葉を心待ちにするなんて、何時以来だろう。
そう思わせてしまうほどに最近は出会いといったものに縁はなく、よくて社内の野中さんぐらいしかなかったので、良くも悪くも学生時代との違いを実感させられていた。
それを分かっているからこそ、仕事以外での繋がりが出来たのが純粋に嬉しくて何かのルーティンのように繰り返される日々が彩られていくようだった。
でも、私はまだ三咲にしていないことが一つ残っている。
仕事やこの間の一軒でうやむやになりかけていたし、そんな大きなことではないかもしれないけど、本来の目的はそれだからそろそろ決めて渡さないといけなかった。
あの時のお礼、一体どうしよう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます