出会いと再会 4日目
今日も何事もなく一日が過ぎ、日が西へと傾く。週も半ばになり、一週間の仕事にも終わりがみえはじめると、駅内を歩いているほとんどの人は残り二日の休みを楽しみにしていた。
そんな彼らと一緒に改札口に向かう私の頭の中には、相変わらず彼女のことが浮かんだり消えたりを繰り返し、多くの人が行き来する構内に紛れていないかとつい目で探してしまう。
けれど、それで簡単に見つかるほどここを通る人の数は少なくはなかった。
「……何やってんだろ、私」
夢見がちな自分に、嘲笑気味にぽつりと呟く。
学生の頃じゃないんだから、偶然なんてそう何度もあるわけがない。
昔から、運命や奇跡といったものを言葉から否定しがちで、全ての出会いには理由があると考えて生きてきた。現に、今の職場にいるのも今までの人生も全て自分が選んで通ってきたものだから、そこに偶発的なものなんて存在しない。
——そう、思っていたはずなのに。
彼女の顔が目の前に現れたことは完全に想定外で、今もこうして気にかけてしまうことに上手く理由をつけられずにいる。
これが運命と呼ぶかどうかは、まだ納得のできる答えがないので正直分からない。
だけど、もし明日会うことが出来たら。
私が否定してきた言葉を、少しだけ信じてもいいかもしれない。
会えなかった事実を噛みしめながら、他のサラリーマンや学生たちと一緒に駅のホームに降り立つ。
明日こそはと胸に淡い期待を抱きながら、帰りの電車を一人静かに待つことにした。
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