出会いと再会 2日目

「はぁ…………」


 お昼休憩のチャイムが鳴るのと一緒に、口から大きなため息が溢れる。今日の仕事は急ぐものがないので忙しいことはなく、だからといって誰かと揉めたわけではなかった。

 けれど朝から気分はほんの少しだけ下がっている。


「どうしたの? そんな大きなため息ついて」


 心配して声をかけてきたのは、隣の席の野中さん。私の先輩で、色々面倒見がよくてお世話になることが多い人だ。


「いえ、大丈夫です!」


 元気に応えてさっきの雰囲気を打ち消してみるけれど、先輩は依然疑いの眼差しを向けている。ずっと凝視してくるものだから、余計に緊張してしまい次第に目が泳ぎ始めていた。


「……もしかして、昨日のこと考えていた?」


 言い当てられてしまい、ドキリとするのと一緒に肩が持ち上がる。

昨日は始業ギリギリで出社していて、そのことを先輩に聞かれた際に一通りの経緯は話しているので、確信を得た先輩はほっとしていた。



 ——気のせいかもしれないが、一瞬目があまり笑っていないように見えてしまっていた。



「昨日の晩も、今朝も電車で見かけることがなくて……。どうしたらいいんでしょう」


 特徴といえば、私より背の高いショートヘアーなのと薄水色の作業着を着ていたことぐらいで、通勤中に周りを見回して探してみるけれど意外と両方一致する人がおらずモヤモヤとした気持ちを募らせていた。


「昨日の今日なんだから、そう簡単にはいかないわよ」

「それはそうですけど……。助けてもらったのに何も言えないままなのが嫌なんです」


 私の正直な気持ちに、今度は先輩がふぅと息を吐く。


「あなたのそういうところはとても良いところだけれど、何事も焦らないことね」


 それだけを言うと、先輩は社員食堂へとそそくさと行ってしまっていた。

 その後を追うように、わたしも財布を持って追いかける。



 ……明日こそ、会えるよね?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る