4-7 共闘と真敵




 ここ最近『二度あることは三度ある』という言葉が非常に身に染みる。


 いつ破綻したとしても決しておかしくはないような関係なのに……いや、だからこそなのだろうか、運命というものは危機的状況をまるで息をするかの様に次へ次へと提供してくれる。


 ここ最近でいえば、義妹の同僚(同性愛者?)と中学からの親友に彼女達との秘密の関係がバレるわ、雪音の配信に何故か他二人が参戦するわで、17歳ながらに平凡とは程遠いドキドキした日々を過ごしていたのに、今日はまさかの義妹が所属しているアイドルグループのメンバーとマネージャーが家庭訪問(?)にきている。


 これまでの傾向から考えても、この状況で何かが起こる事はほぼ確実。いや、インターホンが鳴った時点ですでに確定演出なのかも。


 一体いつになったら俺に今までのような平凡な日々が戻って来るのか……


 あれ?よく考えてみたら運命とか格好つけたけど、俺ってあの三人に振り回されてるんじゃね……?


「ちょっと、お兄ちゃん?大丈夫?」


「……へ?」


「へ?って……

 さっきからぼーっと遠くを見てたからどうしたのかな、って思ったけど大丈夫そうね。いつもみたいに間抜けな顔してるもん」


「ふっ、確かに」


「二人してひどくない!?」


 舞香の煽りに、神奈が相槌をいれると、そのいつもと変わらぬように見える光景に、他4人が少し驚いていた。


「……えーと、可奈ちゃんってぇ、いつの間にお兄さんとそんなに仲良くなってたの?」


「そうだぞ可奈。びっくりしちゃったじゃないか」


 江藤さんと、金城さんが驚きのあまりどういうことかと神奈へ尋ねる。


 ……てか、びっくりしちゃった、か。

 まさか昔の雪音のように、クール100%で形成されているように見えた金城さんからそんな可愛い言葉が飛び出すなんて。案外二人は似たもの同士なのか、それとも全人類に共通して、クールと可愛いはセットなのか。いや、どちらにしてもハッピーセットには違いないな(?)



「私と俊介は同中なのよ、それも同じ部活。

 前に会ったときは、こいつが私の事を忘れてたのよ」


「あら、そうだったのね。

 まさか私に隠れて恋仲にでもなったのかと……」


「「そんなことは絶対に起きません!!!」」


 そこで反応したのは、先の二人ではなくマネージャーである縁さんだった。


「そ、そう。まぁ、それなら安心だわ。

 この忙しい時期にスキャンダルなんて持ち込まれたら正直たまったもんじゃないもの。可奈には悪いけど俊介くんの鈍感さには感謝ね。あ、それとも美香や紫乃のようなお姉さん系が好きなのかしら?」


「あら、そうなのぉ?」


「なっ!?縁さん!?」


 縁さんの俺に対する問いに妖艶な笑みを浮かべる江藤さんと、なぜかすごく動揺している金城さん。いや、こんなこと言われ慣れているんじゃないの……?この人絶対ピュアだ、推せる。


「確かにお姉さん系は大好きですけど、お二人をそういう目では見れませんよ」


「だっ!?」


「ふーん……」


 相変わらず動揺を隠せない金城さんと、声を漏らしながらじっっっと、品定めをするかのように俺を見つめる縁さん。何も嘘は言っていないはずだが、後ろめたい事実があるからか、はたまた彼女の目力によるものなのか、体が強張り緊張が走る。


「……ふふ、まぁ、大丈夫そうね。その調子で、頼むわよ?」


「は、はい?」


「言葉の通りよ」


「ねぇ、縁さん!?なんで私は聞いてくれなかったの!」


「いやぁ、みつきはないでしょ」


「あ、はい」


「二人してひどい!!!」


 えーっと……期せずして縁さんの信頼を得ることができた、のか?


 いや、慢心こそが最も身近にいる脅威だ。

 縁さんは芸能界でもその手腕が認められているような、有能かつ腕が立つ素晴らしい管理者。そんな彼女を一般高校生である俺が出し抜けたなどと、つけ上がることなど出来るはずがない。


 ……さて、見て見ぬふりをしていたが、明らかに横に座っている義妹が唇をとがらせている。今は絶対に、私は?のタイミングではないぞ義妹いもうとよ……


「……と、とりあえずお腹でも空いたからさ、何か買いに行こうよ舞香」


「……おっけ〜」


「あら、それなら私もついていくわ。

 手土産の一つもなかったから丁度良い」


 その光景を見て何かを察したのか、目の前に座っていた神奈が突然、買い出しに行こうと提案をした。


 上手い……このたった一言により、舞香をこの場から離すだけでなく、マネージャーという保護者的立場を利用して、縁さんまで違和感なく俺から離れさせるなんて……!


「おや?みつきは今日はついて行かなくても良いのか?いつもは我先にと飛び出しいていくのに珍しいな」


「ふっふっふ、私も大人になったの!

 それに今日は、お兄さんとゲームで遊びたいからいいや〜」


 きっと本心から気になったのだろう、金城さんの純粋な問いに対して茜さんは俺と遊んでおくからいいと答えた。彼女たちがアイドルだということは抜きにして、内容だけで見てみればおかしなことなどは言っていないと思う。だが、もうわかるだろうが


「……」


 今この場においては、この答えだけは最も避けたかった……

 明らかに俺の目には舞香から黒いオーラがゆらゆらと漏れ出ているように見える……


「はぁ、なら三人で行ってくる……!? 

 ……み、みつき〜特別にお姉さんがアイス奢ってあげるけど、本当の本当に行かなくてもいいの〜?」


「アイス!?行く!!!」


 舞香の異変に気づいたのか、またもや助け舟を出してくれた……!

 神奈……いや、カンえもん!ありがとう!!!


 てか、茜さんの扱い方が幼児のそれなのだが誰もそこには突っ込まないのね……




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