4-8 四人の曲者とオタクリーダー



 さて、先程と比べて大分静かになった我が部屋なのだが、今俺の目の前には大人のお姉さんが二人。そう、金城さんと江藤さんだ。……もうこの際はっきり言おう、俺は少し江藤さんが苦手だ。


 何故かと言われたら少し困るが、きっと近しいものをあげるとするなら、腹の底が見えない。と言ったところだろう。何考えているのかわからないんだこの人。なんか、そう、とって食われそうなんだ……


「ねぇ、お兄ちゃん?」


 タイミングがいいのか、それとも無意識に目線が向かっていたのか、ちょうど彼女の事を考えていたら彼女の方から話しかけてきた。いや、何がお兄ちゃんだよ、完っ全に目がからかってやがる。


「……俺、江藤さんのお兄ちゃんになったつもりないすけど」


「そうだぞ紫乃。蒼君に失礼じゃないか」


「えー、良いじゃない。舞香ちゃんがいない時くらいお姉ちゃんを妹にしてよぉ〜」


 テーブルに両手の肘をつき、小さな顔をその上に乗せこちらを見ながらニヤニヤとそう言う江藤さん。その隣の金城さんは顔に手を乗せ天を仰ぐ。あぁ、絶対にこの人苦労人だ。


 何考えているかよくわからないお姉さんに、元気いっぱいロリロリJK。そして、腹黒同性愛者とツンデレわがまま姫。よくぞここまで個性豊かな面々を御す事ができているものだ。あの輝かしい笑顔の裏には度重なる苦労があるんだなぁ、主に身内にだけど……そう考えると泣けるし推せるよ本当に……


「はぁ、本当にすまない蒼君。この子は見ての通りどこか抜けているんだ……でも悪い子ではないから、その、そんな嫌そうな顔をしないでやってくれないか?」


「え、俺そんな嫌そうな顔していました?」


「してるわよぉ。全く、こんな美人二人が目の前に座っててこんなに動揺しない男の子はなかなかいないわよ?」


「いや、自意識過剰すぎでは……?」


「はぁ、全くだ……」


「二人とも案外ひどいわねぇ……」


 金城さんは俺の意見に同調すると口を横に引き伸ばし、うえ〜という効果音が聞こえてくるような表情をする。さっきまでの俺の顔も、今の金城さんのようになっていたのだろうか……


「まぁ良いわぁ、それよりもずっと気になってたんだけど、俊介くんって絵里さんと知り合いよねぇ?プールでも一緒にいたし」


「はい、絵里さんとは幼なじみです」


「え!知り合いとは思っていたけど、まさか幼なじみなんて……羨ましい……」


 そう反応したのは質問者の江藤さん……ではなく、苦労人リーダー金城美香さんだった。まさかこんな反応をするなんて、なんというか、その、失礼だけど女の子っぽいというか、いつもの金城さんっぽくない反応なのは事実だよな。


「あはは、この子ったら絵里さんの大ファンなのよ。あと「もしかして、もしかして!前に舞香がyuki様とゲーム実況をしてたよね!いつ知り合ったのって思ってたけど……もしかして!」


「は、はい、yukiさんは中学校時代の先輩ですよ」


「きゃーーー!!!やっぱり!すごいすごい!」


「……もう。

 ……俊介くん。言わなくても、わかるわよね」


 先ほどとは真逆というか、金城さんが前のめりになり、江藤さんが彼女を呆れた様子で見守っている。自身の好きなものを語る時は皆、少年少女に戻るんだなぁ、と。


「あはは、随分とお好きなんですねー」


「好きってレベルじゃないよ!絵里さんは女優として本格的にデビューする前から追っかけててさ、舞台『あの夏の日まで』のヒロイン役がもーーーーーーう最高でさ!あ、幼なじみだから勿論観たよね!私ったらうっかり……まぁそれは置いといて、yuki様は伝説の2回目配信『24時間耐久金太郎電鉄〜日本を飛び出て火星まで行ってみよう!〜』の時からのファンでね!あの時の衝撃ったらもう……最っ高!!!!!いや、お二方とも最高って言葉では表すことはできないんだけどね?ってか今舞香が絵里さんとやってる『妹と幼なじみ彼女〜どちらか選べなんて無理だろう〜』もさ、最っっ高よね!もうあの絵里さんの彼女役ったらもう原作にどハマりしてて……」


「ゴホン。美香、ストップ」


「最…………あっ」


 身振り手振りで二人の良さをここぞとばかりに布教したオタク、ではなく金城さんは自身の先ほどまではしゃぎっぷりに気づいたのか、瞬時に顔を真っ赤に染め上げた。


 超絶美人なトップアイドルとはいえ、オタクという人種の推しを布教したいという特性は変わらないのだなぁ。こんなんでよくプールの時は自我を保っていたものだ。


 グループ唯一の常識人だと思っていたが、どうやら彼女も重度のオタクらしい。これにてグループ全員何かしらの属性を持ったというわけだ。さすがトップアイドル、一癖では終わらない集団というわけか……


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次回投稿日は10/4(月)です。


新作短編


『誤作動から始まる隣人お姉さんとの同棲生活』


を掲載しました!お時間がありましたら是非とも御一読お願いたします!!

▼URL

https://kakuyomu.jp/works/16816700427713931088


続きが早く見たい!面白い!と思っていただけたら是非評価、お気に入り、レビュー、ブックマーク等をしていただけると助かります!創作意欲がさらに高まります!



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