四章
4-1 親友と白衣の天使
「んで、どうしたんだ?
わざわざ二人になって」
「小吉……ごめん!」
「……ん? お、おう?
別に俺は詳細を聞きたかっただけで、怒っちゃいないぞ?どうした?」
俺は神奈が帰った後、3人に小吉と二人きりにしてもらい、頭を下げこれまでの事を彼に謝った。
「いや、それもだけど、俺は……俺は、もう足は治っているんだ……今まで黙っててごめん。」
「ん?あぁ……そんなことなら、とっくに知ってたぞ?」
「……へ?」
小吉の口から本当に予想外の答えが出てきて、思わず素っ頓狂な声が出てしまった。
「俺がどんだけお前と一緒にいると思ってんだよ……でも、なんでそれを俺に隠してたんだ?」
「…………それは、足が治ったら、小吉が友達じゃなくなる気がして」
「……ぷっ。ははは、そんなことで悩んでたのか?さっきも言った通り俺はお前の味方だから安心しろ!……って、え!?なんで泣いてんだよ!」
「泣いてない、し……」
喜びからか、はたまた安堵からかはわからないが、無意識に瞳から涙がこぼれ落ちる。
「とにかく、今度からは俺にも相談しろよ?状況は少し妬ましいが力になってやるよ!
……あと、さっきの話だけど感謝するなら俺の方なんだぞ?あの時、罪悪感に苛まれてた俺に元気をくれたのは他でもない俊介じゃないか。俺の方こそお前が友達でよかったよ」
「……うん。うん。ありがとう」
「またバスケやろうな」
「あぁ!」
ずっと静かに胸の底に佇んでいた暗い思いが晴れたからなのか、俺は久しぶりに小吉の顔を真に正面から見ることが出来た気がした。
*
ピピッ
「あー……38.5かぁ。やっぱり熱があるわね」
「えー……まじ?」
俺は熱を出してしまい、ベッドから動けずにいた。昨日小吉と話した事で安心して気が抜けたからなのだろうか。久しぶりの体調不良のせいで、心身ともにものすごく疲弊していた。
「んー……今日はドラマ撮影があるから、一緒にいてあげられないのよね……
ご飯はパパッとつくって行くからさ」
「ありがとう、舞香……」
「……もう。
早く治すためにも今日は寝とくのよ?
お母さんたちも今日は忙しいみたいだから、縁さんにまとめて休むことを伝えといてもらうから、心配はしないで」
「うぅ。妹の優しさが身に染みるよ……」
「…… (うわ、なんか弱ってる俊介が可愛いすぎて襲いたい……いや、だめでしょ!相手は病人よ!?いや、けどーんー……かわいい……)
……はっ!?そ、それじゃ、用意してくるから!何かあったらメールでもしなさいよ!じゃ!」
「おーう。ありがとなぁ……」
舞香はいきなり顔を真っ赤にして、そそくさと寝室から出て行った。
舞香がいてくれて本当によかった。
いやーそれにしても、熱ってやっぱりきついんだな。今日は舞香の言う通り体調を整えるのに専念して明日から頑張ろう……
俺は枕元にあった薬を飲んで、眠りについた。
***
カチャ、カチャ……
……ん?なんだ?
寝てからどのくらい経ったのかはわからないが、もう舞香も居ないはずなのにリビングからなぜか物音が聞こえる。
もしかして、玄関でも閉め忘れて泥棒が入ったのか……?
俺はゆっくりとベッドから起き上がり、恐る恐るリビングへ近づき、扉を開ける。するとそこには
「あら?おはよう俊。起きても大丈夫なの?」
「雪音……姉さん?いや、え?」
「雪音でいいってば。
そうだ、せっかく起きてきたんだから少し食べたら?ほら、座って座って」
キッチンで雪音姉さんがエプロン姿で料理をしていた。いや、100歩譲って家にいて料理をしているのはいい。
問題はその格好だ。エプロンの下には私服ではなく、まるで看護師のような純白のナース服を着ているではないか。
雪音の薄水色の髪型と純白のナース服が素晴らしくマッチしていて、もう芸術の域に達している。
「えーと、その格好は?」
「ん?あぁ、今日は配信予定日だからコスプレをなんにしようかと考えてたらさ、可愛い義妹から可愛い義弟が病気で寝込んでると聞いてね。喜ぶかなとこれにしてみました。
で、どう?お姉ちゃん可愛いかな?」
「……最高に。」
「よし、褒めてつかわそう」
そう言ってニコッと笑う雪音。いや、可愛すぎるだろ!誰だよナース服のデザインを考えた天才は!ありがとうございます!!!!!
やば、流石に可愛すぎるコスプレって病気の時にはしちゃいけないもんなんだな。かおがあっちぃあっちぃ。
「ほら、出来たよ」
「わ、すげぇ……」
テーブルには体に良さそうな料理が並んでいた。まだ昼ってのにすごい豪華だな……
「ふふ、そうでしょう?
まぁ、半分くらい舞香ちゃんが作り置きしてくれてたんだけどね」
舞香が……料理は少し苦手とか言ってたのに。きっと頑張ってくれたのだろう。
「ほら、食べるよ? はい、どうぞ」
「いや、雪音姉さん。それは……」
「患者さんは大人しく従うものよ?
それとも、言ってもらいたいってこと?
しょうがないなぁ。
はい、俊介くん?あーんして?」
雪音はスプーンで料理をすくうと、俺へとあーんをしてくれようとしている。その際に火傷を気にしてか、髪を耳にかけながら ふーふー とする仕草に色っぽさを感じドキッとしてしまう。
いや、ドキドキしかしていない。ドキドキパラダイスである。やばい、熱かしらんが知能が著しく低下しすぎている。
「あーん……」
「おいし?」
「……うん」
「よかったねぇ、俊介くん♡」
や、やばい。何か新しい扉を開いてしまった気分だ……これがバブみってやつなのか?不謹慎だが、こんな白衣の天使がいてくれるのなら、たまに熱を出すのもわるかないな……
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