3-13 真実と投了



「・・・お邪魔します。」


「は、はい。いや・・・おう。」


玄関を開けたら、桃宮さん もとい 神奈 が俺の部屋へと入ってきた。


てか、もう今更だけどアイドルを入れてもいいものなのか・・・?


「おー神奈ちゃん、久しぶ、り・・・ん?

 ん?ん??? も、桃宮さん!?」


「こんにちは、神奈ちゃん」


「雪音先輩、甲斐くん こんにちは。

 今日はお邪魔してしまってごめんなさい」


「大丈夫よ。ほら、座って座って?」


どうやら小吉の反応を見るに俺と同じく、

桃宮可奈=宮園神奈 とは思っていなかったらしい。


「神奈ちゃんにあったのは、この前のテレビの収録以来よね?」


「はい!あの時はお時間をあまり取れずにすみませんでした!」


「んーん。そんなこと気にしなくていいわ。

 私も神奈ちゃんの頑張ってる姿を見たら、私も頑張らなきゃって思うもの。」


「ゆ、雪音先輩・・・!」


・・・テーブルを挟んだ向こうで凄いスケールの会話が繰り広げられている。


神奈は昨日とは違う感激したような顔で雪音を見ている。


・・・ん?本当に感激した顔か?

俺はああいう顔をこの頃見たような気がしないでも・・・


「・・・ていうか、さっきの反応からして小吉も俊も神奈ちゃんに気づいてなかったわね?」


「「うっ・・・」」


「まぁ、それもそうですよ。

 私でも凄く変わったなと思いますし。

 ・・・まぁ、苦労して変わったかいはありましたよ。本当に、ね」


そう言いながら少し俺を睨む神奈。


「本当にごめんなさい!あまりにも綺麗になりすぎてたからさ・・・」


小吉が顔の前で手を合わせ、神奈に謝る。


「んーん。別に気にしてないよ?

 だから小吉くんも《蒼くん》もどうか気にしないで?」


・・・何が気にしてないだ。

確実に神奈は俺にキレている。だって呼び方も昔と全然ちがうし、俺の時だけなんかめちゃくちゃ力こもってたし・・・


トントンと小吉に肩をたたかれ、耳をかせと手招きされる。


((お前一体何したの?彼女めちゃくちゃキレてるみたいだけど))


((俺もよくわかんねーよ。なんか凄くキレられてる))


((とりあえず、なんだ、正直凄く気まずい雰囲気だからさ、二人きりにするから謝れ!))


((な、なにをだよ!))


(( Don't think! feel だ!感じとれ!))


んな、無茶な・・・


「雪音さん!お腹空きませんか?

 俺と一緒にご飯作りましょうよ!」


「え?どうしたの?

 まぁ、いいけど・・・」


「んじゃあ、俺ら材料の買い出しに行ってくるから!20分くらいで戻るわ!」


「お、おう・・・」


「・・・・・・えぇ。」


行動力の鬼かよ。まさかこんなにすぐに二人きりにされるとは。え、なんか神奈が次は小吉を睨んでるんだけど・・・どゆこと?



「・・・」


「・・・」


そんなこんなで現在この部屋には、俺と神奈の二人だけとなった。うん。気まずい。

だが、謝らないと何も始まらないな。


「・・・その、なんだ。ごめんな、神奈ちゃんって気づかなくて・・・」


「・・・だから別にいいって言ってるじゃない。そんなのアンタだけじゃないでしょ?」


「それなら、なんで神奈ちゃんは怒ってるんだ?」


「・・・」


俺がそう聞くと、神奈は俺のことをジッと見つめ黙った。そして数秒してから、彼女は思いもよらない一言を俺へと告げた。



「・・・アンタが雪音さんだけじゃなくて、絵里さんも舞香も私から奪いとるから。」



「・・・・・・・・・ん?」


理解不能だった。

というか俺の頭のコンピュータはこの情報を処理しきれなかった。


とりあえずこの状況を言葉に表すのなら


『ナニイッテンダオマエ』である。


「だーかーら!アンタが美女を取っ替え引っ換えしてるのがムカつくの!こっちは雪音先輩と喋るのさえおこがましいのに、アンタは部屋に連れ込んでるし!アンタは中学の時から雪音先輩の寵愛をうけてて羨ましいのよ!


しかもそれに飽き足らず、あの憧れの絵里さんとも仲がいいし、ましてはあの超絶美少女の舞香が義妹になるとか・・・まじで、ありえない!変わりなさいよそのポジション!」


・・・???


「・・・も、もしかして神奈ちゃんは俺のことが羨ましくて、睨んでたのか?」


「だから前から言ってたでしょ!アンタが雪音さんだけじゃなくて他にもいたいけな美少女達を我が物にしようとするから!それは私の役目・・・とにかく!まじでそんなことしたら神様や世間が許しても私が許さないから!」


「・・・・・・」


どうやら俺は本当に大きな勘違いをしていたらしい。


話を聞くに、この宮園神奈という女性はおなじく女性が好きということだ。


そうなると気になるのは・・・


「もしかして神奈ちゃん・・・

 雪音先輩を恋愛対象として?」


「あったりまえでしょ!? あんな天使滅多に見かけないわよ!あ、けど絶対に言わないでよ?必死に隠してたんだから!」


わーお、ビンゴだぁー。


「てことは、舞香も絵梨花ちゃんも?」


「あったりまえよ!あんな天使たちを私が逃す訳がないじゃない。ていうか絵梨花?もしかして絵里さんの本名?アンタ神なの!?」


くっ、しまった・・・教えたらヤバそうな奴にナチュラルにバラしてしまった。


どおりでさっきの雪音に向けた顔が既視感があるわけだよ。あれは今思えばどう考えても、絵梨花ちゃんが俺を見る顔と同じ顔だった。


ていうか、こいつの愛が本物なら3人から告られた事を本気で隠さないとやばいんじゃないか?マジでこいつなら事実を知ったら、錯乱して世間に暴露とか大いにありえるぞ・・・


「と、とにかく!俺は別にアイツらを手籠にしようとしてないからな!全部お前の勘違いだ!」


「へーーーじゃあなんで、雪音先輩がアンタの家にいるのよ!もうアンタとは関わりがないはずでしょ!」


「それは雪音先輩のお父さんと俺の母さんが再婚して、義姉弟みたいになったからだな・・・」


「はぁ!?あんた舞香のみならず、雪音先輩ともなりやがったのね!?アンタはいつからラブコメの主人公みたいなムーブをするようになったのよ!私がこのポジションを手に入れるまでどんなに苦労したか・・・」


「俺もお前がそんなハイテンションキャラだとは知らなかったよ!」


えぇ・・・もしかして『Amour』のメンバーになったのも、美女に囲まれるため?


「ん?まてよ?ここでアンタと仲良くしとけば、もしかして海老で・・・いや、芋虫でマグロを釣り上げることも可能?」


「おーい。その芋虫の目の前でそんなにはっきり言わないでくださる?」


「・・・ふふふ、大丈夫よ俊介。アンタはいずれ私の義弟もしくは義兄になるかもなんだからこれからは昔みたいに仲良くしてあげる」


「このうえなく最悪な理由だな・・・」


はぁ・・・まぁいいわ。


不本意中の不本意だが、こいつとの仲直りもすんだし、小吉に終わったとメッセージを送るか。正直これ以上こいつと二人きりはいつかボロが出そうで怖い・・・


ガチャ


そんな事を考えていると、玄関の開く音がした。


お、ナイスタイミングだな小吉!

ん?でも、小吉と雪音は鍵を持って出ていかなかったような・・・


「俊介ー?たっだいまー!

 可愛い舞香ちゃんが帰ってきたわよー!」


「俊くん!私も!私も帰ってきたよ!」


「ちょっと、アンタはただついてきただけでしょ!」


「もーそんなカリカリしないの!ね、俊くん!今日は私も泊まってもい・・・い?」


リビングのドアを開けると同時に絵梨花ちゃんが固まり、


「・・・え?・・・可奈、なんでここに」


舞香も同じく固まった。


「「「「・・・・・・」」」」


さっきまで騒がしかったリビングが一瞬にして、静寂に包まれる。いや、もうこれは詰み。



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【新作】

『ずっと推していたアイドルが引退してお隣さんになったが、俺は彼女にめちゃくちゃ嫌われている』


連載開始しました!お時間がございましたらこちらもよろしくお願いします!

↓小説URL

https://kakuyomu.jp/works/16816452221427664579


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