2-2 班決めと対抗心





週末も終わりをむかえ、

またいつものように1週間が始まる。


教室に着くと、もう結構な人数が

座って話しながら始業時間を待っている。

絵梨花ちゃんも女の子に囲まれて話し込んでいるな、友達ができたみたいでよかった。



チャイムがなり

いつものように田村先生が教室へ来て

話を始める。


相変わらず綺麗な先生だ。

田村先生は24歳という若さだが

その、凛々しさと大人の包容力(?)から

厳しいが生徒(主に男子)から人気の先生の一人である。


「今日は一限を使って、

 秋の林間学校の班決めを行います。

 みんなも知っての通り、うちの学校では

 1、2学年が合同で行うことになってるわね


 去年は、先輩が引っ張ってくれたかも

 しれないけど、今年はあなたたちが

 後輩たちを引っ張るようにね。


 では、白鳥さん。おねがいします。」


「はーい」


そうやって田村先生に指名され

女子が一名、教壇にあがる

クラス委員である白鳥しらとり明子あきこさんだ。


白鳥さんは、その整った顔と誰にでも分け隔てなく接する女神のような優しさから、田村先生とは別ベクトルの人気を誇っている。

結構、告白もされているようで

無関係な俺の耳にもよく届く。

ようするにクラスの人気者だな


まぁ、俺みたいな日陰者にはあまり

関わりのない人ではある。


正直、小吉に関してもなぜ俺とかかわってくれているのかわからない。

前に一度疑問に思い、

聞いたことがあるが 


お前といたらおもしれーじゃん


と一言いわれただけだった。

よくわからないが、俺としてはありがたいことだ。


「はーい。じゃあ班決めするよー。

 なにか意見がある人はいるー?」


「はーい!私、絵梨花ちゃんと

 班組みたいでーす!」


「ちょ、ずるい!

 私もなりたい!」


「おい、抜け駆けはダメだぞ!

 俺もなりたいでーす!」


白鳥さんが質問をすると、

男女問わずから大量の一緒の班になりたいコールが届く。相変わらずすごい人気だな。

渦中の絵梨花ちゃんはというと、

全く動揺しておらず、顔色一つかえてない。

さすが女優、肝が座っているな・・・

ん?なんかフリックしてる。


ブブ

俺の携帯がなった。


『俊くん。こういうの緊張するね・・・』


緊張してた。めちゃくちゃ緊張してた。

たしかに、よく見たら小刻みに震えてる気もする。


「んー。そうだなぁ。

 上田さんは誰と組みたいとかある?」


「私?・・・」


あ、これは嫌な予感が。


「私は、蒼くんの班に入りたいです!」


的中した。クラスの視線が一斉に俺へとむけられる。左前の席の小吉だけ、なんかニヤニヤしてるのがむかつくな。


「・・・えーと。

 上田さん?どうして?」


「んー。

 学校に転入してきたばっかりで

 よくわからないっていうのもあるけど、

 一人よく知っている人がいると

 安心するから、かな?・・・ダメ?」


ちょっと困ったな顔をしながら

首を傾け、白鳥さんに聞く絵梨花ちゃん。


芸能人オーラをビンビンに出す彼女から

こんなお願いをされて断れる猛者は、

俺は義妹以外知らない。


「っ!?す、凄くいいと思う!

 先生はどうですか?」


「うん、私もそれがいいのかなとは思う。

 じゃあ蒼くん?

 頼んでもいいわね?」


「・・・うす」


わー。周りからの目がすごい痛い。

おい小吉、コソコソと やったな とか言ってんじゃねぇよ。絵梨花ちゃんも 私よくやったでしょ? みたいな目で見ないでくれ・・・


これ本当に、これからどうなるんだよ・・・



それから話も進み、班は無事に決まった。

凄い勢いで班に入れてという人が殺到したが、さすがは田村先生。

事情も事情なので俺の班は特別に先生が

決めてくれた。その結果、友達の小吉そしてクラス委員の白鳥さんが班に加わり、

俺の林間学校で主に過ごすメンバーが決定した。


「さ、みんな決まったわね。それじゃあ

 班ごとに分かれて、当日の発表する

 テーマを何にするか話しあってね。


 それじゃ、はじめてください。」


発表というのは、

俺たちの学校の林間学校では、夜にそれまでに研究したものを発表するという行事があり、そこで発表するためのテーマを今から決めようとしている。


「じゃあ、

 とりあえず自己紹介からしていこっか。


 知ってるかもだけど、白鳥明子です!

 クラス委員もしてるから何かあったら

 相談してね?よろしく!」


気持ちのいいハキハキとした自己紹介だ。

やっぱり社交性の化け物だな、白鳥さんは。


「俺は甲斐小吉!

 バスケ部に入ってます!

 力仕事は任せてくれ!よろしく!」


「暑苦しいわ」


「うっせぇよ!」


「ふふ。本当に仲がいいね二人とも」


そんないつものやりとりをしていたら、

白鳥さんも笑ってくれた。やっぱり優しいな

そう思いニコニコしていたら、絵梨花ちゃん

から冷たい視線を感じる。


「あ、俺は蒼俊介。

 二人みたいな特技はないけど

 精一杯がんばるので、よろしく」


「ゲームがあるだろゲームが」


「うるせぇよ!」


「よろしくー!

 てかさてかさ、俊介くんと絵梨花ちゃん

 っていつ頃知り合ったの?」


「あぁ、小学校の頃にな。

 あの頃は同じ団地ってこともあって

 よく遊んだんだよ。」


「うん。しゅ・・・蒼くんは昔から

 優しくて、よく遊んでくれたの。」


今、確実に俊くんって言いかけたな・・・


「私は上田絵梨花です。

 あんまり話したこともないと思うけど、

 気軽に話しかけてね。


 呼び方は上田でも絵梨花でも

 どちらでもいいよ。よろしくね。」


「うん!よろしく!

 絵梨花ちゃんって呼ぶね?」


「うん。よろしく」


「すんません!自分、質問いいっすか!」


小吉が手を挙げて絵梨花ちゃんに聞く。


「うん。どうぞ?」


ヒソヒソ話で絵梨花ちゃんに小吉は聞く。


「上田さんってここだけの話、

 俊介のことどう思ってますか?」


!?

こいつなんてことききやがるんだ!


おい、聞いてやったぜ顔すんなよ。

まずいぞ、今の絵梨花ちゃんにこの質問は

ボロを出しかねない!


「・・・うーん。

 やっぱり、昔からの優しい友達だね。」


・・・わーお。

上手くかわしてくれた。流石は女優、

こういった質問には慣れているのか。

変なことにならず俺は心から安堵した、が



「でも・・・

 一番大切な存在、かな?」


「「「・・・・・・」」」


絵梨花ちゃんの答えを聞き、

俺たちの班だけが静まり返る。

本当によかった、他の班の人たちが騒いでて


「え?え?え?」


白鳥さんが顔を真っ赤にしながら

オロオロしている。


「おいおい!俊介!おい!」


「いた、痛っ、違うからな!

 そういうんじゃねぇから!!」


小吉が俺の肩をたたきながら興奮している。

痛すぎる。あまりの衝撃に言語能力が退化したみたいだ・・・


それにしても、何でかわせてたのに

わざわざ自分から爆弾を投下したのか

この女優は・・・


ブブ


ポケットにいれている携帯が振動する。

画面を見てみると


『つい白鳥さんに対抗しちゃった。

 ごめんね俊くん。大好きだよ』


「ぶっ!」


「大丈夫か?俊介」


「あ、あぁ・・・」


驚きのあまり吹き出してしまった。

彼女をみると、頬を少し紅潮させながら

ニコニコしている。こんなんで林間学校大丈夫なのか?楽しみだが、不安だ・・・

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