二章 想いと学校行事

2-1 寝起きと映画鑑賞










朝を迎え、目が覚めた

時計は7時を指している。

数字を改めて見るとウトウトしてしまう。


今日は土曜日で学校は休みだ。

もう少し寝ようかなと思い、

もう一度布団に横になる。


・・・ん?

なんか左手が柔らかい・・・


「んっ」


おそるおそる声のする方を見ていると、

幸せそうな顔を浮かべながら寝ている

銀髪の美女もとい絵梨花ちゃんの

姿があった。確認してすぐに胸の方に

あった手を引っ込める。


あれ?俺昨日一人で寝たよな?

てか、なんで絵梨花ちゃんがここにいんの!?昨日あれから帰ってたよね!


「おはよー俊す、け・・・

 って、なんであんたがここにいんのよ!」


どうやら、舞香も起きてきたようで

この異様な光景につっこむ。


「んー?

 おはよぉ、俊くん。」


どうやら、本当に寝てたようで

目を擦りながら、なぜか俺の腰に手をまわし抱きついてくる。


「お、おはよ、絵梨花ちゃん・・・

 てか、なんでうちにいんの?」


「今日8時からお仕事だから、

 俊くんに挨拶していこっかなって

 思ってて来たら部屋の鍵があいてたから

 ・・・つい?」


「つい?

 じゃないわよ!

 ついに犯罪まで犯したわね!

 不法侵入女!」


「ひ、ひどいよ!

 だって俊くんの寝顔だよ?

 魔もさしちゃうってもんじゃん・・・」


「何言ってんのよ!

 この、乳デカ不法侵入女!」


「なんか乳デカまで増えてるんだけど!?」


「落ち着けって二人とも!

 と、とにかくもう7時だし

 絵梨花ちゃんは仕事に

 行かなくても大丈夫なの?」


「うん!今から出よっかな。

 じゃあね俊くん、

 また今日もメールしてもいい?」


「あぁ、全然いいよ」


「嬉しい!

 じゃあいってきまーす」


「いってらっしゃい」


「二度と来んなー」


笑顔で手を振りながら部屋をでると、

そのまま仕事へと向かっていった。



「はぁ・・・まじで油断も隙もない。

 俊介も俊介よ?

 あんなの一発くらい怒ってやらないと

 自分の過ちに気づかないんだから!」


「ま、まぁ、

 実害もなかったし・・・」


「デレデレすんなぁ!!!」





今日は俺が朝食をつくる。

この部屋に住むにあたって昨日、舞香と

家事の当番を決めたのだ。まぁ、仕事の関係もあるし、ほぼほぼ俺なのだが。


「「いただきます」」



「ん!美味しい!

 ありがとう俊介」


「どうも、こんな簡単なものだけど

 喜んでもらえて嬉しいよ


 今日の舞香の予定は?

 仕事かなんかあるのか?」


「今日は仕事はないけど、

 16時からダンスレッスンがあるから、

 15時頃に縁さん・・・マネージャーさんが

 ここに迎えに来てくれる」


「なら、それまではゆっくりできるな。

 たまにはゆっくりしとくんだぞ」


「?

 俊介は何か用事があるの?」


「あぁ。俺がいたらゆっくりできないかな

 と思ってな。予定もないし、図書館で

 勉強でもしてこようかなと、あそこなら

 涼しいし」


「えー・・・

 わ、私俊介がいないと

 ゆっくりできない・・・」


や、やっぱり

昨日のは夢じゃなかったのか。

もじもじしながらも、舞香がそう言う。


「・・・わかった。

 なら俺も部屋で過ごすことにする」


「やった!

 じゃあさ!映画でもみようよ、

 観たいの何個か溜まってるの!」


子供のようにはしゃぐ舞香をみて、

自然と笑顔がでてしまう。

いつも、必死に頑張っている舞香が

楽しそうに笑ってくれて本当に嬉しいのだ。


「・・・なんか今、兄の目線されてる

 ような気がするけど、気のせい?」


「気のせいじゃないぞ?

 お兄ちゃんは舞香の幸せが嬉しいんだ」


「・・・」


ん?

なんかめちゃくちゃ真顔になった。


「あ、あのさ!

 こういう他の人がいないときはさ!


 ・・・兄妹として接さないで欲しいな。

 ちゃんと女の子として見て欲しい・・・」


「・・・お、おう。」


なんかこう面と向かって言われると恥ずかしいな。本当に俺はこんな可愛い女の子に対して理性を抑え続けることが出来るのだろうか。まぁ今そんなことを考えてもしょうがないな。


「それじゃさっそく、何観る?」


「今日はこれがいい!」


そうやって舞香が選択したのは、

去年上映されていた

海外のアクション映画だった。


ほう、いい選択をするな。

俺もちょうど観てなくて、

いつか観たいと思っていたところだ。

だけど、舞香ってアクション映画好きだったか?そんな話、聞いたことないが・・・


「いいね俺も観たかった。

 けど、舞香ってアクション好きだったか?」


「ほんと!?やったぁ!

 俊介、アクション映画が好きだし、

 去年一緒に観に行きたかったけど

 忙しくて行けなかったから・・・嬉しい」


なんだこの健気な女の子は。天使かよ。

そんなこと言われて

嫌がる男子はいないだろう。

いつもの悪態は身をひそめ、

デレデレな義妹に正直動揺を隠せそうにない


「と、とにかく!

 これを観ようか、部屋暗くしてもいい?」


舞香が頷き、俺が電気を消す。

そして共にテレビ前のソファに座り、

映画が始まる、が


「あのー舞香さん?」


「ん? なにー?」


舞香は俺が座ると、

その膝上にコテンと横になる。

要するに膝枕状態なのだ。


しかもその状態のまま、腰に手を回して

顔を埋めてくる。何なのこの子

あの、女王のような横暴な

義妹はどこにいったのだろうか。


「ねぇ、ドキドキした?」


「・・・これでしない方がおかしい」


「あはは、たしかに。

 でも、嬉しいよ・・・」


そう答える舞香の顔をみると、

暗闇の中で画面の明かりに照らされ

少し赤みがかっているのがわかる。


ぼーっと見ていると

流石に恥ずかしくなったのか、

むくっと起き上がり次は腕に体を巻きつける


「そ、そんなにジロジロみるな!

 さすがに・・・恥ずい」


「ちょっ、そんな密着させたら」


「・・・ダメ、なの?」


「いや、ダメじゃないけど」


「ん、ならよし」


そして、気づいた。

舞香のうるうるした目に

俺はめっぽう弱いことを。


ごめんなみんな、今まで何でこんなに騙されてるんだ?って思ってたが今はわかる。


こりゃ、無理だ。可愛すぎる。


今は、今だけは、

義妹とか、アイドルとか何もかも放り出して

この幸せな時間に浸らせてくれ、神様。


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