1-5 覚悟とこれから





やぁ、みんな!俺は蒼俊介!

どこにでもいるような高校2年生だ!

退屈だった学校生活もアイドルの義妹と

女優の幼馴染の転入により一変!

一体これから俺は

どうなっちゃうんだろ〜・・・


なんて、下手くそな前置きはいいよ。

そんなことより


目下に広がるこれは、ど、どういうことだ?


今、俺の見間違いでなければ

両腕には銀髪の女優と、

黒髪のアイドルがしがみついている。

しかも、互いに睨み合ってるし・・・


「ちょっと!俊介がせまそうじゃない!

 絵梨花先輩は家だってあるんだから、

 早いとこ自分の家に帰りなさいよ!」


「そんなことないよね俊くん。

 舞香ちゃんこそ耳元でうるさいって

 俊くん言ってるよ?

 早いところ実家に帰った方が

 いいんじゃない?」


「いや、あ、あの・・・」


どうしてこうなったんだ・・・

てことは、さっきのあれって・・・







「縁さん、ありがとうございました。」


「本当にこっちに住むのね・・・」


「はい、こっちのほうが学校に近くて

 何かと便利なので」


「そう。確認はしてるから大丈夫だろうけど

 何かあったら遠慮なく言うのよ。

 それじゃあ、お疲れ様。」


「ありがとうございます。お疲れ様です。」


そう言ってマネージャーさんの車は、

帰っていった。

今日から私は、俊介の家に住むことになる。

結構強引に決めたが、両親も事務所も許してくれてよかった。

・・・俊介には確認とってないけど。


さ、疲れた疲れた!かーえろ・・・


そう思い、マンションに向け歩き出そうとした時、マンションの入り口付近にマスクとサングラスをして変装(?)している人物がいる。


側からみたら完全に不審者だが、

私は、この銀髪不審者に心当たりがある。


「・・・なにしてるんです?

 絵梨花先輩。」


「!? 

 ど、どうしてわかったの?」


「はぁ・・・わかりますよ。

 それ変装じゃなくて不審者です。

 それにその銀髪。隠す気あるんすか?」


「うっ・・・」


「まぁ、いいです。

 勘違いでなければ

 私を待ってたんですよね?」


「・・・うん。

 少し話したいなって。

 ちょっとそこの公園にでもいかない?」


そういう絵梨花さんに頷き、

私はついていく。私もこの女とは、話したいことがいくらでもあるからちょうどいい。





「・・・ここ、なんか怖いですね。」


「そう?あんまり人も来ないし、

 月もよく見えるし、

 静かだし、私は好きよ?」


寂れた公園。

都会にある公園としては

珍しい雰囲気を醸しだしている。


「ふーん。そっすか。

 ・・・で、話って?

 まぁ十中八九、俊介のことでしょう?」


「・・・うん。

 舞香ちゃんってさ・・・

 俊くんのこと好き、だよね?


 家族とかじゃなく、異性として」


やっぱりこの質問がきた。

だが、もう私は戦う覚悟を決めている。


「・・・はい。好きですよ。

 絵梨花先輩もですよね?」


「ふふ。認めちゃうんだ。私もよ、

 ずっと前から俊くんが好き・・・」


「ふーん。ま、知ってたけど。


 それで?私の方が好きになったの

 先だから俊介を譲れとかですか?」


「それは違うよ。

 舞香ちゃんを見てたら、本当に俊くん

 が好きなのくらいわかるもん。」


「じゃあ何で呼びだしたんですか?

 確認なら終わりましたよね。

 じゃ疲れてるんで、私帰りますねー」


「・・・私、今から俊くんを呼んで

 告白しようと思ってる」



・・・へ?今この女なんてった?

俊介を呼び出して、こ、告白!?



「俊くんね、優しいから私がどれだけ

 好意を出しても仕事のこととかもあって

 見て見ぬふりをしていると思うの。

 

 だから、私を意識してもらうために

 告白することにしたの」


「い、いやいや、そんなことしたら

 俊介の性格上迷惑になることくらい、

 あなたならわかりますよね?」


「うん。けど、

 もう抑えることができないの」


「はぁ?

 まじでいみわかんない!

 そこまで決まってて、

 何でわざわざ私をよんだの!?」


「絶対に成功するってわかるから。

 あなたに見せつけるため!」


「っ!?」


こ、こいつ目がすわってる・・・

てことはこの話かまかけてるじゃなくて

ガチなんだ・・・


「それで、舞香ちゃんはどうするの?

 帰るの?びびったの?

 ・・・その程度なら、

 もう私の邪魔しないでほしいかな。

 

 私は俊くんと、結婚できるなら

 今の仕事だって辞めたっていいの」


・・・憎たらしい。ドラマの見過ぎかよ。

私が、アイドルだから

告白できないことくらいしってるくせに。


うざい、最悪、憎たらしい

けど・・・羨ましい。


ここまで正直に自分の気持ちと

向き合えるなんて・・・

手だって震えてんじゃん。怖いんじゃん。

そんな分かるくらい手を震えさせてまで、

勇気を出して私に言ってるんだ。


好きな人にちょっかいださないで、と。


正直びびってる。

告るなんてそんな勇気私にはない。

今までの関係が崩れるかも。

でも、この顔面偏差値の女が

ここまで本気で落としにきたら

いくら鈍感野郎の俊介でも・・・


覚悟を決めるしかない。


私だって負けるわけにはいかないから

だって、私も、私も、

俊介が大好きだから・・・


「・・・それなら、私も告る。」


「!? 

 本気なの?アイドルでしょう!?」


「えぇそうよ。

 私はアイドル。

 でも、あなただって女優でしょ?

 絵梨花さんの事務所って確か

 18まで恋愛禁止だったよね。


 だから今しかないの。


 あなたを巻き込める、今しか」


「・・・私のこともだまっとくから、

 舞香ちゃんのことも黙ってろってこと?」


「大正解。

 絶対にあんたなんかに俊介は渡さない。」


「わ、私だって!

 舞香ちゃんには絶対に渡さない!」







「ど、どうしたんだよ二人とも。

 こんなところに呼び出して」


なんで二人が、

こんなところに揃っているんだ?

疑問はたくさんあるが、なんだこの雰囲気は



「ねぇ、俊介」


「俊くん?」


「な、なんだよ・・・」


「「私と付き合って(よ)!」」


・・・ん?

この二人は今なんてった?


「・・・ん?

 ど、どういうこと?ドッキリ?」


そう思い、

あたりを見回すがカメラらしきものはない。


「ドッキリじゃないよ。

 俊くんのことが好きだから、

 付き合ってって言ったの。」


「で、でも、

 絵梨花ちゃんの事務所って

 恋愛とかダメでしょ?」


「もし何か言われたら、

 辞める覚悟はもう出来てる。

 それに私は、俊くんが好きだから

 帰ってきたの。

 女優になることがゴールじゃない。」


彼女の目は嘘を言っている感じはしない。

頭が混乱してきた、どういうこと?

え、本当に俺のこと・・・いやそんなはずは


「わ、私だって!」


舞香のいきなり大きな声をだす。


「私だって俊介が好きだから、

 告白したの。家族とかじゃなくて

 異性として・・・」


「ちょ、ま、舞香もアイドルじゃんか!

 あんなに頑張ってなったのに、そんなこと

 したら・・・

 それに、俺らは か、家族だろ?」


「私も・・・辞める覚悟がある。

 それくらい俊介が、大切で好き。

 それに私達、血は繋がってないから

 け、結婚だってできるもん。」


・・・な、何がどうなってるんだ?

あのツンケンした態度をとっていた舞香が

デレ100%になっている。

本当に俺のことが好き、なのか?

いや、そんなはずはないだろ・・・


「・・・俊くんは私のこと嫌い?」


「俊介は嫌だ?私と付き合うの・・・」


「「どっちと付き合うか、選んで!」」


気が合うのか合わないのか、

二人バッチリ揃っていうなんて

予行練習でもしたのか?

で、でもそんなの決まってるじゃないか。





「・・・わ、悪いけど。

 俺はどちらも選べない。

 

 絵梨花ちゃんも舞香もよく考えてほしい

 俺なんかのために、

 今まで頑張ってきたものを無くしちゃ

 だめだよ・・・」


「「・・・」」


二人とも俯いてしまった。

だけど、ここで俺がどちらか選んでしまったら

噂が流れて、二人の輝かしい将来がなくなる可能性があるのは目に見えている。


そりゃあ男としてこんな美女二人に

好かれてるなんて天にも登る気持ちだけど


・・・ド、ドッキリじゃないよな?


あたりを見回すがカメラらしきものはやはり

ない。て、ことは本当に・・・


雑念を捨て去るように頭をブンブン振って俺は言う。


「じゃあ、俺は先に帰るね・・・」


ここで、俺が送ったらだめだろうと思い、

俺はひとり帰路につく。

そう思ったのはおそらくこれが罰ゲームか何かだからだ。

あんな美女二人が俺みたいな冴えない一般人に告白なんてするはずがない。


だから、俺が早くこの場から消えて

二人きりにしてやるのが最適解だ。



そう思ってたのに。

な、なんだ?何で二人は帰ってくるやいなや

俺の腕にしがみついてんだ?

罰ゲームじゃなかったの?


「えーっと二人とも。

 さっきのは罰ゲームとかなんかじゃ

 なかったの?」


「「違う!!!」」


「え、えぇぇ・・・」


「けど、いいもん。

 付き合えなかったのは悲しいけど、

 もう私が俊くんのこと好きなのも

 伝えたし、これから私のこと好きに

 なってもらうもん!

 長期戦だよ?覚悟しててね?」


ちょ!絵梨花さん!?

そんなスリスリしたら!

お、大きい胸があたってますけど・・・

柔らかい・・・じゃねーよ!

なんかいい匂いもするし

なによりも、現役美人女優がみせる

無防備な姿。天使だ・・・


「いい加減にしなさいよ!

 俊介が困ってるじゃない!

 

 わ、私だって俊介の事、好きなんだから

 振りむかせてみせるし・・・

 絶対諦めないから、見ててよね・・・」


いやいや舞香さん。

何でそんな目をうるうるさせてんの!?

顔も赤くして、下唇もかんで!?

これは、アイドルモードの時でもなく、

本当にて、照れてるのか!?

あの舞香がぁ!?

や、やばいこれがギャップってやつか、

すごいドキドキする・・・


二人とも上目づかいで話しかけてくる。

どちらも可愛いがすぎる・・・

正直な所、俺の理性も心も限界に近いだろう。だけど俺は、二人のためにも

絶対にどちらも好きになっちゃだめだ。


だって二人は悲しいことに、

恋愛禁止の芸能人なのだから・・・

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