0-4 約束と失態




色々、悶着もあったがご飯も食べ終わり

片付けもすませゆったりした時間が訪れる。

時計を見ると21時に近づいていた。


「21時だけど、絵梨花ちゃんは

 時間的にまだ大丈夫なの?」


「え? もしかして俊くん、

 まだ帰したくない、とか?」


「あ、いや、明日の予定とかって

 大丈夫かなーって・・・」


「あ・・・それは大丈夫だよ・・・」


「ぷっ」


あれ、心配したはずがなんか心なしか

がっかりしている。それをみてなぜか吹き出した舞香に頬を膨らませて威嚇している。

か、かわいい・・・


それにしても、あの絵梨花ちゃんが女優か

知らなかったが、今思えば納得できる。

まさかこんな美人に成長するなんて・・・


ていうか、さっきまでの反応って

もしかして俺のことき、気になってるから

なのか?だから、義妹である舞香に対抗して

あんな争いをおこしていたのか?


つい、芸能人ということもありその可能性を

無意識に排除していたがまさかそういうこと

なのか?


・・・いや、それはないか。

一度、舞香の撮影についていかされた事がある。その時に感じた、圧倒的な世界の違い。

あの煌びやかな世界を見てしまったら

その可能性は限りなくゼロに近いと

否が応でも理解してしまう。



「ま、まぁもう遅いし

 今日は帰るね?」


「うん。今日はご飯ありがとうね。

 美味しかったし、久しぶりに話せて

 楽しかった」


「本当に?よかったぁ。

 迷惑かなってちょっぴり思ってたから、

 嬉しいです。・・・ねぇ俊くん?


 そのー。また、来てもい、いいかな?

 ま、まだ話したいこともいっぱいあるし

 ご飯とか一人で食べるの寂しいし!

 たまにでいいから!・・・だめかな?」


「はぁ?あなた自分の立場理解してます?

 そんなのダメにきまって・・・」


「あぁ、いいぞ」


「ってバカ兄貴!何で許しちゃうの!」


「まぁ、たしかに舞香の言うことも

 一理ある。だからちゃんと周りの警戒を

 怠らずに来るんなら全然いいぞ。

 約束できるか?」


さっき絵梨花ちゃんの言葉から出た

寂しいって言葉。さっき聞いたが家族はまだ

海外にいて、芸能人になる為一人帰国したらしい。だから、友達などがまだ周囲におらず芸能界であった不安や愚痴などを話す相手が

吐き出す相手もおそらくいないのだろう。

それに、俺自身もまだ話したいと思った。

だから許したんだが、舞香のあの慌てよう

少し軽率だったか?


「・・・!うん!約束、絶対守るよ!

 ありがとう俊くん!じゃあ今日は

 おやすみなさい!」


「あぁ、おやすみ」


すごいキラキラした笑顔で帰っていたな。

慣れない環境によほど寂しかったのだろう。


「・・・なにニヤニヤしてんのよキモ。」


おっとニヤニヤしてたのか。

舞香にそう言われ口を引き締める。



10時をまわり寝る準備を一通り済ませ、

のこりは寝るだけだが舞香はまだ、

寝る準備もせずにソファでぐたぁとしている。


「ほら、お前明日はやいんだろ?

 寝る準備を早くしなさーい」


「こんな時だけ兄貴面すんな!」


「俺はいつでも君の兄貴です」


「義理だけどね!義!理!

 妹扱いばっかしないでよね!」


「そ、そんな強く言わなくても・・・」


さすがにそんな面と向かって義理宣言

されるとお兄ちゃんとしては悲しいぞ舞香よ。お淑やかと思っていた妹が今のように

なったのは確か、一年前くらいからか?

一体俺は何をしたんだろ・・・

一応謝っとくか、ここまで尾を引くとはきっと凄まじい失態をおかしているのだろう。


「なぁ、舞花」


「な、なによ?」


「なんか一年前に怒らせるようなこと

 したなら謝るよ。ごめんな。

 俺まだ何したのかよくわかってなくてさ

 もしよかったら、教えてくれないか?」


「な!?べ、別に怒ってないし!

 そんな長い間怒ることないでしょ!」


「そうなのか?

 それじゃあ一体なにして・・・」


「それは知らない!」


そう言い放ち、舞香は洗面所の扉をバタッと勢いよくしめる。


「今から、お風呂だから入ってきたら

 承知しないわよ」


「わ、わかってるよ」


はぁ・・・怒ってはない(?)みたいだが

何かはしたっぽい言い草だったな。

何をしたんだろ。まじで思い出せん。

まぁいいや、寝る準備もおわったし

一足先に寝るか。



明後日の水曜日・・・

今思うと、芸能人二人を連れて出かけるのか。なんか、そんなこと考えてたら緊張してきた。

もし、ファンとかに見られでもしたら・・・

いや、もう考えずに寝よ・・・


今日は疲れたけど楽しかった。

まぁ、まだ会ったばかりだ。舞香と絵梨花ちゃんもきっと仲良くなるだろう。


長かった一日が終わる。

心配ごとを考えながらも、水曜を楽しみにしているのはどうやら自明の事実のようだ。


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