0-5 新学期と転入生






朝を迎えたようで目を覚ます。

枕元にある時計をみるとまだ6時のようだ、

夏休みも残り3日。今日は二度寝しよう

そんなことを考えていると

目の前に不思議な光景が広がっていることに気づく。


「・・・えぇっ!?」


くーくーと可愛い寝息をたてながら

天使のような寝顔の美少女が寝ている。


な、なんで俺の布団に舞香が寝てるんだ!?


一体何が起きてるんだ?いつも舞香が泊まりに来た時は奥の部屋のベッドを使うはず。

だから、俺は布団を敷いて昨日は寝たはずなのに、もしや寝ぼけて間違えちゃったパターンなのか!?


朝一番から頭をフル回転させても答えにたどりつかずオロオロとしていると、物音で起きてしまったのか舞香が目を覚ます。


「———んっ?何?朝からうっさ・・・

 な、な、なんで一緒に寝てんのよ!」


「あ、違、ここは俺の布と・・・」


どうやら事態を把握して焦ったらしく、

俺の顔面へと枕が投げこまれる。


「何で私のベッドに潜り込むのよ! 

 し、しんじらんない!

 そうならそうといいなさいよ!」


・・・何を言っときゃいいんだよ。

朝からそんなこと考える余裕なんてない。


「まず、ここはお前のベッドじゃなくて

 俺の布団だから!俺じゃなくてお前が

 もぐりこんでんの!わ!か!る!か!」


俺にそう言われて場所を確認する舞香


「・・・あ、あはは〜

 間違えちゃった☆てへっ?」


「こんな時だけアイドル面すんな!!!」





朝から本当にとばっちりだった。

お詫びとして朝ごはんは舞香がつくってくれるらしい。・・・それにしても義妹とはいえ、横暴とはいえ、やはり舞香は可愛かった。何なんだあの寝顔。俺がお兄ちゃんじゃなかったら確実に落ちている。


「はい。できたわよ」


テーブルに舞香がつくったスクランブルエッグとごはんとインスタントの味噌汁が運ばれる。

 

「美味しそうだなこのスクランブルエッグ」


「卵焼きよ!失礼ね!」


・・・どうやらぐちゃっとした卵焼きのようだった。


「それは失礼した。いただきます。

 ん!美味い!やっぱり舞香は天才だな」


「う、うるさいわよ!

 でも、ありがと・・・

 絵梨花さん程ではないけどね・・・」


「そんなことないぞ。

 可愛い義妹が作ってくれたんだ。

 それだけでも嬉しいし、

 味も本当に美味しい。ありがとうな舞香」


俺はそう感想を伝えると、

顔を真っ赤にして項垂れ うん。 と

小声で呟く舞香。どうやら照れてるようだ。

褒めてこんなに照れてくれるとこちらとしても嬉しいもんだな。



「ごちそうさまでした。

 舞香はよかったのか?」


「お粗末様。

 うん。もうすぐ出ないとだし、

 あ、あとさ明日なんだけど

 さっき確認したら急な仕事が入ってて

 行けそうにないんだ。ごめんね。」


「あぁ、そうなのか。残念だがしょうがない

 絵梨花にも伝えておくよ。頑張ってな」


「はいはい。それじゃいってきまーす」


「いってらっしゃい」


バタンと玄関が閉められる。

そうか・・・少し残念だが仕事なら仕方ないだろう。そんなことを考えているとブーっと

携帯からメールを着信した音が聞こえる。


『おはよ俊くん!』


どうやら絵梨花ちゃんからのようだ。


『おはよう絵梨花ちゃん』


『あのさ、急でごめんなんだけど

 明日のお出かけまた今度じゃだめかな?

 急に仕事がはいっちゃって・・・』


どうやら絵梨花ちゃんも仕事がはいってしまったようだ。売れっ子らしいし仕方がない

だが、残念だな。


『もちろん大丈夫だよ。

 それに、無理にお出かけもしなくても

 いいからね』


もしかすると、マネージャーや事務所から

諌められたのかもしれないと思い、一応断りやすいようにメールを送る。

するとまた、ブーっとすぐにメールが返ってきた。


『え!絶対に行くよ!

 俊くんは行きたくない?』


どうやら、そういうことではないらしい。


『いや、俺も行きたいよ。

 ならまた今度行こうね』


『うん!そうする!

 本当にごめんね。それでさ、今日の夜って

 空いてたりする?夜までお仕事なんだけど

 帰ったら電話とかしたいなーって』


『空いてるよ。

 こっちはあと3日夏休みあるし、

 大変だろうけど頑張ってね!』


『ありがとう!じゃあ楽しみにしとくね!

 いってきます!』


遊べないのは残念だが、

仕事をがんばっているようでこちらもやる気がでてくる。俺も勉強でもするかな。


そうして、新学期の予習を始める。








それから特にこれといった予定もなく

いや、毎日夜は絵梨花ちゃんから電話が

かかってくるファンからしたら羨ましいであろう夏休みを過ごし学校が始まる。



「うーっす俊介!」


「いてっ!なんだよ小吉か」


「宿題おわった?」


「ばっちりだぞ」


挨拶代わりというように背中をトンっと叩かれやってきたのは友達の甲斐小吉だ。

バスケ部であることもあり、

体も大きく顔もかっこいい部類に入るであろう自他共に認めるイケメンだ。

(自は認めんなよ)

そんな小吉と、いつも通りのたわいもない会話をしながら共に久しぶりの教室へ向かう


「それにしてもさ!

 いやー楽しみだな!転入生!」


「あーそうだったな。

 まぁ、確かに楽しみではある」


転入生か、確か芸能人の。

こんな時期に転入ってのもあまりない話だが、やはり芸能人ってのは色々あるんだろ

事実、舞香も絵梨花ちゃんもいそがしそうだし。


教室に着くと、もう結構な人があつまってるようで、男女問わずどことなくソワソワしているのが側からもわかる。


「おーっ。やっぱみんなソワソワしてんな」


甲斐がそういうと、ガラガラとドアが開けられ担任である田村先生が入ってくる。


「はーい。みんな座ってー

 

 今日から夏休みもあけて、新学期です。

 みんな気を引きしめて学校生活を送る

 ように。


 そして、知ってるかもしれないけど

 今日からこのクラスに転入生が来てます。

 みんな仲良くしてやってね。

 さ、入ってきて」


そう言って田村先生が手招きすると、

渦中の転入生が入ってくる。


おーっ!

と周りから歓声が上がる中、

俺だけは歓声とは違う えっ という驚愕の声をあげていた。


俺が見つめる教壇には転入生、もとい

よく見知った銀髪の美女が立っていた。


「はじめまして。上田絵梨花です。

 よろしくお願いします。」


そう挨拶するとまたもやみんなから歓声が湧き上がる。まさか隣人だけでなく

同じ学校に通うことになるとは、

こ、これからどう接したらいいんだろ・・・


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