0-3 お出かけと煮物




 グツグツとカセットコンロの上で絵梨花ちゃんお手製の煮物が音を立てる。


「ん!うまい!料理上手なんだね絵梨花ちゃん」


「ほんと?お口にあってうれしいよ」


 そういって絵梨花ちゃんは笑顔をくれた。それと対照的に舞香さんはぶすくれているような、いないような


「……妹よ、どったの」


「別に。美味しいなと思ってさ」


 え、おいしかったら怒るの?なぜ!お兄ちゃん頭悪いからわかんない!


「ふふ。仲良いんだね。アイドルのかわいい笑顔しか見たことなかったからなんか新鮮だなぁ」


「……仲良くなんかないですよ。こんなデリカシーのかけらもない奴」


「えー?けどさっき俊くんから聞いたけど週に3回くらい来てるんでしょ?……仲良いじゃない」


「べ、別にそれは、様子を見てきてくれってたのまれてるからで!

 ……そ、そういう絵里さんだってそんな顔出来たんですね。あんなクールビューティー系な女優さんなのに、さっきからニコニコと」


「オンとオフはちゃんと切り替えないとね〜」


「ふーん、どうだか。久しぶりに幼馴染と再会して印象良くしたいだけなんじゃないですかぁ?かわいいって思われたいだけでしょ」


「……そんなことないよ。俊くんに久々にあって嬉しかっただけでか、かわいいとか思われた、く……」


 なんだこの空間は、仲がいいのか悪いのかこれが芸能界を生き抜く若きエース達の会話なのか。一般人である俺はついていけん


「ま、まぁ、それくらいにしてさ。あ、絵梨花ちゃんお出かけいつにする?」


「えーとね、今週の水曜日とかは大丈夫?」


「あぁ、空いてるよ」


「なら、そこにしよ!楽しみだな」


「は?お出かけ?聞いてないんですけど」


 のほほんとする絵梨花ちゃんとこれまた対照的な舞香さん。


「いや、なんで言わんといけんねん」


 ついつい関西人でもないのに関西弁がとびでてしまう。


「そ、それは……水曜日は私も出かけたかったの!俊介に荷物持ち頼もうかなって!だから……その……」


 なんだ?いつもの舞香と違う。何か悩んでるのか?もしかして、絵梨花ちゃんと俺で遊ぶのに仲間はずれにされた感じが嫌だったとか……なるほど。それなら


「わかった。絵梨花ちゃん今度の買い物、舞香もいっしょに来てもいい?たぶんこいつ、絵梨花ちゃんともっと仲良くなりたいんだと思う」


「「え、えぇ!?」」


 ……そんな驚く?


「な、なんでよ俊くん!せっかくのお出かけなのに……ちょっと!妹なんていつでも遊べるでしょ?今回は譲ってよ!」


「譲るって何よ!ちょっと、そんなの聞いてない!俊介は私の荷物持ちしないとだめなの!」


 いきなり互いを睨みつけ、喧嘩を始める二人。二人とも美人なだけあってすごい迫力だ。ど、どうする。どうすればおさまるんだ……


「な、なら今回のお出かけは無しだな。絵梨花ちゃんとはまた別のあいた日に遊べばいいし、舞香のは……また別の日に付き合うよ」


「「え……」」


 ……めちゃくちゃショックそうな顔してる。そんなにお出かけいきたかったのか?


 そして二人とも何秒か固まると


「そ、それなら私は舞香ちゃんがいても大丈夫だよ!水曜日、楽しみだな!」


「わ、私も、絵里さんがいても大丈夫!……そのかわりちゃんと持ってよね!」


 なんか二人とも笑顔がピクピクしているが納得してくれた(?)みたいだな


「そっか。なら水曜日は三人でいこうね。けど!ちゃんとばれないようにな!」


「そんなことわかってるわよ!だいたい兄貴と一緒に歩いてもこんな綺麗な絵里さんが彼女と思われるわけないでしょ!わ、私なら少しはありえるかもだけど」


「そんなことないよ。俊くん、雰囲気大人っぽいし可愛らしい舞香ちゃんはそれこそお兄ちゃんと妹にみえて変装とかもいらないんじゃない?わ、私はカップルって思われるかもだし変装も……必要だろうけど」


「……は?」


「……ん?」


「おい……」


 ギャーギャーとまたもや言い争う芸能人二人。


 困り果てた俊介は助けを求めるが如く煮物を口に運ぶ。


 一度はおさまった嵐がまた起こり、部屋の雰囲気はまたも最悪になったが相変わらず煮物は最高の味だった。

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