0-2 アイドルと女優



 幼馴染である絵梨花との再会をはたし、まさかの隣に越してきた衝撃から半日が

 経ち、いつのまにか窓から見える景色は夕方のものへと変わっていた。


「おっと、流石に動かないとな」


 夏休みの宿題は早々に終わらせるタイプである俺にとって、夏休み後半は自由時間であり趣味であるゲームと漫画鑑賞に勤しむ日々がつづいている。


 ガチャ


 玄関がいきなりあいて、舞香が部屋へと入ってきた。


「外あっつ……って、片付けてないじゃん!一体何してたのよ!」


「いや〜ゲームの方を少々な」


「しんじらんない!もう、手伝うから早く終わらせるわよ!」


 悪態をつきながらも部屋を綺麗にしていく舞香、これが俗に言うツンデレというものなのだろうか。


「舞香ってさ……」


「な、なによ?」


「いや、かわいいし家庭的だし、本当に最高の妹だよな」


「!? う、うるさい!どっかいけバカ兄貴!」


 少し頬を紅潮させながら、持っていた俺の洋服を投げつける舞香


 な、なんでだ?褒めたよな?やっぱり、舞香怖ぇ……


 *


 そんなこともあり、部屋の片付けも終わって俺たちはご飯が炊けるまでダラーっとすごす。


 適当につけていたテレビからは舞香たちのアイドルグループ『Amour』が出ているバラエティ番組が流れている。


「舞香ーお前出てるぞー」


「……そんなこと知ってるわよ」


 義兄に見られるのが恥ずかしいか、少しそっけなく返事をされる。


「ね、ねぇ」


「ん?」


「この中で、誰が一番可愛い?」


 テレビを指差し、そう聞いてくる舞香


「んー……

 みんな可愛いけど、やっぱり舞香が一番可愛いんじゃないか?」


「!? そ、そんなこと知ってるわよ!」


 えぇー……じゃあ何で聞いたのよ……


 また顔を赤くしギャーギャー騒ぐ舞香、こいつの情緒は安定をすることがないのか?



 ピーンポーン



 インターホンが突然なった。

 ギャーギャー騒いでいた舞香は落ち着きを取り戻し、俺は玄関へと急ぐ


 モニターに映っていたのはやはり隣に越してきた幼馴染

 上田絵梨花だった。


「はーーい」


 玄関を開けると、ぱぁっ と効果音がでているかのように顔を輝かせる絵梨花。


 両手には大きな鍋をもっている。もしかして……


「あ、あの、俊くんも一人暮らしって聞いたから、もしご飯食べてなかったら一緒にどうかな、って……」


 か、かわいい……

 透き通るほどの白い肌がほんのり赤く染まり可愛さが何倍にも倍増している。これを言われて落ちない男性はこの世に何人いるのだろうか?そのような愚考をしていると


「ん?……誰?」


 俺の肩からひょこっと舞香が顔を出して玄関を覗く


「「!?」」


 二人はお互いの顔を見あって衝撃をうけ固まる。そうだよな、舞香は側からしたら芸能人だ。そんなやつがいきなり部屋にいたらビビるのも無理はない。


「う、上坂絵里……さん!?」


「斉藤舞香さん!?」


 ……ん?

 斉藤舞香というのは昔の舞香の名前であり今の芸名だ。それより 


「上坂?違うぞ舞香。この人は上田絵梨花、俺の幼馴染だ。」


 なんか二人がこころなしかポカーンとしてる


「……まぁ、その、外で話すのもあれだし上がってもらったら?鍋も持ってるしその予定だったんじゃない?」


 そう舞香が言ったが、珍しく舞香がタジタジしている。

 なんだ?この二人面識があったのか?


「……え?いいの?」


 なんか絵梨花ちゃんも少し顔が青ざめている。なんだ?舞香が芸能人だから

 いきなり現れてびっくりしているとか……か?


「うん。久々に色々話したいし絵梨花ちゃんがいいなら」


「じゃ、じゃあおじゃましまーす……」


 そうして俺ら三人はリビングへと移動し、絵梨花ちゃんが作ってきてくれた煮物を食べることにする、が


「「……」」


 な、なんだこの葬式のような雰囲気。これは二人の共通の知り合いである俺が

 がんばらなければ……!


「あ、あのとりあえず自己紹介からな。まずこいつは、俺の義妹である蒼舞香。絵梨花ちゃんがあっち行ってから父さんが結婚して知り合ったんだ。」


「!? そうなの!?なんだ、私てっきり彼女なのかと……」


 あぁ!なるほどなるほど絵梨花ちゃんは舞香と俺がつきあっててスキャンダルを

 見てしまったと思って焦ってたのか


「か、彼女!?俊介と私がぁ!?」


 ……何でお前がびっくりするねん舞香さん。


「ま、まぁそれはおいといて、こちらはさっきも言った通り俺の幼馴染の上田絵梨花ちゃんだ。


 昔、ここら辺にすんでて仲良くなったんだが、引っ越してな。最近帰ってきたらしくてさ、今日隣に越してきたそうだ」


「今日、越してきた……てことは二人は恋人じゃないの?」


「あたりまえだ」


「あ、そうなんだ!てっきり絵里さんが彼女になったのかと」


「か、彼女!?俊くんの!?」


 こちらもまた同じ反応……なんなんだこの二人は、そんなに嫌か俺の彼女。


「てか、さっきから絵里ちゃんって、二人はもしかして知り合いだった?」


 俺のその素朴な疑問に部屋が静まる


「……あんた本当にいってんの?

 この人、超有名女優 上坂絵里 じゃない。何で知らないのよバカ」


 ……ん?舞香さんなんてった?


「……え、まじ?」


「……だまっててごめんね?なんか気づいてないみたいだったからサプライズとおもって」


 絵梨花ちゃんが舌を少し出し、ごめんポーズをとる。


 え、えーと、舞香の話が全て本当ならこの状況いろいろと……やばいんじゃない?


 まさかこんなところで、テレビをあまり見ない弊害が出るとは思ってもいなかった俊介であった。

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