第16話

翌朝、サクラはモミジの囲う腕の中で何時もより早い時間に目覚めた。モミジは抱きしめたら壊れてしまうと言わんばかりに、腕をサクラの身体に触れない様に、抱きしめて居た。その『お姫さま対応』に、こっぱずかしくなるサクラ。何とかこの腕の中から抜け出そうと、頭をひねるも、妙案浮かばず、モミジの目覚めを待つこと30分。このままの体勢で『モミジはぬくいです』と幸せそうに顔を、胸にうずめた。そして30分後、サクラの艶やかな髪が、モミジの顔をくすぐり、くしゅんとして目覚めると、彼のお姫さまは大胆にも、モミジの心音を聴くかの様なポーズで、モミジに抱かれていた。気づかった『腕で抱きしめ、苦しめない』というミッションは、達成できた。モミジは腕の中で居る一番大切なサクラを、どう起こすべきか?悩んで、身体をゆすって居たら「おそようございます。フィアンセ殿」と胸に当てていた顔で、見上げ、つぶらな両まなこが、モミジの両まなこをロックオンした。

「起きてたの?」恥ずいなと照れるモミジにサクラは「幸せそうに、眠っているから」起こせませんでした。と微笑んだ。チャーミングなサクラの顔に、モミジの心音ははやった。「そろそろ起きようか?」精一杯の虚勢で、『静まれ心臓』と無駄な足掻きをするモミジ。「もう少しだけ、このままじゃ駄目ですか?」との可愛いサクラに「駄目」トイレに行きたくなったから、とモミジは赤いほっぺたで、抗議した。残念と言わんばかりに腕のホールドをとかれ、サクラはすくっと立ち上がった。パジャマだから良かったモノのとモミジも、すくっと立ち上がり、瞬間見つめあった二人だが、モミジが、顔を反らしトイレへと階段を降りて行った。

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