第15話

宿題を終えてないモミジを、おいてけぼりに、サクラは、何度目かのドライヤーガンの練習をしに藍色のジャージで可愛くキメて、匕背の色男達と訓練フィールドに向かった。サクラの代からドライヤーガン戦士のドライヤーガンは充電式のモノになったらしい。使用時間が限られるも、サクラは訓練を、怠らなかった。「筋がいい」と匕背の色男達に褒められながら、サクラはドライヤーガンを振り回して、ターゲットのマネキンを何台も何台も倒した。

少し油断したので返り討ちにあったのが幸いして、サクラはたかだか数回という、短期間でドライヤーガンを自在に操れる様になった。「エクセレント」「グレイト」「ワンダーフォー」とベタ褒めする色男達にもなびかず、ただモミジの事を想うサクラは、綺麗で強かった。此れを、あのフリフリの衣装でやるとなると、空気抵抗がとかブツブツ呟くサクラだった。モミジのPale Blueのタキシードでも同じだから、教えてあげなくてはと想う一途なサクラだった。

でも誕生日が別々だったら、出来ない、モミジがサクラの操る桜の花びらの加勢も、出来る事からなるべく、一緒に居たい二人だった。

そんなこんなで……

汗まみれでぐしゃぐしゃだから、家に帰ってすぐにシャワーをあびるサクラにモミジが外から声をかける。「練習キツくなかったか?」「新しい技取得したか?」「タイムは縮んだか?」と、シャワーでくつろいでるのに五月蠅い。はやる気持ちも解らなくもないが、まずはお互いに落ち着きあいたい。サクラは「今裸だから」のひと言で、モミジの質問攻撃をやっつけた。

「ごめん、悪かった、また後で」モミジは自室に戻った。


疲れはて、モミジの質問攻撃をかわしたいサクラは、モミジの腕の中で眠りにつく事を想いついたから、綺麗に身体を洗ってシャワーを終えた。


階段を転ばぬ様に昇るサクラを待ち構えていたモミジは、まんまとサクラの奸計に堕ちた。年より大人びて見えるサクラの湯気の跡が感じられる寝顔がこんなに綺麗で、幼いモミジには色っぽいなんて、想像もしないモミジは、自分に預けられた体温とその重みを受けとめ興奮と安らぎを得た。小学生で良かったと想う。中学生なら粗相してるだろうし、高校生なら体型の変化で籠絡されてるだろうから大切な約束は絶対に守らなければならないから、とモミジはサクラに改めて誓う凛々しい男であった。


その夜、サクラとモミジは、座ったまま眠る事になった。モミジのモノトーンの部屋が初めて暖かみをおぼえた瞬間だった。何時までもこのままで居てねと部屋が、子守唄を語りかけ歌っているかの様な幸せな空間を築いていた。

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