第12話
お昼休み、モミジは職員室を覗いて居た。なんと泣きそうな顔をした、算数の先生を、見つけてしまった。
体調の不具合というよりは、精神不具合に体がつれ回わされているという感じが一瞥しただけで解った。それに話しかける優しい声は理科の先生だった。「宿題のプリントで自習させたから、安心しな」と肩をポンと叩いた。「すまない。忙しいのに」と算数の先生に「何かあったら連絡しろよ」と理科の先生は、理科室準備室に帰ってしまった。
本当に心の底から、嬉しげにしていた算数の先生の笑顔を凍らせた声が「やっほー」という『なりり』のモノだった。それを凝視してる不良じみた男子達のサブリーダーが居るのに、気づいたモミジは理科の先生を探してるふりをして職員室に入って、緊張でフリーズしてるふりをして算数の先生に、なりりに、サブリーダーを観察した。
なりりは「ありがとうセンセ」おかげで、先生といっぱい喋れたよ。他の先生達が、見てないのを良いことに「ご褒美」と言って濃厚なハグをした。サブリーダーの目は、人殺しの目に変わっていった。算数の先生は『困ったお嬢さんだ』と焦っている。「また協力してね」と耳もとで囁くと、なりりは理科の先生の机を愛しげに一瞥して教室に戻っていった。
勿論、モミジとサブリーダーには音声が伝わっていないので、一瞥した机の存在を覚えていたモミジと頭にきて忘れてしまったサブリーダーには、真実はまだ、見えていなかった。「なんだあれ?」とモミジは、頭から離れなかった。いつの間にか昼休みをおおかた使った様だ。給食食べたかったな、と想いながらモミジは先に教室に戻った二人の後を追うかの様に、廊下をダッシュした。そして、残された給食のお盆を教室の後の机よりかは高さのある体操着入れのてっぺんに置いた。
次の休み時間、少し食べようとモミジは想った。
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