第6話

夕食の席で、ほっぺただけが赤くなった二人は、一緒になった階段を譲り合いながら、昇った。「なんか変な空気だよな?」モミジが言葉を発する。「うん。そうね」と、小さく答えるサクラに、モミジはきっぱり言った。「まだサクラには手をださないから」真剣なまなざしでサクラの両まなこを写す。「うん。そうよね」杞憂に『馬鹿か?私は』とサクラが、くすくす笑う。その笑顔に胸が、動悸が駆け足になるモミジは『大切なモノ』を守りたいから、失いたくないから、何れ恋をして、愛したいから、自戒する。「何があっても、サクラとは、」挙式をあげるまで何もしないから、と伝えたら、サクラのくすくすは『ウケたのか?』やまないから、モミジは少し自信を無くした。サクラは綺麗な顔をしている。チャーミングだ。サクラは幸せそうに笑う。チャーミングだ。だから、歯止めが利かなくなる男に成るんだろうな、自分は、とモミジは、そっと想った。

二人は部屋の前で「おやすみ」を言って別れて、それぞれの時間をすごす。

サクラを落ち着かせたモミジは、『まだその時じゃない』と、何故か?安堵した。

サクラを失望させるまだ実力の無い自分を予想して、怖く、悲しく、寂しくなったからだ。こんな風に小学生のモミジが年寄り染みた性格をしているのは、モミジは匕背の男で、匕背の人間ながら椛を操る能力をもった選ばれしモノだから。悪者退治をする紀眞のサポートが出来る唯一無二の匕背の血を得たから。自覚は、初めて会った時からしている。同じ日に生れたあの時から、乳児期からモミジはサクラを意識していた。

考えすぎになったモミジは『まっいっか』 と宿題にとりかかった。

出遅れたモミジと違いサクラは宿題を終え、眠りにつくまでPale Blueの海と空のジグゾーパズルに没頭していた。


算数の先生が苛めに合ってるか?どうか?の話し合いは尻窄みに終わった今晩だが、どうか若い二人を許して欲しい。まだまだ二人は子供だから。 そして明日へと日付けが駆ける。

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