第3話 嘘

それから、映画館やボウリングなど

いろんなところに行っては写真を撮って

アルバムに挟んで行った。

幸せな日々ということと、いつまでも続いて欲しい。

死ぬまで一緒にいたいという願いを込めて

『ハッピーエンド』と名付けたアルバムに。

ある日だった。

LINEで

「花火行かない?」

「良いけど。いつあるの?」

「明後日」

「楽しみだね」

「うん」

花火大会に一緒に行くことに決まった。

楽しみで仕方なかった。

次の日、学校で明日の予定を話した。

「最高の花火大会にしよう」

「うん」

昼休憩になり、私が弁当を食べていると

頭から水をかけられた。

あの日付き合ってからいじめは

絶えることが無かった。

「何で、あんたなんかがあいつと付き合えるの?

早く別れろよ!!」

「何も分かってないくせに」

女の嫉妬の怖さを感じた。

その日の放課後は雨が降っていた。

傘もなく途方に暮れていた。

「幸子、何やってるの?」

「ごめん。ごめんね」

「一緒に帰ろう」

「うん」

「あ、雨が降ってるね」

「私、傘持ってないよ」

「じゃあ俺と相合い傘する?」

「えっ!?良いの?」

「良いよ」

「ありがとう」

「俺とお前はいつまでも一緒だよ。

お前を1人なんかにはしないよ」

「あ、ありがとう」

「明日が楽しみだね」

「うん」

あの日妄想してた事が全て現実になるとは

誰が思ったか。

別れ際、翔くんが頬にキスをしてきた。

「お前がいるだけで十分だよ。

お前といられるだけでしあわせだよ

明日、楽しもうね」

「う、うん」

私は今、どんな顔をしているのか?

キスをされてどんな顔になっているのか?

過去1ブサイクかもしれない。

それぐらい幸せだった。

帰ってずっとドキドキしていた。

あの翔君にキスされた。

あのシーンが鮮明に蘇った。

今日は眠れなかった。

次の日、朝早く起きて準備をした。

夜だとは分かっているけど楽しみすぎて

ずっと今日のことだけを考えていた。

空がオレンジ色になってきて私は

会場へと向かった。

約束の時間まであと5分を切った。

早く会いたい。早く楽しみたい。

しかし、翔君は来なかった。

30分は待ったが一向に現れなかった。

何かあったのか。通り魔にあったのか。

不安で仕方がなかった。

仕方なく帰ろうとした時だった。

翔君が誰かと一緒に歩いていた。

見てみると優子だった。

「なんで?」

何で?何で?何で?

頭の中が疑問で溢れかえる。

捨てられたの?私じゃダメだったのかな?

あのキスも付き合ったのも全部嘘だったの?

『俺とお前はいつまでも一緒だよ。

お前を1人なんかにはしないよ』

あの言葉を聞いた時嬉しかったのに。

あれすらも嘘なの?

何か答えてよ!

私は持ち歩いていた『ハッピーエンド』を

ゴミ箱に入れた。

そして、私は倒れ込んでしまった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る