第14話 これが私の生きる道 ~side S~
俺の努力がようやく実り、やっとチワワ好きの
口約束だけど忘れたとは言わせない、絶対に実行させる……って、あれ……?
「今度、越後に行ってみませんか? こちらの世界には「
あの時雪村は、確かにそう言った。
「こちらの世界には」?
俺はやっとあの時に感じた違和感の正体に思い至った。そうだ、それだ。
まるで俺が「この世界」を知らないことを知ってるかのような言い方。何で雪村がそれを知っている?
わかんねぇ。
デートだと浮かれていた気持ちが、急にじわじわと締め付けられるみたいに苦しくなっていく。
雪村のやつ、俺が何かヤバいことやったら抹殺する任務を請け負った、タイムパトロール的な何かだったらどうしよう……
うん、無いわ。
俺は俺自身のあんぽんたんな妄想を一蹴した。
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「花押を君に」は暇を見て進めている。
今のところ兼継エンドだけ見たけど、あいつ
「エンディングで天に
ゲームの兼継はもっと愛想が良かったのに、こっちでは「俺はどの選択肢を間違えたんだ?」ってくらい、初対面の時からすげえ素っ気なかったしな!
いや、いいんですよ別に?俺だって兼継狙いじゃないし?
…………。
それはともかく。「夏桜」うんぬんの件は俺の聞き違いか、雪村の言い間違いだろう、たぶん。
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そんな感じでのほほんと姫生活を満喫していたら、
ゲーム中でも発生する大阪城の花見で、これがきっかけで桜姫デビュー!みたいなイベントだ。悪い意味で。
というのも、
まあ、別に「証拠をみせろ」と言われる訳じゃなし、ただ「桜姫」が有名人になるだけなんだが。
俺にとっては花見なんてどうでもいい。確かここで
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「雪村、似合う?」
俺は俺自身の女子力を全開にして くるりと回ってみせた。克頼の用意した着物はやたら豪勢で、本当にお姫様って気分になってくる。
ちなみに頭に被った
ほらあ! 俺って一目見ただけで男をメロメロにさせそうな美少女だよな?
なのにあの攻略対象どもってどうなってんだよ。
とくにあのチワワ好き。
あんなに
おべんちゃらには結構自信があったんだが……俺もまだまだだな……
実際この男どもを狂わせそうな
どうやったらこいつ、攻略できるんだ?
幼馴染だから「桜姫を恋愛対象に見れてない」設定か? それとも桜姫はどっちかっつーとロリっこだから「まだ早い」と待っているパターンか?
ならば大人の女をご所望か!?ちょいと「女」を意識させるようなイベントをぶち込むべき? と胸に饅頭入れて巨乳にしてみたけど、あいつ一瞥もしなかったぞ!?
その歳で枯れるなよ、もっとグイグイ来い!!
そんな感じで、こいつをオトす事ばかり考えているせいだろうか。
何かキラキラして見えるなー……花嫁のヴェール越しってこんな風に見えるんだろうか。
あ、そうか。現世で俺が結婚式を挙げたとしてもヴェールを被る予定はないから、これも満喫しておくべきイベントだな!
そんな事を思いながら、俺は改めて雪村を見上げた。
「ね、雪村?これって結婚式みたいじゃない?」
上背あるし、いざって時は行動が男前だから普段はそう思わないけど、穏やかな表情してると女みたいに見えるな、こいつ。
こっちの世界に来てから、俺は男目線なんだか女目線なんだか、自分でもよく解らなくなってきてるなー。
そんな事を考えながらぼんやり眺めていると、少し不思議そうな表情で俺を見た雪村が「でもこれでは姫の可愛らしいお顔が見えません」とか何とか言いながら、突然俺に掛かっていた
「女みたいだな」なんて思っていた矢先に、突然至近距離で雪村の顔がクリアになったせいで、俺は思わず動揺しまくった挙句に雪村の腹に突きを入れてしまった。
やばい、俺、子供の頃は空手やってたのに! 慌てすぎてうっかり手が出た!
ぐらりと沈みかけた雪村を慌てて支えたけど、
女の細腕での突きはさほどではなかったみたいだ。良かった。
良かったんだが……何でこいつ、殴られたのに嬉しそうな顔をしてるんだろう?
何かよからぬ
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