第8話
で、今はここ。
午前3時半のファミレス。
身震いして息を吸い込む。
この時間帯のファミレスがこんなに冷えるなんて、かのサークルに入らなければ知らないままだったかもしれない。
小休止、暖をとろう。
こんな時間でも意外と席は埋まっているもので、同じく終電を逃したような若者やら、パソコンで作業に没頭する者やらで低くざわついている。ドリンクバー脇のスープは者共にほとんど食いつくされたようだ。
底が見えるほど透き通ったコンソメスープに、にんじんたまねぎとコーンの欠片がドット模様に浮かんでいる。注いだマグカップから伝わるのは求めていたより遥かにぬるい温度。
仕方が無いからホットコーヒーも携えて戻る。ソファの硬さに改めてうんざりするな。
はい、いただきます。
温度といい味といい、しょっぱいスープだ。
コーヒーも小さな湯気程度だが、猫舌にはこれで十分だ。やっと一息つけた。
春の、言うならば「出会い編」をおさらいする必要があった。結構こまかく覚えてるもんだと思う。
明らかに抜け落ちてる場面もあるだろうが、それでも感情の動いた順を追うと引っ張られるように情景を思い出しやすい。
こういう、流れをなぞる作業自体は、楽譜の理解と同じようなもんで慣れていた。
同じようなもんだろ、と瞳を弓なりに笑ったのはサークルの眼鏡先輩だ。
まったく、簡単に言ってくれる、と正直思った。
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