3◇職業選択の自由が保障されない異世界やだぁ……


それからロンラさんと数分間談笑した後、ギルドに戻って、依頼達成の報告と報酬をもらって、ついでに金貨を銀貨10枚に両替してもらった。

 

言葉にまとめるとそれだけの話だけど……実際問題としてかなり疲れた…といっても、精神的なものがメイン。

別に肉体労働は移動だけだからね。

それぐらいで疲れる程弱りきってるわけじゃないし。


散歩がてら、ギルド内部をうろうろするという紛れもない奇行を繰り返す。


さてどうしようか……

レベルを上げれば、昨日みたいなことも起きないからさっさとレベルを上げておきたい。

でも今街の外にでてもゴブリンにすら勝てる気がしないんだよなぁ……

つまり経験値を入手出来ないので、嬲り殺しの未来ぐらいしか予測出来ないわけだ。悲しすぎでしょ、私の人生。


「あー、安定する職業に就きたいよね」


独り言を呟きながら、ギルド内をふらふらしている不審者にランクアップしたところでギルマスが見かねたのか声をかけてくれる。


「そういえばハナの職業って何だ?」


まあギルマスには素直に言うべきだろうなぁ……でも何かオススメの職業とか教えてくれるかもしれないし。

お金稼げる感じのね……冒険者はあれよ、つよつよ主人公君に任せておけばいいのよ。

もしくは戦闘狂的な人。


「まだ無職。一般引きニートともいう。何かオススメある?」


「にーと?何だそれ?」


あれ?ニートって言葉ないのかな?

……もしかして異世界あるあるカタカナ通じない系のそれ?

いやでもここまでで片仮名使ってたような……うーん。

というか名前は片仮名だし……


「…それにしても無職とは意外だな。昨日の動きから何らかの職業についてると思ったんだが」


煽りかな?まあ煽りではないんでしょうけど。

というか動きから職業見極められるって……えぇ……

人間辞めてないとギルドマスターってなれないのかな?


「まあ、オススメって言われてもハナが何の職業に就けるか判らんから何ともいえないなぁ…無職ってことはそれもわからないんだろう?ここで見てみるか?」


……そんな簡単に見れるものなんですか、職業って。

ギルマスが『昨日の動きが凄い』って評してくれたけど……多分アニメとかゲームFPSとかの影響だわ。

あと、後ろ見るやつ。えーと……『限定空間制御ディメンションオービス』ってやつ。

私はステータスを確認して正式名称を思い出す。

……覚えてないと後々盛大なやらかししそう。


「ん、お願いする」


そう言ってギルマスに連れられてきたのがギルドの3階にある部屋だ。


「この水晶に触れてくれ。そしたら何に就けるかでてくるはずだからそっから自由に選んどけ」


そう言ってギルマスは部屋から出ていってしまった。


部屋の中心にある水晶は何処か科学的で、幾何学的雰囲気を出しながら…色んな所に魔法っぽい装飾や紋様がある。

なんだろう、魔法と科学の集合体みたいな……まあいいや、一々そんなものに突っ込んでも仕方ないか。

そんな水晶に恐る恐る触れると表示が浮かび上がってきた。


──────────

選択可能主職業一覧表

魔術師

軽戦士

料理人

重戦士

女優

予測者

既死者

不思議之住人

異界者

──────────

──────────

……該当項目「異界者の検知」達成を確認「才能計測機器」の隠蔽録音を再生……経年劣化による音声の欠損を確認……

──────────


まてまてまて、情報を増やすな。

というか…え?停止機能ないの?

あっ、なんか始まる……


──────────

 もし、これを見ている人がいるならば君は地球の人、いや、ここの世界の人ではないのだろう。

私も日本人…いや、元日本人と言った方が正しいだろうがそんな感じだ。

私はいわゆる転生者というやつでこれでもここで─年以上生きてきたが一回も日本人、いや転生者にすら会ったことがない。

だから正直この機能が使わ─るとは思ってない上にもし使われたとしてもこれを録音してから何百いや、何千年後になってるかもしれない。

だが、これはもはや私が転生者と通じ会える最後─希望でもあるからな。

本当は直接会って話したいんだがそ─そろ──がな……。

 おっと、そんな事を話すために録音してるわけではない。

おそらく君は見知らぬ世界に来─とても困惑してるだろう。

もしくはここが異世界だ─信じてないのかもしれない。

どちらにしても安心し─くれ…と言いたい所だが残念ながら言えない。

この世界にはあの─────────のせいでそこらじ─うににモンスターがでてくる上にモンスターも基本的に元の世界のアスリート達と比べ─もだいぶ素早い。

さらにライトノベルであるような「魔法」の様な便利な物はなく、現代日本のよう─科学技術が発達していて、それが生活の主軸となっている。

ルナエン王国宮廷科学研究者筆頭として国民のために、一転生者として後続の転生者のために、色々な物を遺してき─つもりだが……君がいるときまで残っているかわからない。

一応全て言っておく─機能はともかく場所は信用しないでくれ。

 まず一番─自信作、『第─種永久原─間力生成機』通称「小型発電機」、だが機能としては名前の通─半永久的にエネルギーを作り出す機─でルナエン王国を始めとする大国に保管させて─る。

王城に入れるようになるまでは……まあ、頑張ってくれ。

後、小型発─機に向かって「ナポレオン」というとそれの管理─権限を入手できるから─ってくれ。

次に……元の世界に帰る手がかりになる…おっと他の機能のことも考えると録音できる限界時間か…そうだな……この機械は大量生産したからさすがに後世まで残っているだろうし…よし、すまない。

続きは小型発電機に同じようにいれておく。

 それでは、これが誰かに伝わることを信じて、天整統霧生より、後続者へ。

─────────


……どうしろと???

天整統さんよ、それをいきなり伝えられて何が出来ると?

こちとら一般温室勢なんだよ……?


まあ軽く頭を使っておきますか。


……後半の情報は重すぎるからまた今度考えるとして…っていうか忘れてたけど職業もやばいやつあったなぁ……

なんだっけ?なんか色々あったよね。

あ、もう一回触れたら出てくるのね。よかったよかった。

というか職業ってこんな感じなのね、ゲームじゃん。MMOじゃん。


個人的には不思議之住人か予測者、それか職業を明かさない前提で異界者だといいかなぁと思ってるけど…どうせ職業によって覚えられる技能スキルが違うんなら既死者はどうみても便利そうなんだよなぁ……

でもなぁ…既に死んだ者って名前がなぁ…なんか女子として…っていうか生きている人間としてやだよね。

どうせ変更できるだろうし、ここは不思議之住人にしようっと。


特に深くは考えず、なんとなくタップしてみる。

別に実態があるわけじゃないので指がすり抜けるけど……まあ上手く行ったらしいね。


《職業:不思議之住人により称号を獲得、mpに上昇補正、ボーナスポイントの増加》


~~~~~

不可思議之秘密シークレットファンタジー

効果:他者からの自分に対しての鑑定を阻害する(鑑定阻害・特)

~~~~


あれ?この職業優秀じゃね?

只でさえ隠さなきゃいけない、ていうか隠したいことが多い私のステータスがバレる心配が減るわけだし。

逆にバレたっていうことは逆説的にその人の鑑定能力が信用できるわけだし……まあバレたら色々不味いんだけど。

その上mpを大量消費する私の特殊技能ユニークスキルと相性が滅茶苦茶良くね…?

落ち着いて考えたらあの特殊技能ユニークスキルのおかげでこの職業が出たと考えたら相性良いのは当たり前では?

まあどっちでもいっか、優秀なのには変わらないし。

とりあえず重そうな話はまとめて夜とかに考えるかな……って言ってもこれから寝るまでやること無いんだよなぁ…

……まあ、取り敢えずギルマスの所に戻るか。


「どうした?5分以上かかってたが何かあったのか?」


そりゃあ職業選ぶだけで5分も10分もかけてたら怪しまれるよね。

さてギルマスには何処まで話したもんか……まずあの話は話さないとして、職業は素直に言おうかな?

まあ一応少し濁しておくか。


「持ってる技能スキルに関連した職業になった」


「わざわざそう言う言い回しをするってことは、職業の名前は言うつもりないんだな?」


「もちろん……襲われるかもしれないから」


一応ポーズとして、自分を守るように抱きしめる。


「いや、襲わねぇよ…で、ハナはこの後どうするんだ?」


信用ねぇなぁ……とぼやきながらも、今後のことを心配してくれる。


「そうね…特に決まってないけど…」


「じゃあ近場の森に俺と一緒に行かないか?」


「えっ?会って2日目の人をデートに誘うのはちょっと……」


「勝手に勘違いするな。そんな意図はない。それに俺には妻子がいるんだが…」


意外。失礼かもだけどいないかと思ってた。


「それならいいけど…もしかしてギルマスって暇人?」


「……まあな。王都のギルマスが忙しかったらその国大丈夫か?って話になるだろ?」


「それもそうね。じゃあその森とやらに行きましょう」


そんなこんなでギルマス同伴で最初の森──正式名称は『モル森林』って言うらしい──に向かうことになったけれど、良く良く思い出してみれば私、あのゴブリンから逃げた時からmp以外基本変わってなくない?

あれ?もしかしてまた逃げることになる?

……そういえば不思議之住人になった時に『ボーナスポイントの増加』って言ってたな…今の内に見ておくか。



~~~~

名前:?

種族:人類種

lv1(ボーナスポイント:+10)

職業:不思議之住人lv1

hp…10/10

mp…25/220

str…5

vit…5

dex…5

agl…15(+10)

luc…2

番外技能エクストラスキル

…【重複魔術マルチスペル】lv1


特殊技能ユニークスキル

…【御伽之城主ミッシング・エリア】lv2

…【◼️◼️◼️◼️】lv1

称号

『唯一之取得者』

『廻遡宙の観測者』

不可思議之秘密シークレットファンタジー


「固有魔術」

限定空間制御ディメンションオービス』lv1


所有武器:クレルモン

mp貯蔵(4/1000)

~~~~


さて、とりあえずボーナスポイントを全てaglに使って…

……あっ!そういえば私って攻撃手段0じゃんどうしよ。

aglが25になったのはいいけど、これじゃあゴブリンより速いけどどうしようもなくない?

何なら特殊技能ユニークスキル使っても攻撃できるようなものないし、八方塞がりでは?

っていうかそもそも【重複魔術マルチスペル】も録な魔術覚えてないからつかえないじゃん。


「ホントどうしよ…はぁ……」


「そんなに俺と行動するのやだったか?」


「あ、声に出てた?……ってそう言うため息じゃなくて、ゴブリンに対して攻撃手段がないなぁって」


「え、クレルモン渡したろ?」


「え、でもあれ攻撃力素手並でしょ?」


「もしかしてハナってstrかなり低い?」


低いも何も5なんて口が裂けても言えない、もし言おうものならレベルがだいたいバレる。

というな確定で1ってバレる。

まあ別にそれはバレて困る物ではないけど。

ほら、弱みってなるべく隠したいじゃん?

そういうものなのよ、特にあんま会ったことのない人に対しては。


「うん、かなり低い。どうする?帰る?」


「なんでそう帰ろうとするんだよ……しょうがない、帰るまではこの武器を貸してやる。そんな強くないがゴブリン程度なら十分だろ。」


そう言って渡されたのは強い武器…ではなく普通の鉄の剣だった。

…って言っても普通の鉄の剣見たことないし、どんな感じなのかは知らないんだけどね…よし、『舞踏城タンゼンシュラウス』を効果時間1分に効果はagl、dexは2倍で発動するか。

丁度いいし、実験がてらクレルモンの貯蓄魔力を使うか。


「『舞踏城タンゼンシュラウス』発動!」


ちなみに『発動』はいらない。雰囲気作りと私自身のテンション的な問題。

ほら、唯でさえ厨二病のかたまりみたいなことしてるからね。折角だから……

何かギルマスに変な目で見られた様な気がするけど、効果時間が惜しいから急いで行こう!


ゴブリンがギルドでの体験通り真っ直ぐ突っ込んできた。

そこに鉄の剣を置いとくだけで勝手に当たってくれるけど、圧倒的str不足が原因なのかかすり傷しか入らない。

……そんなことを繰り返しながら、どうしようか考えてる内に『舞踏城タンゼンシュラウス』の効果時間が切れそう……つまり1分が経過する。


その時、轟音が響いたと思ったら──


《レベルが上昇しました》

《職業レベルが上昇しました》


目の前にいたはずのゴブリンがいなくなってた…驚いて後ろを振り向いたらギルマスが丁度大剣を仕舞うところだった。

もしかしてギルマスってあんなのだけどめちゃくちゃ強い…?


「すまない!まさかゴブリンに軽傷を負わせる程度しかstrがないとは思わなかった。あの様子だとstrは20いってないだろ?」


もしかして煽られてる?確かに事実だけど煽られてる?

というかなんか釈然としない……ぬー。


「お前が帰りたがってた理由がようやくわかったよ。暫くはギルドの訓練所のマシンで訓練しような。」


まあ、事実だし帰るしかないよね……



森から帰ってきてギルマスと別れて宿に戻ってきた。

さて、後回ししていたことについて考えますか……

まず最初にあの伝言について。

どうしたものかなぁ…まあ話を聞いた限り「ルナエン王国」っていう所の王城に何か凄い機械があるらしいから取り敢えず行っておきたいよね……


「ルナエン王国」が何処にあるのか私の0に等しいコミュちからを振り絞って女将さんに聞いたらこの国の神話での名前だって言ってた。

因みにその代償に私の今日の人と会話出来るゲージが0になった。

というか、神話になるほど昔の時代の人だったのかあの人。

……ってことはもしその「ルナエン王国」の時代から城が変わってないならこの国の王城にあるってことだから、王城に入れる位にならなきゃだめかぁ……

まあ冒険者としてランクを上げれば行けるでしょ。

最悪行けなかったとしてもギルマスに頼み込めば行けそうな気がしなくもないし……


次にあの伝言で「魔法」がなく「科学技術」が発展してたって言っていた件についてだけど…いや、どうみてもあるし、何なら私も普通に使ってるし、どういうこと?

「神話の時代」と今では状況がかなり違うのかな?

まあ王城にある次の伝言で何か聞けるかもしれないし放置でいいか……


三つめにギルマスにはバレないようにしてたけど私、生き物殺せない気がする。

確かにかすり傷しか与えられなかったけど、やろうと思えば目とかを剣でさせばダメージ入るはずだろうし、それを思いつくのにできないってことは多分殺せないよなぁ……ギルドの機械でやってみれば慣れられるかな?

それとも、VRゲーム気分でやればいけるかな…?

まあVRゲームなんてあんまなかったしやった事ないけど。

まあこれも後回しで。


最後にお風呂が切実に欲しい!今は水?お湯?浴びを桶でしてるだけだから正直気持ち悪い。

お金ためたら買えるよね?小説とかだと貴族なら持ってるみたいなことも多いし。

あれ?要は冒険者として大成しなくちゃ何もできないのでは?

大したチートもなさそうな私にそれ出来るの?


ちなみにレベルアップしたわたしのステータスがこちら。


~~~~

名前:?

種族:人類種

lv2(ボーナスポイント:+20)

職業:不思議之住人lv2

hp…15/20

mp…146/250

str…10

vit…10

dex…10

agl…30(+20)

luc…2

番外技能エクストラスキル

…【重複魔術マルチスペル】lv1


特殊技能ユニークスキル

…【御伽之城主ミッシング・エリア】lv2

…【◼️◼️◼️◼️】lv1

称号

『唯一之取得者』

『廻遡宙の観測者』

不可思議之秘密シークレットファンタジー


「固有魔術」

限定空間制御ディメンションオービス』lv1


所有武器:クレルモン

mp貯蔵(0/1000)

~~~~


ところで名前はいつまで「?」で押し通すのかな?

まあいいや…ボーナスポイントどうしよっかな。

aglは大分増えてきたしなぁ…よし、mpにしよう!

mpに全部使ってっと……

何々?mpが…650!?1割り振るごとに20も増えるの?

これも職業効果だろうなぁ…これまでもmpに割り振るのが正解だったのでは?…

そんなことを考えていたら寝落ちしたらしい……

今日もお疲れ様でした、お休みなさい……

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