第九話 始めての狩り(見学)

横田城 阿曽沼孫四郎


 まず簡単に作れるわら半紙からだ。藁さえ有れば作れるから楮などが得られても生産予定だ。奈良時代にはすで藁紙というものが記録されておったし、なんとかなるだろう。これは箕介に任せるしか無いが、快く引き受けてくれたのでとりあえず解決だろう。


 苗代に播種をすすめるが、水が冷たい。ちゃんと出芽してくれるのだろうか?保温折衷苗代はやっぱ必要だな。わら半紙が実用化できたら実験してみよう。


 土地は余っているので大豆と稗、粟にダイコンと湿地にショウガを植えていく。蕪も植えておく。蕪を品種改良することで白菜、小松菜などいくつかの野菜を作ることが理論上は可能なはずだ。明から青菜とか白菜(しろな)とか油菜など取り寄せて結球型の白菜を開発し鍋料理を愉しみたいのだ。


 あとは西洋から燕麦とテーブルビートが欲しいというか必要である。燕麦は収量がダントツだからな。緑肥にもなるし、飼い葉にもなるし余ったえん麦は飼料にできる。燕麦を食べていると米を食ったときの感動はひとしおだ。ジャガイモが手に入ったら燕麦は飼料用にできるので馬を増やせる。早く芋が欲しい。

 

 ビートは野菜として、あるいは飼料として使われる物のようだが、その一部に甘味が強く、冬でも家畜が好んで食べていたものがあると。その甘みの強いものを選抜していき、最終的に砂糖大根を生み出せれば……やはり北海道が必要だ。なるべく早い段階で太平洋への出口を確保し石狩、十勝、釧路の地を目指したい。



「のう、清之よ」


「今度は如何なされた?」


「狩りに行きたい」


「若様にはまだまだ早うございます」


「むう……。山鯨とやらを喰ってみたいのだ!」


「ははは!わかりました! 畑仕事が一段落しましたら村の者達と狩りに行ってきましょう」


「幼獣はいくらか生け捕りにできたら、飼ってみたいぞ」


「善処いたしましょう」


 犬飼いたいって言っている子供をあやすような対応をされてしまった。まあ子供だけど。


 タンパク質の確保だが、いずれ鯉や山羊、羊、牛は手に入れるとしてまずは食害を減らすのと連携をとるための羚羊(かもしか 氈鹿とも)に鹿と猪を狩ろう。時折人をさらっていく狼も狩ってしまおう。幼獣は犬と掛け合わせて軍用犬にしたいな。伝令に捜索、警戒など有用である。日本で軍用犬は南朝方の畑時能(はたときよし)や戦国時代では太田資正(おおたすけまさ)などが使役していたようだし現代でも警備などに活用されている。


 色々言ってみたが、要は肉食いたいのだ。肉肉肉……。



遠野の山中


「若様はそこで見ていてくだされ。者共行くぞぉ! 若様に恥ずかしいところを見せるでないぞぉ!」


「うぉぉぉ!」


 追い込み猟かな?10人ずつ3つの集団が山に入っていく。


 しばらくすると、ジャーンジャーンジャーン!と銅鑼を鳴らしだすと驚いた鹿や猪が群となって飛び出てくる。


「それ! 今じゃ! 射掛けよ!」


 矢の雨が鹿や猪に襲いかかる。数頭が倒れたところで狩りは終了だ。逃げ遅れた子鹿や瓜坊は大きくなるまで飼ってみよう。


「いよーし! 大猟だぁ! みな! 捌くぞぉ!」


 獲物を急いで捌く。水辺で血を抜き、腸を傷つけないように取り出し捨てる。そしたら紐を通して滝壺に落とし一気に冷やす。


「滝壺につけるのか……」


「こうすると臭みが減ってうまくなるのです」


 血抜きが終わったら皮を剥いで、味噌を落とした鍋に、猪肉とショウガ、ネギを入れしっかり火が通ったら山椒を振って食べる。まだ秋ではないので脂肪が少なくあっさりだ。が、とにかく今生で初めての肉だ!臭みはあるけどうまい!


「清之! うまいぞ!」


「ははは。若様は山くじらが好きでございますか」


「うむ気に入った。今後も狩りを定期的に行おうぞ」


「はっはっは。御意にござる」

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