第260話 引きこもりなゲーム廃人?
「こ、これは!?」
徹夜のソシャゲの素材集め周回を終えた朝、ヒスイは自室のベッドの上で目を見開いていた。
視線の先に有るのは、己の手に握るスマホ。
その画面には、自身が先程まで徹夜で遊んでいたソシャゲとは別のソシャゲに関する記事が映っていた。
『本日より開催!コラボカフェで敵を倒して限定キャラをGETしよう!!』
「っ!!」
ヒスイは、心の底から嘆いた。
不覚!
一生の不覚!!
お家の皆と共にスマホ屋さんで自分のスマホを買ってもらい、喜び勇んで念願だったソシャゲデビューを果たした。
だというのに、一番時間を注いでいたゲームのリアルイベントを見逃していただなんて!
「不覚!他のソシャゲのイベント周回してたせいで、全く知らなかったッ!!」
開催日は今日から。
もっと早く知っていれば、どんなイベントなのかネットで調べて事前準備する事が出来たというのに。
己の情報不足を心底呪った。
「ん。後悔しても遅いや」
いや、当日知れただけでも僥倖だった。
これが、イベントが終わった後に知ったら己を呪う程度じゃすまない。
ベッドに倒れ、枕を涙で濡らしていた事だろう。
今日から開催なのだ。
幸いにも今は朝の8時頃。
今からイベントについて調べ、ママやおばあちゃん達にお願いすればコラボカフェに行けるかもしれない。
「急がねば!」
善は急げ!
思ったなら即行動開始!
ママから学んだ行動力をもって、ヒスイはベッドか飛び降りると部屋から飛び出してママ達が居るであろうリビングへと走り出した。
「ママ!」
リビングに突入し、唯一リビングに居たテーブルにダラ~と突っ伏してテレビを見ているママを見付けた私は、飛び付く様に駆け寄り声を掛けた。
「んぅ?おはよ~ヒスイ」
私とは違うなにか徹夜の作業でもしてたのだろうか?
前までは部屋が足りずに客室で川の字で寝てたりしてたのが、今では私の自室が出来た様に最近ママは手が空いてる時に能力で何かしてたり、空間を弄ってお家の増築改造をしてたりする。
なので、また何かしてたりお家の改造でもしてたのかもしれない。
「ん。ママおはよう。なんか疲れてる。どうしたの?」
「いや~昨日の夜に少し能力の実験してて徹夜しちゃってさぁ。少し疲れがねぇ」
「なるほど」
ん。だいたい予想通りだった。
しかし、これは困った。
これでは、ママにコラボカフェに連れていってもらえるか怪しい。
いや、ママなら物凄く優しいのでお願いすれば高確率で『うん。良いよ~』と了承してくれるだろう。
一応、確認しておこう。
「ねえ、ママ」
「ん?なに?」
「これ」
ママにコラボカフェについて書かれてるスマホのネット記事を見せる。
「ソシャゲのコラボイベントかぁ。これって、私はやってないけど、確かヒスイがやってるソシャゲだよね?」
「ん。コラボ限定のキャラGET出来るから行きたい。ママ、行ける?」
心の中でママが了承してくれるのを祈る。
「あぁ~ごめんねヒスイ。ママ、今日は異世界の方に用があって連れていってあげれないや」
「そ、そんな」
「お、おぉう。そこまでショックなんだ」
ショックのあまり、膝から崩れ落ち四つん這いに倒れ込む。
正直な所、ママならお願いしたら喜んで受けてくれると思い込んでいた。
まさか、既に予定があったなんて。
「なんというか、本当ごめんね。気持ちは本気で理解出来るよ。私も昔、ソシャゲのコラボイベントに連れていって欲しかったのに無理って言われてエグい位にショック受けたから」
だったら、連れていって欲しいのだが。
そんな気持ちを込めてママの顔を見る。
「うッ、そ、そんな顔でママを見ないで。愛娘への罪悪感で連れていってあげたくなるッ」
眩い光から目を守る様に大袈裟な身振りで顔を隠すママに私は小さくため息を吐いて四つん這いの格好から立ち上がる。
「ん。もう予定あるならしょうがない。我が儘言ったらママに迷惑だし諦める」
「え!?それじゃコラボイベントどうするの!?」
「フェリお姉ちゃんやおばあちゃんに頼んでみる」
これで二人も無理と言われたら仕方ない。
諦めてエリーに命令して内緒でこっそり行くしかない。
「フェリとお母さんか。確かに二人なら特に予定は無かった筈だし連れていってくれるかも」
「ん。だから、今からフェリお姉ちゃんとおばあちゃんにお願いしてきます!」
ママのマネで少しふざけて敬礼のポーズをしてみる。
「ヒスイ大佐の健闘を祈る!」
ん。やっぱりママはノリが良い。
こうして私のおふざけにも乗って返してくれる。
ママと共にお互いの敬礼姿に笑みを浮かべ、私は敬礼のポーズを解いてフェリお姉ちゃんとおばあちゃんを探しにリビングから出ていった。
「にしても、ここは千葉だからまだ近いとはいえ、わざわざ秋葉原まで行ってソシャゲイベントをするなんて。随分とゲーム廃人っぽくなってきたなぁ」
昨日なんて、前にお母さんにお説教されたのに徹夜でゲームしてたっぽいし。
このままだと、ヒスイが引きこもりなゲーム廃人幼女になっちゃいそうだ。
「既に短パン、半袖シャツに薄手パーカーって格好が引きこもりじみてるしなぁ」
短パン故に露になる幼女特有の細いけど柔らかそうな太ももは幼女好きなロリコンとして眼福だけど、ママとしてはヒスイの生活習慣をどうにかしないとなぁ~と、私は思うのだった。
※※※※※
秋葉原への出陣の了承を勝ち取りニッコニコなヒスイやフェリに一言告げて私は異世界へとやって来た。
「ようこそおいで下さいました!アカリ様!!」
「うわあッ‼️❓❓」
そして、転移して目の前に狂信姫の姿があり私は驚愕した。
「な、なんで居るの!?」
「なんとなく来られると思いましたのでお待ちしていました。これも愛、ですね❤️」
怖ッ。
え、まって、怖い。
なんなの、コイツ、マジで怖いよ((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル
背筋が急激に冷えて身体が理解不能な恐怖に震えそうになるのをなんとか堪え、どこかうっとりした表情の狂信姫から数歩距離を取って一度咳払いする。
「コホン……えっと、姫様、急に来ちゃって悪いね」
「いえいえいえ、そんな悪いだなんて。アカリ様が来られたのなら、たとえ緊急会議中だろうと戦争中だろうと全て投げ捨ててでもアカリ様を優先します!アカリ様は絶対ですから!!」
「うん。緊急会議と戦争は優先しようね?」
会議と戦争は大事。
投げ捨てちゃダメ絶対。
確かに私は神だが、民あっての国でしょうが。
一応、私の信仰の為に王位を簒奪したんだし、自国に危機が迫ってるのならそっちを優先しようよ。
コヤツの表情からしてマジで私を優先しそうで本気で怖いんだけど。
「わかりました~❤️」
「」
ホントにわかってる?
言葉だけで返事してないよね?
「」
「?」
まぁ、いいや。
気にしてもしょうがないので私は狂信姫と合わせていた視線を切り、転移先の大聖堂最上階である私専用の部屋にあるソファーへと腰掛ける。
「アカリ様、本日はどのような理由でこちらの世界へ?」
対面のソファーへ腰掛けた狂信姫が私へ来訪の目的を尋ねてきた。
「アリサが元気に仕事出来てるか様子を見に来たのと、こっちの世界の情勢の確認。それと、女神様に顔を見せにね」
「そうでしたか。それでしたら、さっそくアリサちゃんの元へ案内しますね。ちょうど、他のメイド達と共に城で使う衣類の洗濯をしている筈ですので」
「そうなの?じゃあ、お願い」
部屋を後にし、狂信姫の後を歩きながら大聖堂の階段を降り、廊下を歩いていく。
そこまで久し振りという訳ではないが、大聖堂内をなんとなく見回しながら相変わらず豪華で綺麗な建物だと感想を抱く。
そんな事を内心で思っていた私へ、狂信姫が世間話するように話し掛けてきた。
「建物が綺麗ですよね」
「ん?まぁ、そうだね。本当、よくもまあ、こんな大それた建物を作ったもんだよ」
設計図:超人、建造:ヒスイ、調整:全員による頭のおかしい超高速建築。
建てようと発案した目の前の狂信姫は勿論、乗った他一同も同じ位おかしい。
何をどう思ったなら大聖堂なんて建てようと思うのだろうか?
私には皆目見当がつかない。
「フフ、お褒めにあずかり光栄です」
(注意)私は褒めていません。
「ですが、決して立派な大聖堂を建てたから綺麗な訳ではありません。その後、私は勿論、使用人や雇った専属の整備士。そして、アリサちゃんが毎日コツコツと隅々まで掃除しているからこそ今の美しい大聖堂の姿が保たれているのです」
「そっか。毎日掃除を」
わざわざこの大きな大聖堂を毎日。
純粋に凄いな。
「はい。ですので、よろしければアリサちゃんや他の皆を褒めてあげて下さい」
「わかった。それじゃあ、手近な人から」
私は目の前の狂信姫の頭に手を置いて撫でてあげる。
「え」
「忙しいだろうに、わざわざ毎日ありがとね。この程度しかお礼は出来ないけど」
一応の感謝の気持ちとして私は狂信姫へ権能で肉体と精神の回復を掛けてあげる。
薄っらと狂信姫の身体が光り、それを認識し、肉体や精神の疲労が取れたと気付いたのだろう。
自分が私に何をされたのか理解した瞬間、狂信姫は膝から崩れ落ち、真顔でボロボロと涙を流し始めた。
「あ、ぁぁ、ぅあぁ」
大きな泣き声をあげる訳でも号泣する訳でもない。
ただただ静かに涙を流す狂信姫。
それを見て私は……
「うわ」
なんか突然泣き始めた狂信姫に引いた。
マジでコイツ怖い。
ドン引き、私は数歩離れて泣き止むまで暫く待ち続けた。
そうして数分程経ち
「お見苦しい所をお見せしてしまい申し訳ありませんでした///」
「気にしなくて良いよ~」
そういう照れ顔は普通に可愛いのなぁ~と残念極まりない狂信姫へ、へら~と微笑み、ヒラヒラ~と手を振って返す。
「それより、案内ついでにアリサの所へ着くまでの間に最近の情勢について聞かせてくれない?前と特に変化が無いのなら別にいいけど」
「そうですね。それでは、移動しながらお話させてもらいますね」
話すって事はなにか変化はあったという事か。
ホール?へ入り、私の像へ真摯に祈りを捧げている100人近く居そうな信者達の横を通りながら姫様が小さな声で話し始める。
「先ず、以前も話した通り元帝国の聖地を手に入れようとしたのですが、いまだアカリ様の国の物に出来ておりません。申し訳ありません」
うん。それはどうでも良いかなぁ。
「加えて、元帝国の者達と愚こ、コホン、シスリア聖国ですが」
おいコイツ、恐らく例の宗教国と思わしきシスリア聖国を愚国って言いかけなかったか?
絶対に言いかけたよな?
どんだけ嫌いなんだよマジモンな方の宗教国。
そのうち戦争するんじゃないかってわたしゃあ怖いんだけど。
「邪神によって国を滅ぼされたとシスリア聖国に助けを求め、元帝国とシスリア聖国は手を組み。神聖アカリ聖国を邪神に支配されている邪教国家と決めつけ」
「ん?」
あ、あれ?雲行きが……
「シスリア聖国の勇者とかいうのを軍のリーダーとして、邪神からの解放という名のもとに戦争を仕掛けてきました」
「は?」
は?
「その為、現在元帝国、シスリア聖国と戦争中です」
「HEY!女神様!!COME ON❗」
「アカリ~お母さんが来ましたよ~」
『うおおおおおおおおオオオォォォォォォーーーーーー!!!!!!!』
「あ、ヤッベ」
やらかした。
ここまだ大聖堂内だったじゃん。
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