第252話 究極合成神獣

 ソレは、見上げる程に巨大な二足歩行の恐竜と呼ぶべき存在だった。

 しかし、恐竜とはいえその見た目は恐竜からは程遠い姿形をしていた。

 体長からして一kmに迫る圧倒的な巨大さを誇り、同じく体長に近いの長さを誇る太く長い尻尾。

 肉体は一見筋肉質の様に見え、固まった溶岩のようなゴツゴツとした黒い肌に全身が覆われている。

 その巨体を支える両足は筋肉により膨れ上がり太く強靭で何より足の指から生えている爪は巨大で鋭く硬い大地を容易く抉る。

 対して前足となる腕は足に比べ小さく短いものの、あくまで足に比べれたらであり、ギチギチに筋肉が凝縮しているのが一目でわかり、足の爪と同様に太く鋭い爪が指から生えている。

 ソレの頭部は肉体のサイズの割に小さく、恐竜というより竜に近い見た目をし大きく裂けている口から覗く鋭い牙は、一度噛み付かれれば容易く食い千切られるのが想像出来る。

 そして、何よりも特徴的なのが首から背中、尻尾の先まで山なりに生える触れれば切れてしまいそうな漆黒の剣山の如き背鰭。


 そんな、現実の生物とかけ離れているソレの姿はまさしく───


『ゴ○ラ!!?』


 どこからどう見てもゴジ○であった。

 お月様の神様が娯楽でクトゥルフ神話を知ってる位だし、コイツらも日本の誇る偉大なスターであるゴジ○様を知ってるみたいだ。


「デーモン・コアだっつってんだろ!!」


 デーモン・コアをゴジ○呼びされた私は不服からキレて怒鳴る。

 正確には不服ではなく単に偉大なるゴジ○様の名前を使うのが恐れ多く、放射能つながりで考えた結果がまあまあ有名なこの名前だったりするけど。

 なお正式な名前は『究極合成神獣デーモン・コア』だったりする。

 まぁ、究極合成神獣とかいって結局姿形は完全にゴジ○様をモデルに創造しているけど。

 だって、創造するなら最高に格好いい怪獣を創りたいじゃん?

 そして、私の記憶の中で最も格好いい怪獣が怪獣王であるゴ○ラ様だ。

 見た目は勿論、基本的に格闘と放射熱線だけで数多の敵を屠ってきた姿は最高に格好よく、怪獣王の名にふさわしいお方だ。

 恐れ多くも私がモデルに選ぶのは当然と言える。


「やれ、デーモン・コア」


 加えて当然ながら、極悪非道な邪悪の化身で異常者であるアカリが呼び出したデーモン・コアがマトモな存在である訳がない。


「グゥ"ギャオオオオォォーーーー!!!」


 私の呼び掛けに咆哮をあげたデーモン・コアの背鰭が尻尾の先から段々と青白く光出す。


「あ、ぁあ」

「だめ、やめて」

「もうダメだ。おしまいだぁ」


 それはまるで死へのカウントダウンの様であり、尻尾の先から青白く光っていく光景を絶望し戦意が砕け散った神々は眺める事しか出来ない。

 抵抗すらせず絶望する姿は、まるで死を受け入れているかのよう。

 つまらない、非常につまらない。

 何故、力ある神のくせに最後まで抵抗しようとしないのか冷ややかな目で見下ろしていると、私とデーモン・コアに向かってくる者が見えた。


「「させてたまるかあーーー!!!」」


 海野郎と雷男だ。

 双方、権能による最大火力で大海と轟雷を私とデーモン・コアに向けてぶつけてくる。

 地上で放てば軽く都市、いや、下手したら国が更地となりかねない威力。


「ッ!?クソッタレが!!」

「全員!全力で結界を張って身を守れーーーー!!!」


 建御雷之男神が怒声の如き大声をあげて下にいる仲間の神々へ結界を張る様に命令する。

 しかし、今も絶望せず抗う建御雷之男神と須佐之男命の二人と違い他の神々はアカリの圧倒的な力の前に心が折れており、結界を張ろうとする者は僅かしかいなかった。


「須佐之男命!!」

「チッ!気張れよ建御雷之男神!!」

「そっちもなあ!!」


 仲間達をこれ以上死なせせる訳にはいかない。

 建御雷之男神と須佐之男命の二人は仲間達の前に立ち、己が張れる最大最硬の結界を張る。

 直後、大海と轟雷により立ち込めていた蒸気が晴れた先には、傷一つ無いアカリとデーモン・コアの姿が見えた。


「死ぬなよ?」


 私が呟いたと同時、段々と青白く光っていたデーモン・コアの背鰭全てが眩しい程に青白く光輝き、デーモン・コアの口から青白い熱線……放射熱線が神々に向けて放たれた。


 ────────ッ!!!!!


 音を認識出来ない程の爆発が起きた。

 私の視界を爆発による閃光で白色が埋め尽くす。

 視覚からは爆発の光以外何も把握出来ない。

 唯一わかるのは、恐らく全てが消し飛んでいるであろうこと。

 消し飛ぶとは、文字通り何もかもが放射熱線により発生した爆発で蒸発して消えているということだ。


「ふふ、流石だねデーモン・コア」


 私はデーモン・コアの顔をそっと撫でながら目の前の光景を眺める。

 たった一発の熱線により起きた爆発による、一種の感動すら覚えるこの光景。

 本来、ゴジ○様の放射熱線にはここまでの威力はない。

 いや、アニメ作品には概念破壊能力とか持つゴジ○様もいるし、ハリウッドの方だと地殻貫通するし、東宝作品によっては威力にもばらつきがあるし、作中で本気をだしていない可能性は高いので断言出来ない。

 けど、作中の最大火力は怪獣を一発で粉砕し、大気圏を越える射程距離で隕石を迎撃する位だったと記憶している。

 なので、少なくとも東宝作品内のゴジ○様の中では私のデーモン・コアの放射熱線に匹敵する熱線は無い筈だ。

 けど、ゴジ○作品全体を通しても私のデーモン・コアの放射熱線……いや、全スペックは良い線をいくと思う。


「グゥギャオオオ」

「いいこいいこ。本当に凄い威力だよ。ほら、見てごらん。全てが消し飛んでる」

「グルルギャゥ」


 爆発がおさまり、晴れた視界には何も無い。

 なにもかもが全て消し飛び、一部虚空世界が崩れそうになっていた。

 まぁ、デーモン・コアを創造する際に参考にした核爆弾がツァーリ・ボンバであり、私の魔改造により与えたスキルで『少量の魔力→膨大や核エネルギー→膨大な魔力→更に膨大な核エネルギー』と交互変換を可能にした事で実質永久機関を可能としているのだ。

 小さな爆弾でかの威力を発揮するツァーリ・ボンバとは違い、私の与えた悪魔の様なスキルにより生まれる膨大な核エネルギーを使った放射熱線。

 ツァーリ・ボンバとは比べ物にならない威力になるのは当然であり、こうなるのも当然の結果の為大した驚きではない。


「まあ、この火力は兎も角、凌いだのには少し驚きかな?頑張ったじゃん」


 後ろを見れば、そこには緊張か生き延びた事に対する安堵かわからないが、息も絶え絶えの海野郎と雷男と地面に力なく座り込む青ざめてガクブルと振るえている神々がいた。

 どしたん君達 ^^ ?


「いやはや、誇っていいよ。本当に素晴らしい。誉めてあげるよ。おめでとう」


 私は微笑みを浮かべながらパチパチと拍手を送る。

 それにしても、問題無く見えるけど暗くて視界が悪いし制御が面倒くさい。

 あってもなくても大して変わらないので私は虚空世界を解除した。

 うん。スッキリ。


「よくも。よくも俺達の高天ヶ原をこんな姿にッ!!」

「絶対に許さんぞ邪神め!!」


 いや、何言ってんだコイツら?


「前にも言ったけど、先に攻めたのお前ら。被害者私。understand?」


 理解出来る?と煽る意味も込めて頭を人差し指でツンツンしながら英語で問う。

 そうすれば、煽られたと理解した馬鹿二匹が青筋を浮かべ憤怒の表情で突撃してきた。

 煽り耐性低くww


「邪神の分際で被害者面するんじゃねえ!!」

「天照大御神を殺したくせに何を言ってやがる!!」


 いやはや、無知は罪と言うけど見ていてもはや哀れみすら抱くよ。

 ………………いや、別に何も抱かんな。


「ハァ~井の中の蛙が」


 何も世界を知らない鎖国野郎が。

 全然私に善戦してくれないし、ちゃっちゃと終わらせてやろうか?


「海剣!!」

「雷剣!!」

「その攻撃はもう見飽きたから」


 右の翼で防ぎ、翼を振り抜いて二匹を弾き飛ばす。


「海墜!!」

「雷切!!」


 しかし、空中で即座に体勢を整えると海野郎が天上から海を落とし、雷男が海を落とされて視界が悪くなってる私とデーモン・コアを刀で一刀両断する。


「コア」

「グゥ"ギャオオオオォォーーーー!!!」


 まぁ、私に斬撃は無意味だしデーモン・コアも私の神速再生のスキルのコピーを与えたから効かないが。

 私の呼び掛けにデーモン・コアが滝の如く海が落ちてくる中で二匹を狙って放射熱線を放つ。


「チッ!」

「クソっ、厄介な」


 悪態をつきながらも私とデーモン・コアをどう相手するべきか考える為、空中で二匹の動きが数瞬止まる。


「でしょ?」


 なので、スィ~~と空間を渡って背後に移動。


「「なッ!?」」


 二匹へ一声掛けてタッチし、権能で動きを完全に止める。

 そこに、事前に命令しておいたデーモン・コアによる尻尾の一撃が直撃。


「ゴッハア"!?」

「グガア"ッ"!!」


 数千~万の魔物を素材として創造したステータスなら私に届きうる我が自慢のデーモン・コアだ。

 尻尾の振り抜きで軽く大地を割り、山を粉砕するデーモン・コアの尻尾の一撃。

 私の権能により身動き出来ない二匹はモロに喰らい、骨か内臓、もしくは両方をやられたのか血反吐を盛大に吐いた。

 その姿にウンウン(*-ω-)と満足し、ヒョイっと空間への固定を解除し、空中から地面へと落下した二匹へ羽弾をプレゼントしてあげた。


「ぐ、ぅ、あ"ぁ"」

「ごふ、ぅぐ」


 粉々に砕けた地面に埋もれる満身創痍の二匹。


「あ~らら」


 少し攻勢に出ればご覧の有り様。

 もう相手してやるのも面倒だし終らそうと思い、私は地面に降りると混沌化を発動し、全身を霧?粘液?肉塊?とも言えない色も理解不能な意味不明なモノへと姿を変質させて二匹やその他の神々を覆い閉じ込める。

 それにしても、身動き出来ない二匹は兎も角、その他諸々の神々も全く逃げる様子がなかった。

 どうしたん?と思い正覚で確かめてみれば、その理由に酷く落胆した。


 いや、メンタル弱すぎない?


 なんか知らんが、いつの間にか私に対して怒りやら恐怖、絶望しすぎて首輪の効果で精神がボロボロになってたらしい。

 私が神という存在に期待しずきているのだろうか?

 邪神ならば兎も角、神ならばもっと猛々しくも気高く高貴で最後まで諦めない精神力位あって欲しいと思うのだが。

 警戒して鍛練したり、デーモン・コア以外に三体も究極合成神獣シリーズを創造した私が馬鹿みたいではないか。


 期待外れもいいところだったよゴミ共が。


 霧?粘液?肉塊?を収縮し、中に閉じ込めた二匹+その他の神々を喰らい、私の糧として吸収。


「ハァ~……呆気な」


 肉体も元に戻し、邪神形態も解いた私は呆気なく終わった今回の戦い……いや、戦いとも呼べないお遊びに溜め息を吐き、さっさと帰ろうと思い収納から服一式を取り出して着替えると、隅に放置してる天皇一家を回収し、デーモン・コアをマイ異空間へと帰すと皇居へと転移しようとした所で一旦動きを止めた。


「わかってると思うけど、これでおあいこだから。もしまたお前らの誰かが突っ掛かってきたら今度は一切容赦しないぞ」


 始まった時からずっと私を視ている月読命達を睨みながら告げる。

 脅しではない警告。

 もし破り、私や私の両親やフェリ達家族、友人達へ危害を加えようものなら容赦しない。

 別天津神とかいうヤバそうなのがいようとも、私の全力でもって日本神話の神々にはこの世から消滅してもらう。


「じゃあね。大人しく生活してろよ」


 今度こそ皇居へと転移し、高天ヶ原から私は姿を消した。

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