第244話 油へポーン!
巨大海蛇を捕まえ、追加で海竜やクラーケン、モササウルスモドキ、巨大伊勢海老モドキ、鎧角鯨、巨大鎧サメ等々と数えるのも面倒な位に実験素材を捕まえた私は近場の砂浜へあがって瓦礫と枝で焚き火を作っていた。
すると、後ろから我が愛しの愛娘であるヒスイがトテトテと可愛らしく歩いてきた。
「ママ、何してるの?」
?が頭に浮かんでる様な顔をしながら聞いてくるヒスイに内心「可愛いなぁ」と思いながら今から何をするか言ってなかったのでヒスイへ教えてあげる。
「焚き火を作ってるの」
「焚き火?」
「うん。海で素潜り漁をしたならこれは必ずしなきゃいけないからね」
焚き火が出来たら油を多めに入れた中華鍋をセットして完成。
後は油が熱々に温まるのを待つだけだ。
「んぅ?」
「料理でもされるのですか?」
「料理ではあるけど、どっちかというと料理って名前の儀式かなぁ」
「「?」」
うん。異世界出身の二人じゃちょっと理解出来なかったみたいだ。
日本出身の者なら素潜り→熱々の油と鍋→儀式で私が何をしようとしてるか想像出来ただろうけど。
「お、温まってきたね」
巨大海蛇やクラーケン、巨大伊勢海老モドキの身体の一部を適当なサイズに切り取って水洗いして準備してると、セットしていた油が丁度良い具合に温まってきていた。
ヒスイとエリーを私の後ろに下がらせると、内心ワクワクしながら準備しておいた巨大海蛇、クラーケン、巨大伊勢海老の切り身を両手に握りながら鍋の前に立ち、かの名台詞を口にした。
「天の神!」
「「っ!!?」」
突然変な事を言い出した私へヒスイとエリーの二人がぎょっとして見てくるが、それを無視して続ける。
「地の神!油の神よ!我の料理を美味しくしたまえ!」
「「!??」」
いざ!!
「油へポーン!」
私は切り身君達を鍋へと放り投げた。
重力に従い空中へ放物線を描きながら鍋へと飛んでいく切り身君達は、数秒もせず熱々の油の海へと潜っていった。
直後、鍋から轟々と燃え上がる炎と飛び散る油。
ヤッターー!!
実際に言えた!!
飛び散る油がダイレクトに当たってくるが全く熱くないので問題無し。
感覚としては水滴が当たった程度にしか感じなかった。
今の私に熱いと思わせるなら核か太陽でもぶつけなければ危機感は感じないだろう。
まぁ、ぶつけられても多少の重傷程度で死なないけど。
「マ、ママ、今のが儀式なの?」
「あの、今のって儀式なんですか?」
「当然!料理となる食材達への感謝を込めた神聖な儀式だよ!やっぱ、素潜り漁をしたならこれをやらなきゃね!」
「ん。……ママって、やっぱり変」
「ですね。少し?変わってますね」
「むう」
酷い言われようだ。
けどまぁ、まだまだ日本の文化を知らない二人じゃこの偉大な儀式の重要さと素晴らしいさを理解出来ないのは仕方ない。
これから日本で生活していけばいつかは理解する日もくる事だろう。
それはそうと、そろそろ切り身君達に熱が通っただろうか?
創造でトングとお皿を創って切り身を一つ油から上げて火が通ったか確認してみる。
「どれどれ……お、火が通ってるぽいね。これならもう大丈夫かな?」
海蛇の切り身を軽く割ってみたが、見た感じ火は通ってる。
これならクラーケンと伊勢海老モドキの切り身も火が通ってるだろう。
「軽く塩を振って。よし、完成っと」
海蛇とクラーケン、伊勢海老モドキの切り身の素揚げの完成だ!
「二人も食べてみる?」
「ん」
「はい。いただきます」
大きめに作ったのでササッと素揚げ君達を三等分にカットして追加で創造した小皿に分けて二人へと配り、いざ実食。
「結構美味しいじゃんこれ」
「ん。美味しい」
「味がしっかりしてますね」
実の所、そこまで期待はしてなかったが予想外にかなり美味しい。
私は海蛇を食べててエリーが食べてる伊勢海老モドキとは違うが、エリーの感想通り素材本体の味が強いのか塩を振っただけなのに味がしっかりしており美味しいのだ。
美味しいとわかれば後は早い。
三等分してるのでパクパク食べれば直ぐに素揚げ君達は食べ終わり、私はちゃっちゃと鍋の後片付けをして水着から元の私服へと着替えた。
あ、勿論だが身体は浄化で綺麗にしてから着替えたぞ?
深海まで潜って大暴れしたから海水でべたついてたからね。
流石にそのまま着替えるのは嫌だよ。
「よ~し!次へ出発!」
「おお~!」
「ふふ、元気ですね」
はい、母娘揃って元気です。
※※※※※
それから私達は世界中を周り狩りツアーを楽しんだ。
大海にぽつんと孤立する孤島の生態系の頂点に君臨してる牛ゴリラみたいな見た目のパンチでド派手に地割れを起こす脳筋野郎を殴り殺したり。
雪原にあるヒマラヤ山脈みたいな雪山を縄張りにするマンモスみたいな見た目の馬鹿デカイ前足と牙、長い鼻を持つ巨大像モドキをライダ◯キックで蹴り殺したり。
雲の上の超高空を飛ぶ巨大鳥をヒスイとエリーに譲って狩ってもらったり。
別大陸まで遠出して大地を真っ二つに叩き割り、地中深くに生息してる鎧みたいな外皮の巨大蛇を誘い出し、ジャイアントスイングからの回り込んで脳天唐竹割りで頭を真っ二つにカチ割って殺したり。
他にも世界中を回って手頃な強さの魔物を狩に狩りまくったり、世界各地のダンジョンのボス部屋に直接転移してボス周回をしたり等々と色々と工夫しながら素材集めを頑張った。
おかげで山の様に実験素材が集まった。
今から実験するのが楽しみでワクワクしてきよ!
てな訳で、実験素材集めが終わり、まだ多少の時間の余裕はあるので我が義妹のサリエの元へ寄ってみたのだが……
「エヘヘ、お姉様お姉様お姉様」
「おぉぅ」
案の定ロケットタックルからのお腹にぐりぐり頬擦りされておりますわ。
「女神アカリ様、ようこそおいでくださいました」
ついでに言うと、サリエの両親には現在進行形で跪かれてたりする。
孤児院があれだったからわかりきっていた事だけど、知り合いにこう畏まられるのは本当嫌だね。
サリエがこうして変わらず接してくれるのが唯一の癒しだよ。
よし、ヨシヨシして可愛がってあげるとしよう。
「ヨシヨシ、サリエは良い子だねぇ」
頭撫で撫で。
「エヘヘ~。気持ちいいです~」
「そっかぁ」
それは良かったよ。
ところでサリエよ、もしかしてあんまし元気無い?
なんかサリエの両親も少しだけ表情に陰り?みたいなのを感じるけど。
「あ!そうでした!」
なんて事を思ってると、サリエは何か思い出したのか、私からトテテっと離れるとお手本の様に私達へ綺麗に一礼。
「お姉様。お連れのお二方、ようこそおいでくださいました。そちらのお二人とは初対面ですね。初めまして。私はサリエ=オリアナ。お姉様の義妹です。お二人とも仲良くなれると嬉しいです」
「ん。私はヒスイ。ママの娘。よろしく」
「サリーと言います。アカリ様とヒスイ様のメイドをしております」
美幼女×2と金髪美少女メイドが自己紹介をし合う眼福な光景を横から眺めて癒されながら私は私でサリエ父とサリエ母へと話し掛ける。
いい加減立ってくれないと跪いて畏まられ続けるのは面倒だからね。
「あの~ずっと屋外に居るのもなんですし、そろそろ家の中に入るか解散するかしません?ご予定が有るなら私達は帰りますし」
アポ無しで訪問しておいてこんな事を言うのはクソだけど、マジレスすると時間の余裕があるとは言っても長々と居られる程の余裕がある訳ではないので余計な些事で時間を消費したくはないのだ。
なので、家の中に招いてくれるか予定が有るからお断りしてくれると本音で嬉しい。
「あ、す、すみません!どうぞ中へお入り下さい」
「あ、どうも。お邪魔します」
うん。明らかに迷惑掛けちゃってるし、多分出されるお茶飲んでサリエと雑談したらさっさと帰ろう。
…………はて、サリエと何を話そうかねぇ。
なんて事を気楽に考えてたけど、直ぐにわたしゃあ後悔したよ。
だってさぁ……
「えっと……お、お悔やみ申し上げます」
「ありがとう、ございます。アカリ様に言ってもらえて、エルトも、て、天国、でッ……すみません」
「いえ、気にしないで下さい」
やっばい、気まず過ぎる。
サリエに兄が居たのを完全に忘れてたわ。
深夜に起きた上にあの戦闘規模だから逃げれてる訳がない。
この通りサリエのお兄さんは亡くなってたらしい。
いや、うん、本当、マジで気まずい。
どうりで何かサリエもサリエのお父さんとお母さんも元気が無い訳だよ。
どげしよ……気まずいし適当に理由つけて今日は帰ろっかな。
こんなんじゃ楽しく雑談なんて出来ないので私は帰ろうかと思った。
そこはロリコン兼義姉として義妹を元気づけろと思うかもしれないが、幾ら私でも家族が亡くなった一家を励ますのは無理だ。
まぁ、倫理観を無視して良いなら正覚で即解決出来るけど。
「あの、お姉様」
「ん?どうしたの?」
「お、お願いがあって」
「お願い?」
はて、不老不死やら死んでから暫く日数が経過した対象の死者蘇生みたいな願いは無理だけど、サリエのお願いって何だろうか?
何々が欲しいやら気晴らしに何処かに連れていってほしいやら力が欲しいなら叶えるのは可能だが。
「お、お兄様を、お兄様を生き返らせて下さい!」
「oh」
口で言ってないのにフラグになりやがった。
しかも回収が早ええよ。
「サリエ!何を言ってるんだ!」
「そうよ!アカリ様に無茶な事を言うんじゃありません!」
「で、でも、お姉様は女神様だから。お姉様ならお兄様を生き返らせれますよね!」
「え、えっと」
ど、どうしよ、無理なんだけど。
「ママ」
「アカリ様」
二人が「どうするの?」って言葉が聞こえてくる表情で私を見てくる。
ハッキリ言って無理なので私は真面目な表情をしながらサリエと真っ直ぐ目を合わせ、そして告げた。
「ごめんね。それは出来ない」
「な、なんでですか!」
泣きそうな表情に、いや、涙を滲ませながらサリエは私の服を握り締めながら聞いてくる。
ヤバい、幼女の泣く顔は心が痛いッ。
「例え神でもね、死んだ生き物を生き返らせるのは出来ないの。死んだら生き物の魂は天に還って新たな生き物に生まれ変わる。サリエのお兄さんは死んでから既に何日も時間が経ってる。きっと、もう生まれ変わってると思う。だから、もし生き返らせれたとしても無理なの」
死んだ直後なら蘇生可能や最強無敵の邪神共なら死者蘇生可能だろう事は言わない。
それを言ってしまえば無駄に希望を抱かせてしまうから。
「そ、そんな」
「神でも何でも叶えられる訳じゃないの。本当にごめんね」
「う、うぅぅ"、お兄様」
くそ、マジで心が痛いッ(;∀; )
今更ながらあの時糞魔王を即殺しとけばよかった。
まぁ、後悔しても襲いけど。
「代わりにはならないけど、この子をあげるよ」
私はそう言ってスキルと権能をフル活用して一つの生命体を創造する。
「……え?」
サリエは突然目の前に生まれたて生命体……モフモフな毛玉に泣き止み涙目できょとんとする。
「お姉様、この子は」
子犬サイズの毛玉の正体を聞いてくるサリエに私は若干ドヤ顔で答えてあげた。
「この子はね、フェンリルって名前の狼だよ。見た目は完全に毛玉だけど」
「フェンリルですか?」
「わふッ!」
毛玉が鳴いて返事する。
フェンリルと自分の名前を呼ばれたと理解したんだろうね。
まぁ、フェンリルなんて大層な名前で呼んでるけど正確にはフェンリルモドキだけどね?
けど、その強さは折り紙付きだよ?
実験も兼ねて権能を使って近場の魔物を殺して魂を奪い、その魂と今回狩った魔物の素材の一部を利用してスキルと権能のフル活用で強靭な肉体と強力なスキルと称号を授けてるから目茶苦茶強いし知能も高く主人に従順で優しい性格にしてるからサリエやサリエの周りの人を傷つける事もない。
しかも、餌を食べるけど最悪周囲の魔力を餌代わりに取り込むから餌も必要ない。
まさしく理想な最高のペットだ。
「お兄さんの代わりにはならないけど、お兄さんを失った分をこの子とすごして寂しさを埋めて?まぁ、嫌なら無理してほしくないし連れて帰るけど」
「いえ欲しいです!私この子欲しいです!お父様!お母様!この子と一緒に暮らしたいです!」
先程までの涙目から一転し、キラッキラした表情でサリエは両親へと聞いた。
「あ、ああ、構わないが」
「アカリ様、本当に良いんですか?」
「はい。サリエの為に生み出した子ですから」
寧ろ受け取ってくれないと困る。
あ、いや、飼う場所は創れるし別に困りはしないか。
「娘の為に、ありがとうございます」
「娘と共に大切に育てます」
「お姉様、ありがとうございます!」
「うん。大切に育ててあげてね」
さてと、そろそろ良い時間だろう。
「暗くなってきたのでそろそろ帰りますね」
「お見送りします」
サリエのお父さんが見送りしてくれようとしたがそれを片手を上げて止めた。
別に外に出なくても此処から転移ゲートで出ていける。
「いえ、此処から転移で帰れますから大丈夫です」
ヒョイっと転移ゲートを横に開く。
「それじゃあ、またそのうち」
「ばいばい」
「お茶美味しかったです」
ペコリとサリエ一家に軽く一礼。
「お姉様、また来て下さいね!」
「わふッ!」
「いつでも来て下さい。我が家一同歓迎いたします」
ニコニコ笑顔で手を振るサリエと深く礼をするサリエの両親と使用人達に見送られながら私とヒスイ、エリーは転移ゲートを通って我が家へと帰っていった。
翌日
朝から実験をしていて私は息抜きにぶらぶら日本内を散歩していた。
「お姉様!」
で、東京を歩いてたら路地裏で変質者に追われてた女の子を見付けて助けたら懐かれた。
「どうしてこうなった?」
こういうのって勇者(笑)の担当では?
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