第103話 戦闘開始
今回も、本編が短めです。
ご容赦ください。
~~~~~~~~~~
あの龍がなんなのか考えたい所だが、考えなくても既に分かる事が一つだけある。
それは、明確に私を認識してこちらに向かって飛んで来ている事だ。
だって、まだ遠くを飛んでるにも関わらず目があってるんだもの。
さて、正直に言おうか。
仮に、あの龍と正面から戦闘する事になったとして勝てる自信は五割も無い。
寝ている二人を庇いながらとなれば、それこそ一割も無い。
私も二人も確実に死ぬ。
そして、逃げを選択したとしても多分無理だ。
私よりも格上であろう龍が目を着けた相手を逃がすとは到底思えない。
詰まる所、現在私が真っ先にやらなければならない事が何か。
「瀬莉、ヒスイ起きて!!」
二人を起こす事だ。
私は、魔法で造った家モドキの中に戻ると寝ている二人の名前を呼びながら肩を激しく揺さぶる。
本当は、優しく起こしてあげたい所だが命に関わる激ヤバな状況な為に優しくしてあげる余裕等微塵もない。
「んん~~アカリ?……なんだい?」
「んぅ………ママ?」
良かった。
二人共、眠そうではあるが直ぐに目覚めてくれた。
もしも、これで起きなければ往復ビンタして強引に起こす所だったが余計な手間で時間を無駄にせずに済んで幸いだ。
私は、寝惚けている二人に現在私達が置かれている状況についてハッキリと告げる。
「二人共、今、直ぐ近くに龍が居るの」
「は」
「え」
龍。
その名を聞いた瞬間、寝惚け眼をしていた二人は眠気が吹き飛び驚愕に目を見開いた。
「嘘だろ。何でそんなやつが」
「ママ、本当に、龍が居るの?」
直接見た訳でもないので、あり得ない状況に疑問に思うのだろう。
だが、あいにく本当の事。
そして、二人の言葉に丁寧に答えてあげる余裕も無い。
「本当だよ」
私は、ヒスイの質問に対してだけ一言で答える。
「私が、龍の足止めをするから二人はここから出来る限り遠くに逃げて」
そして、二人に逃げる様に告げた。
「な!?自分が何を言ってるのか理解してるのか!!」
「ママ駄目!!」
当然、二人は私の無謀な考えを止めるように言ってくるが私は止めるつもりはない。
だって、私が足止めでもしないと二人を逃がす事が出来そうにないから。
「二人を死なせたくないの。正直言って、私一人で戦闘してマトモに戦えるか自体不明なのに、二人が近くにいたら戦闘なんて不可能。絶対に守れない。お願いだから、従って」
「そんな、また」
瀬莉にとっては、ダンジョンに続けてこれで二度目。
私が、お願いしてるとはいえ友人を危険な場所に残して自分は安全な場所に逃げる。
精神的にとても辛い筈だ。
だが、それでも我慢してもらうしかないのだ。
「瀬莉、本当にごめんね。ヒスイをお願い」
「………分かった。ヒスイの事は私に任せてくれ」
「ヒスイも瀬莉お姉さんのいう事を聞くんだよ」
「……うん」
二人が頷いてくれた事に安堵する。
これで、駄々でもこねられていたら終わっていたので本当に良かった。
「ここから出て」
壁の一部を土属性魔法で消して出口を作り二人を部屋の外へ出す。
「真っ直ぐ逃げて。絶対に引き返してこないでね」
「アカリは、どうするんだい」
「さっき言った通り足止めするよ。まぁ、倒せたら倒すし。無理そうなら死なない範囲で頑張って足止めするから。ッ!!急いで!!」
近い。
もう、直ぐ近くまで龍の反応が接近している。
私の様子から二人もそれを理解したのか、真っ直ぐ走り出した。
「アカリ!必ず勝ってくれ!」
「ママ、頑張って!!」
走りながら振り返り二人が私に声援を送ってくれる。
とても嬉しい。
なので、私も必ず勝つ決意をこめて二人に言葉を返す。
「任せなさい!必ず勝って二人を迎えに行くからね!!」
私の言葉を聞いた二人は、頷くと前に向き直りそれ以降振り返る事なく真っ直ぐ暗い森の中を走っていった。
「これで二人の心配はとりあえず大丈夫かな」
二人が龍との戦闘に巻き込まれる事は、これで多分無いだろう。
他の魔物に襲われる心配も多分無い。
龍の接近のせいかは分からないが、索敵の効果範囲内には龍以外の一切の反応が無かったからだ。
なので、私がキチンと龍の足止めさえ出来れば二人に危害が及ぶ事は無いはず。
「さて」
まだ、あの龍との間には多少の距離がある。
戦闘をする前に、今の内に龍に関して情報を得る事が先決だろう。
「鑑定」
私は、空を飛行する龍へと鑑定を掛けた。
────
名前:なし
種族:風龍
状態:通常
LV:57/80
HP:1465/1465
MP:1163/1675
筋力:1790
耐久:2157
敏捷:1105
魔法:1565
─スキル─
【風属性魔法LvMax】【魔力制御LvMax】
【金剛Lv4】【威圧】【痛覚耐性Lv6】【探知Lv9】
【気配感知LvMax】【魔力感知Lv9】【物理耐性Lv6】
【爪術Lv8】【風爪Lv6】【知覚強化Lv5】
【思念伝達Lv8】【回避Lv5】【気配遮断Lv4】
【MP回復促進Lv5】【火属性耐性Lv4】
【HP回復促進Lv4】【闇属性耐性Lv2】
─称号─
なし
────
んん~~!!
逃げたい!
見えたステータスは、頭がおかしいんじゃないかと思う様な高さをしていた。
何これ~~ヤバイなぁ~~。
糞ゲーかなぁ~。
勝ち目が少ししか見えないんだけどぉ~。
ヤベェ、ヤバ過ぎてヤバイ。
マジで、どげしよ。
軽く私の二倍以上あるステータスの高さに酷く焦りが高まる。
ここまでステータスもスキルLvも高いと情報があってもどうしようもない。
仮に作戦等たてた所で、正面から叩き潰されて終わりになりそうである。
「ハァ~~まぁ、勝つつもりはないし。当初の予定通り足止めでいっか」
私は、家モドキを土属性魔法でバラバラにして崩し一つの手頃なサイズの石を掴む。
距離は、500、600mって所かな?
龍とのおおよその距離を目測で測る。
問題なさそうなのを確認した私は、石に魔力を込めると身体を横に向けて片膝をあげて足を浮かせ次の瞬間振り下ろす。
地面を踏み砕く程に踏み締め野球ボールを投げる様に魔力を込めた石を龍に向けて投げた。
超高速で真っ直ぐに飛んでいった石は、外れる事なく龍に直撃。
まるで、金属同士が衝突した様な衝突音を響かせた。
そして、それを受けた本龍だが。
「グオアアアアァァァァァァ!!!!」
「まぁ、効くわけないわなぁ。てか、うるせぇ」
一切効いてる様子はなく寧ろ何かをぶつけられた事に怒ったのか明確に私に向けて咆哮してきた。
本当、まだ数百mは離れてるのに咆哮が目茶苦茶うるさいが、まぁ咆哮に関してはどうでもよい。
よし、ヘイトが向いたね。
目的通り、龍のヘイトを私に向ける事が出来た。
これで、余程の事が無い限り二人に龍の意識が向く事は無さそうだ。
「さて、どうするか」
問題はここから。
どうやって、この龍の足止めするかだ。
下手したら、足止めする事も出来ずに私が即死するパターンもあるのだ。
普段なら、強い相手でももう少し積極的に戦闘するが流石に格上過ぎるので慎重に行動してしまう。
とりあえず、適当に一発魔法をかましてみるか。
私は、地上から龍に向けて炎槍を一発放った。
「え」
しかし、それは龍に届く前に吹き荒れる暴風に流され龍の大きく横方向を通過して遠くへと飛んでいった。
遅れて爆発音が聞こえてくる。
どこかに着弾したようだ。
とりあえず、一言。
最悪。
「グアアアアァァァァァァ!!!」
「ウッソでしょ」
龍が怒りからか咆哮してくるが、キレたいのは私の方だ。
私の唯一のアドバンテージとも言える魔法を防ぐどころか、ただの風で流すとかありかよ。
無理じゃんこれ。
足止めしようと思ったら、近距離から魔法を放つか物理攻撃するしかないじゃん。
いや、死ぬから。
ステータスが化物の龍に近距離戦って無理ゲーだってば。
私も、そこそこ近距離戦出来るけど限度があるって。
そんな、キレるというか泣き言というか内心騒いでいたその時…………
『小娘、貴様なんのつもりだ』
何か、変な男の声が聞こえた。
「ん?」
周囲を見渡すが、私と龍以外何も居ない。
『おい、小娘。私の言葉を無視するつもりか』
「え、まさか」
まさかと思い正面を見上げる。
そこに居るのは、空を滞空している一体の龍。
私は、まさかと思いながら…………
「おまえ?」
『おまえ呼びとは、この私に対して随分な態度だな小娘が』
声の正体は、龍だった。
本来なら「キャァァアアアッシャベッタァアアアアーーーッ!?」と言うべき絶好のタイミングなのだが、流石のオタクなアカリさんも命に関わるタイミングでは無理でした。
無念。
「いや、喋れるなら用件言うか名乗るかしろよ。襲撃かと思って攻撃したじゃんか」
『用件を言う以前に先に攻撃を始めたのは貴様だろ。そして、名乗るなら先ずは自分から名乗るのが礼儀ではないのか?』
うっわ、ウゼ~~~~。
私は、揚げ足を取る様な龍の言葉に顔をしかめるが事実であるので名乗る。
「失礼しました。アカリといいます。それで、何の用でこんな場所に現れたのですか」
この龍は、私の様な吸血鬼同様に明確な自我と理性のある個体。
ならば、これはある意味チャンスともいえる。
この名乗りを利用すれば目的を聞けるしワンチャン上手く話し合えば追い払えるかもしれない。
『世界に選ばれし抑止力である我らが王の代行者として、この地を枯らせたゴバァ"ッ!!』
龍が、言葉を言いきる前に吹き飛び地面に墜落する。
『な、何をするか貴様!!』
龍が、怒声をあげて空中を見上げる。
そこに居るのは、一人の少女。
龍を殴り飛ばした張本人であるアカリだ。
「慎重な行動は止めだ」
前言撤回。
龍を足止めするのは止める。
「おまえを、絶対にブッ殺す」
死ぬ気で、この糞蜥蜴をブッ殺す。
~~~~~~~~~~
現在の異世界の本編とは関係ありません。
本編が上手く書けなくて代わりに書いてるだけです。
※
※
※
『部活動体験』
緋璃は、困っていた。
「ん~~どうしよ。やる気ないんだよなぁ」
そんな、気だるげな言葉を吐きながら手に持つ用紙を眺める。
その用紙とは、部活動紹介の書かれている紙だった。
「何で、こんな面倒な決まりなんだろ」
私の通う高校は、何故か異常に部活動に関して力を入れている。
そのせいで、生徒は一度は部活動に入部するのが決まりなのだ。
ただ、これには抜け穴があり入部さえすれば良いのでなんらかの部活動に入部。
最低一週間は活動したら退部すれば良いのだ。
一度は入部する。
そのルールの穴をついたやり方だが、ルール違反はしていないので生徒会も教師も黙認しているので問題はない。
「とはいえ、短期間は入部する訳だし面倒じゃない部活が良いなぁ」
ピンとくる部活動がないか用紙を見る。
全て運動部が占めている。
出来たら運動部以外に入りたい私にとって選択肢が一つもない。
「うへぇ~~」と呻きながら用紙を裏返し裏側の部活動項目を見る。
「文化部かぁ」
裏側も運動部が大半を占めている。
しかし、少ないが文化部もあった。
運動部を遠慮したい私にとってはありがたい。
それに、最近文化部モノの漫画やアニメを見てるので少し興味がある。
「へ~~新聞部なんてあるのかぁ。そういえば、校内新聞が掲示板に貼ってあったっけ」
ちょっと興味が湧いた私は、書いてある部活動をしている教室に向かってみることにした。
「ここか」
目的地の第二多目的室についた。
新聞部は、第二多目的室が活動場所らしい。
ちなみに、第二多目的室は小さく第一多目的室程大きくない。
そして、第一多目的室は合唱や吹奏楽が使う事が多いらしく基本的に使う事はないそうだ。
「失礼します」
とりあえず、中に入る。
すると、中に男子三人、女子四人。
計七人の生徒が座って作業していた。
「ん?いらっしゃい。何の用かな?」
「部活動見学で来ました。一年の神白緋璃です」
多分、部長さんだろうか。
奥に座ってた男子生徒が話し掛けてきたので目的と学年、名前を告げる。
それを聞いた多分部長が笑顔で歓迎の言葉を告げてくれる。
「そうかい。ようこそ新聞部へ。僕は、部長の藤田透。よろしくね。好きなだけ見学していいよ」
「はい。ありがとうございます」
言われた通り私は、構わず中へと入り活動している他の人達を側で見ていく。
その際に、他の部員の人達も一言だが好意的に挨拶してくれたので良い人達が多いかもしれない。
「僕達の活動は、主に校内新聞を作成するのが活動なんだ。新聞の内容は、個人の自由。他の部活動の大会成績に関してでも、他校の部活動の成績もよし。校内での出来事もよし。何なら、校外の出来事の内容でもOKさ」
「マジか」
いや、本当にマジか。
校内新聞なのに校内の内容じゃなくてOKって本当に自由だな。
私は、その自由度に驚くと同時に少し興味が湧いた。
それを感じとったのか、部長さんが提案してきた。
「良かったら作ってみるかい?」
「良いんですか?」
「勿論。君の好きな様に新聞を書いてみるといいよ。書けたら、その新聞を校内掲示板に貼ってもいいしね」
私は、その提案をどうするかしばし考え受けてみる事にした。
「それじゃあ、新聞用の紙を予備合わせて二枚渡すね。もしトラブルかなにかで新しく必要になったら一言誰かに言えば貰えるから。新聞が出来たら、いつでも持ってきてね」
「はい。ありがとうございます。それじゃあ、今日は一旦失礼しますね。取材を兼ねて校内散策します」
「行ってらっしゃい。面白い新聞を期待してるよ」
そうして、私は教室を出ていき校内を散策した。
(゚∀゚≡ (゚∀゚≡ (゚∀゚≡
が、面白そうなイベントは発生していなかった。
「ん~~」
現在私は、校内に設置されている椅子に座りボケ~としていた。
内容が何も思い付かないし内容になりそうな出来事も無いので適当に椅子の向かいにある校庭でのサッカー部の活動を眺めていたのだ。
つまんないなぁ。
何か面白そうなイベント起きないかなぁ。
…………ん?
その時、私の前にそれは現れた。
「ふむ。今日も生徒達が楽しく元気に部活に励んでいる。教師にとってこの光景が一番の幸せだよ」
あ、教頭だ。
私から少し離れた所に野生の教頭が現れたのだ。
「もう少し見ていたいが、そろそろ職員会議の時間だったな。仕方ないが行くとしよう」
その時、校庭に強い風が吹いた。
「……ッ!?…危なかった」
教頭が頭を押さえながら、校舎に帰っていく。
その背中を私は、実に良い笑顔で見送った。
教頭、ネタを感謝するよ。
私の新聞の内容が決まった。
それから、私は更なるネタを求めて数日に渡り教頭を追跡している。
そして、今日は土曜日で教頭は休みらしい。
教頭の休日に関しては、朝から近所の銭湯に行くと最近話していたので張り込むのが楽で助かった。
そして、銭湯で教頭が茹でられている間私が何をしているのかだが…………
「いいかねチビッ子達。喧嘩をするのは良いけど、多対一は駄目だよ」
「でも、そうでもしないと勝てないんだもん」
「そうだよ!」
休憩フロアで小学生の喧嘩の仲裁をしていた。
何か見守ってた周囲の人達から「喧嘩するのは良いのかよ」って視線が送られるが、気にせず無視しておく。
「勝てないから、勝てる様に工夫するのは良い事だよ。でも、多人数で囲んで勝てたとしても次一人で喧嘩する事になったら、また君達は負ける事になるよね?それじゃ、いつまで経っても勝てないよ?」
「じゃあ、どうすればいいのさ!」
知りたいのなら教えてあげよう。
誰でも可能な強くなる方法を。
「パワーをつければ良いのさ。つまり、筋肉!」
「きんにく?」
「そう、筋肉。あの、マ○兄さんもゼ○トンに負けた後、何故か筋トレしたのか自前の筋肉を増やしてたんだよ。結果、怪獣を倒せるよ様なビームを大胸筋で防ぐ様な頭のおかしい強さになったんだから」
「?」
あらら、小学生には難しい上に、私はオタクだから知ってたけど内容が昔過ぎたかな。
「簡単に言えば、筋トレして鍛えてパワーを目茶苦茶増やせば大抵の相手は倒せるよって事」
「ん~~~~分かった」
「ならよし。解散!」
「「「「は~い!」」」」
よし、チビッ子が解散したので私も何処かに隠れるとしよう。
教頭が、そろそろ銭湯からあがるだろうから。
そうして、私はフロアのすみのソファーに座りながら自販機で買ったイチゴミルクを飲むのだった。
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