第102話 情報無し
短めです。
三人が会話するだけです。
ご容赦ください。
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おかしい、おかしいぞ。
私は、ただ愛しのヒスイとキャッキャウフフとまったりしながら、情報整理も兼ねてお話ししていただけなのに。
それが、何で抑止力なんつうヤバそうな存在の名前が出てくる訳?
え、何、もしかして私って常に面倒事に巻き込まれないと生きていけない呪いにでも掛かってるの?
前世じゃ呪いに掛かってないって言われたのに。
まぁ、翌日に轢かれかけたんだけどさ。
いけね、話が脱線からの過去の不幸な思い出語りになりそう。
糞くだらない不幸話は置いといて話の内容を元に戻さなければ。
とりあえず、抑止力についてヒスイに聞いてみるとしよう。
「ヒスイ、抑止力って何?」
先のヒスイの言葉から何となく予想は出来る。
恐らくだが、自然を守るモノ。
自然の調和を守る守護者的な存在か何かではないだろうか。
自然のバランスが崩れかねない危険な出来事が起きる又は、起きそうになれば阻止するべく姿を現して問題を解決する。
そんな、何かなのだと私は思った。
「抑止力は、自然界のバランスが、崩れる事が起きる時に問題の、解決をする存在。それ位しか、分かんない」
そして、私の予想と殆んど同じ内容がヒスイの口から話された。
ただ予想外なのが、ヒスイが抑止力について前情報位の情報しか分からない事だった。
「分からないって、それ位しか分からないの?抑止力の存在を知ってるから、詳しいのかと思ったんだけど」
「分かんない。生まれた時に、最低限の情報を世界から渡された。ダンジョンの役割や、やっちゃ駄目な事。抑止力について、その中にあった。けど、抑止力の役割位しか、情報無くて知らない」
マジかぁ。
世界に意思らしきものがあるのも驚きだけどさぁ、話を聞いて思った事が一つ。
もっと、詳しい説明書を渡してあげろよ世界。
対策のしようがないじゃんか。
ヒスイを殺しに抑止力が現れるって決まった訳ではないけど、本当に殺しに現れたら完全初見でブッ殺さないといけないんだけど。
雑魚敵ならともかく、強敵を初見でブッ殺すの糞大変なんだぞ。
「アカリ、悩んでいる所すまないが、まずその抑止力が我々同様に肉体を持つ存在か分からなければ対策等出来ないと思うよ」
「あぁ~確かに。概念的存在の場合は、神みたいな存在でないとブッ殺せないか。概念的存在の場合、私どうやって殺せばいいんだろ」
「アカリ、抑止力を殺すつもりなのかい?話を聞いていたが、抑止力は世界のバランスを保つ役割を担う大切な存在だと思うのだが」
「ハハハハハ……瀬莉はさ、地球の政府の議員達をどう思う」
「突然何を言ってるんだい?」
「まぁ、いいから正直な感想を言ってみて」
突然、全く関係ない地球の議員の話をして感想を求めてきた私に瀬莉は意味が分からないと疑問を浮かべるが、それでも議員に対する感想を述べてくれた。
「役立たず、学習能力ゼロ、無駄金浪費野郎、人の姿をしたゴミ、会議するだけで問題解決出来ない糞、大声出すしか能のない無能集団」
「け、結構ガッツリ言うね」
「本当の事だろう?有能な議員なんて、ほんの一握り居るか居ないかだろ」
「かもねぇ」
その意見に関しては同意だ。
とはいっても、前世で政治に関しては実際の所どうなってるのか実態なんて知らないのでテレビや新聞等の客観的な部分からしか知らないが。
「同じだと思わない?」
「何がだい?」
「議員と抑止力がだよ。だってさ、自然界のバランスを担う役割を持つくせにバランスを壊そうとしてる糞魔王を対処出来てないんだよ?抑止力が、キチンと役割を果たしていたら私達が召喚される事も無かった筈だよね?」
「確かに、その通りだね」
「王国も隣国も既に幾つも町が壊されて人が何千単位で死んでる。自然界のバランスを保つ役割を担うなら人間って種族も守らないと駄目でしょ?なのに、何で対処出来てないの?役に立ってないじゃん。何の為の抑止力だよ。名前だけ偉そうな役立たずじゃん。なのに、糞魔王を殺さずに少し森の木々を枯らした程度の事で私の大切な娘を殺そうとしてくるのなら、私が逆に抑止力をブッ殺す」
まぁ、概念的存在でなかったらだけどね。
流石に私には、実体の無い概念を殺す力はないから。
本気で概念なんてものを殺そうと思うのなら、私が神になる必要がある。
だから、概念的存在だった時は泣き寝入りするしかない。
「過激だねぇ。だが、実際アカリの言う通り抑止力がキチンと働いて魔王を殺していれば、召喚される事が無かったのも事実だね」
過激なのは、まぁ事実なので認める。
多分私みたいに、気に食わなければ殺そうとする女子なんていないだろうから。
「ママ、抑止力を、殺すの?」
「ん?ヒスイを殺しに来たらね。来なければ、殺す気はないよ」
わざわざ、私から殺しに向かうメリットが無いからね。
あっても、せいぜいが経験値と気分がスカッとする程度だろう。
その程度の為に、高確率で返り討ちにされて死ぬ可能性がある行為をする価値がない。
だから、少なくとも大きなメリットが無い限りヒスイを殺しに来る以外で私から抑止力を殺しにいく事は絶対にない。
「私を、消しに来たら殺すの?」
「うん。ヒスイを死なせたくないからね」
実の娘ではない。
だけど、私をママと呼んでくれるヒスイを私はもう大切な存在と認識している。
だから、もしヒスイを殺そうとする存在が現れたら全力で守る。
そして、相手はヒスイの安全の為にも絶対に殺す。
「ありがとう。ママ」
「いいんだよ。気にしなくて」
申し訳なさそうに感謝するヒスイ。
私が、勝手にヒスイを守りたいと思って抑止力を殺そうと思ってるだけ。
だから、本当に気にしなくていいのに、自分のせいでと申し訳ないと思って落ち込んでるヒスイの頭を撫でて励ましてあげる。
「うん。何となく予想出来たかな」
「ん?何か分かったの?」
「あぁ、あくまで予想でしかないよ?」
何かが分かったのか気になるので瀬莉に聞くと、瀬莉はその予想を私とヒスイに話してくれた。
「多分だが、抑止力は肉体のある存在だ。根拠は、魔王が殺されてない事とヒスイが消えてない事」
「それの何が根拠なの?」
上手く話が理解出来なくて疑問しか浮かばない。
それは、ヒスイも同じでコテンと首を傾げていた。
「抑止力が概念的存在の場合だが、出向かずとも簡単に消せる筈だ。何せ概念。私達肉体のある生命体よりも高次元の生命体の筈だからねぇ。なのに、排除対象と思われる魔王は生きている。そして、仮にヒスイも排除対象なら既に消されてないとおかしいだろ?」
「あぁ、なるほど」
「なるほど」
確かに、瀬莉の言う通りだ。
私は概念的存在なんかにあった事ないから分からないが、概念なら思考する?だけで簡単消せる筈だ。
実際、どうかは分からないが。
「実際は、魔王もヒスイも生きている。だとすれば、概念的存在でない。肉体のある生命体が抑止力なのだと思う。そして、排除しようにも単純に抑止力が魔王に勝てていないだけ。ヒスイに関しては、排除対象かは不明だが対象の場合はこれから殺しに来る可能性がある。しばらくは、気を付けておくのが懸命だろう」
「ナイス考察」
「誰でも出来る簡単な予想でしかないよ」
それでもだ。
概念的存在でない可能性が高いと分かっただけでも、かなり大きい。
だって、肉体があるのなら物理と魔法で殺せるのだから。
「他には、何か考察出来たりしてる?」
「全く分からないよ。情報が少な過ぎて考えたくても考えれないよ」
「だよねぇ~」
本当に情報が少なすぎるんだよ。
こんなん、激強なのが分かりきっている抑止力を攻略するとか激ムズすぎるって。
まぁ、普通は抑止力を攻略しようと思う事自体が頭のおかしい事なんだろうけどね。
「抑止力について考えるのは、まぁこの辺りで一旦終わろっか。本当に現れるのかすら不明だしね」
「そうだね。まず、対策のしようがないし。ヒスイもいいかい?」
「ん」
三者全員が、抑止力についての話は一旦止める事に同意したのでこれで終わり。
他に、何か話そうかなと思ったが、既に真っ暗の深夜。
正確な時間は分からないが、確実に遅い時間帯だろう。
「そろそろ寝る?」
「そうだね。流石に少し疲れたよ」
今日は、本当に色々あったので人間である瀬莉は少し疲れたではすまないと思う。
絶対に目茶苦茶眠い筈だ。
「ほぁ~~~……すまない。結構眠い」
うん。
案の定、大きな欠伸をして凄い眠そうな目をしてる。
私が、寝ると提案したので気が緩んだのだろう。
とりあえず、寝る場所に連れていくとしよう。
とは言っても直ぐ側なのだが。
「悪いけど、ベッドや布団は無くてね。硬い寝床だけど許して」
案内した場所にあったのは岩で出来た寝床。
以前、アルタナのダンジョンで私が寝床として造ったものと同じものだ。
こんな事になるならベッドを一つ位買っておけば良かった。
マジで、この寝床硬くて翌朝の目覚め最悪だから。
まぁ、そうは言っても無いものはどうしようもない。
「仕方ないよ。今日は諦めてこの寝床で寝よう」
「ん。ママも、一緒に寝よ」
「そうだね。二人共、毛布とバスタオル渡すから首の下と身体にでも掛けて」
それから、私達三人は仲良く寝床で眠りにつくのだった。
そして
「…………ん?……風?」
どれ位寝ていたのか分からない。
私は、外から聞こえてくる風の音で目が覚めた。
左右には、瀬莉とヒスイの二人が気持ち良さそうに眠っていて見てて気持ちがホッコリ。
ただ、一つ本音を言えばヒスイってダンジョンコアだけど睡眠が必要なのかが凄い疑問だったりする。
けど、そんな事を考えるのは無粋なので深く考えない事にする。
娘の可愛い寝顔が見れる。
それだけで、十分だろう。
ちょっと、風が少し強すぎない?
先程から、外からビュービューと吹き荒れる風の音が聞こえてくるのだ。
まるで、台風みたいな強風。
ただ、台風の時みたいな豪雨は降っていない。
これが、もし豪雨まで降っていたら最悪だった。
もし降っていたら、明日は地面がグチョグチョになっていただろうから。
んん~~この世界も、地球に似て台風が発生したりするとか?
それで、強風が吹いてる的な?
強風が吹き荒れてる理由を考えるが、そもそもが異世界な上に前世で気象情報に詳しい訳でもなかった。
なので、理由等何も分からずお手上げ。
「異世界だし、こんな事もあるか。寝よっと」
最終的には、こんな理由に至り考えるのを諦めて寝直そうとした。
「ッ!!!??」
その時、吸血鬼としての戦闘感か。
それとも、人体の第六感とでも呼ぶべき感覚か。
私は、探知系スキルを使用してないにも関わらず何かヤバイ事態が自分達に迫っていると感じた。
え、何これ。
身体が、心が逃げろって。
何かヤバイ事が起きるから逃げろって警鐘が鳴り響いてる。
一体、何が。
私は、ここでようやく探知系のスキルをフルで発動して周囲を確認した。
そして、何が起きているのか理解した。
「あぁ」
私は、寝床から地面に降りると外に出る。
そして、空を眺めた。
「…………本当、最悪だよ」
アカリが目を向ける先。
遠く離れた空。
そこには、空を舞う様に飛び迫り来る一体の龍が居た。
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