第100話 遺跡探索(3)
邪魔でしかないので、血液玉のトゲトゲを消す。
維持してたのを止めるだけで、勝手に霧散して消え去るので一々撤去とかしなくて済むので非常に便利だ。
あ、だけど、消えずに残ったら高空から落下させたら隕石みたいにして再利用して使えるかも?
超広範囲殲滅技が欲しかったし隕石とか最適かも。
その点だけは、消え去るのはちょっと残念かなぁ。
って、そんな事は今はどうでも良いや。
無事に戦闘も終わったので私は、最下層の入り口の方へと顔を向ける。
勿論、瀬莉を呼ぶ為だ。
「せりり~ん、終わったぞい~~」
私の呼び声が最下層に小さく響く。
それが聞こえたのだろう。
入り口から、ひょっこりと瀬莉が顔を出すのが見えた。
戦闘は、無事に終わってる。
とはいえ、不安感は若干残ってるのだろう。
キョロキョロと不安そうに最下層の広い部屋を見回しながら瀬莉は私の元まで歩いてきた。
そんな、キョロキョロしながら歩いてくる瀬莉の様子が内心可愛いと思ったがバレたら絶対に怒るか不機嫌になるので内情だ。
「お、終ったのかい?それと、せりりんって渾名は止めてくれたまえ」
「ちゃんと終わったよ。後ろの見えるでしょ?」
「……渾名に関してはスルーなんだねぇ」
瀬莉が、何か言ってるがきっと気のせいだ。
私は、後ろに横たわる先程ブッ殺したウガル君の死体を指差す。
「十mを越えるライオン似の魔物か。近くで見ると凄い迫力だよ。かなり強かったんじゃないのかい?」
「戦闘を見なかったの?」
てっきり、軽く程度は覗き見してるかと思ったが違った様で瀬莉は私の言葉に首を横に振って否定した。
「見なかったさ。いや、正確には最初の召喚される所は見たよ。だが、直ぐに壁を簡単に破壊する様な攻撃が始まっただろう?」
そう言って瀬莉は、「あれ」って言いながら入り口の向い側の壁を指差した。
瀬莉の指をたどって顔を向ける。
壁がバラバラに崩壊し直ぐ側には、一mはありそうな幾つもの巨大な岩石が転がってるのが見えた。
成る程、納得だ。
「あんな攻撃を見てる時にされてみたまえ。ろくに反応も出来ずに巻き込まれて死んでしまうに決まってるだろう。だから、直ぐに階段まで避難して座って待ってたんだよ」
「そうだったんだね」
その行動は正解だ。
戦闘中の外れた攻撃が、何処にぶつかるのか等その時にならないと分からない。
今回は、入り口方向には運良く攻撃が向かなかったみたいだが、万が一にも入り口方向に一つでも攻撃が当たっていたら入り口は崩壊していた事だろう。
本当にキチンと避難してくれていて良かった。
「まぁ、それなりに強かったよ。ステータスも高かったし土属性魔法や波衝って強力なスキルを持ってたし」
「結果が、この最下層の惨状か。酷い有り様だねぇ。こんな事が出来る魔物に勝てるんだからアカリは本当に凄いよ」
「フフ、ありがと」
誉め言葉に嬉しく思いながら改めて周囲の戦闘跡を見渡す。
瀬莉の言葉通り酷い有り様だ。
地面は、ウガルの振り下ろしや衝撃波攻撃で砕け散る。
壁もウガルの岩塊、衝撃波、私の蹴りで見事にバラバラに粉砕。
そして、ウガルの周辺の天井と地面がトドメのトゲトゲ玉の刺で百を越える風穴が空いている上にウガルの血液で地面には大きな血液溜まりが出来ている。
「まぁ、酷い有り様なのは本当だけど、崩落まではしなさそうかなぁ」
「そうだねぇ。かなり頑丈な造りで良かったよ。っ!?アカリ!あれ!!」
「ん?……あぁ」
瀬莉が指差す先。
ダンジョンコアの祀られている祭壇前。
そこには、地面に光輝く良く分からない模様が描かれている円状のモノ。
所謂、魔法陣と呼ばれるモノが出現していた。
「良かった。ちゃんと現れたね」
ウガルを倒してから現れたのを見るにダンジョンからの脱出用の魔法陣に間違いないと思う。
「多分だけど、脱出用の魔法陣だと思うよ」
「よ、良かった。ここから出られる」
私も、これに関しては瀬莉同様に本当に安堵している。
脱出用の魔法陣が無かった場合の脱出方法の検討がろくに思い付かないから。
思い付いても、核であるダンジョンコアをブッ壊す位だろうか。
確か、ダンジョンを消滅させるのがコアを破壊する事だった筈だし。
「それじゃあアカリ、早くダンジョンから脱出しよう。ボスモンスターを倒したから安全だとは思うが長居して何か起きてもいけない」
瀬莉の言い分は正しい。
仮に長居していたせいでリセット。
再びボスモンスター出現何て起きてしまっては、殺せるとはいえ非常に面倒でしかない。
「まぁ、そうだね。出よっか。けど、ちょっとだけ待って」
そう言ってウガルの死体に視線を戻す。
折角倒したウガルをこのまま放置するのも勿体無い。
なので、持って帰る為にウガルを収納に仕舞った。
「ほぇ?」
かと思ったら何かあった。
透明感のあるベージュ色をした球体が地面に転がっていた。
何か凄い見覚えのある球体だ。
「アカリ?どうかしたのかい?」
「これ」
その物体を拾い上げ瀬莉にも見せる。
やっぱり、瀬莉も見た事があったんだろう。
それを見た瀬莉は、驚いたのか軽く目を見開いてその物体の名前を言った。
「はぁ!?もしかして、スキルオーブかい!!?」
「うん」
はい。
まさかのスキルオーブでした。
おかしいね。
私って運が悪い人間の筈なのにアルタナに続いてまたレアアイテムをドロップしちゃったよ。
あ、今は人間じゃなくて吸血鬼だった。
いや、今はそんな事はどうでもよくて。
とりあえず、何のスキルオーブなのか鑑定して確かめる。
ベージュ色のスキルオーブなんて国庫では見た事が無いので実はちょっとだけ楽しみだったりする。
結果
────
名前:人化の宝珠
詳細:『人化』のスキルを身に付ける事が可能となるスキルオーブ。
MPを消費する事でスキルを発動し使用者を人の姿に変化させる事が可能となる。
人化の効果は、スキルLvの高さ、MPの消費量で効果の高さが変わる。
────
「いや、使い所」
これって、多分だけど人型以外の魔物が使って人化する為のスキルだよね?
私既に人の姿してるんすけど。
あの、使い道が無いんだけど?
いや、コレクションとしてなら使い道あるけどさ?
「あぁ~~」
私は、使い道が無さそうなスキルオーブだった為に少々ガッカリして項垂れた。
折角なら、波衝みたいな衝撃波を放てるスキルとか欲しかったのが本音だったりする。
けど、出ちゃった物は仕方ない。
出てくれただけ有難いと思う事にした。
「何のスキルオーブだったんだい?」
「人化のスキルオーブ」
「人化……使い所が」
やっぱり、瀬莉もそう思うのだろう。
教えた途端に言葉に詰まっている。
「まぁ、コレクションにでもするよ。とりあえず、脱出しよっか」
「そうだね」
この場でやる事は全て終った。
後は、ダンジョンから脱出するだけだ。
コレクションにするとは言ったけど。
……人化かぁ。
瀬莉にコレクションにするとは言った。
だが、割り切ったもののやはり使い道が無いのは残念。
歩きながら、内心どうしようかと思案する。
私に獣型やドラゴン系統の魔物の眷属?従魔?が居たら使えたのになぁ。
ウガルとか、従えて強くしたら目茶苦茶良かったかもなぁ。
それに人化スキルを持たせたらリアル獣耳少女?少年?をモフモフ出来たかも。
出来るなら、獣耳少女!!
獣耳幼女なら尚最高ッ!!!
あああぁぁぁーーーーーーッ!!!!
目茶苦茶やらかしたかもしれないこれぇ!!!!!
けどなぁ~~従え様にも他の魔物を眷属や従魔にする方法ってどうすんだろ。
眷属なら、やっぱり血を吸うとか?
従魔なら召喚魔法とかあるけど、実物を見た事ないしなぁ。
ワンチャン、魅了使ったら従えれないかぁ。
けど、魅了はちょっと向かないか。
一つ問題があるし。
はぁ~~どうするかぁ。
う~~ん……やっぱり人化のスキルオーブはコレクションかなぁ。
やっぱり、人化のスキルオーブはコレクション入りという名のお蔵入り確定かなと思い魔法陣前までついた。
後は、魔法陣の中に入れば恐らく元の森へ戻れる。
これで本当に終わる。
私は、最後にダンジョンコアを一目見ようと魔法陣を回って祭壇前に立つ。
「綺麗な物だねぇ。持って帰らないのかい?」
「うん。置いて帰るつもり」
瀬莉の言葉に頷きながらそう返す。
そして、横に立つ瀬莉がふと言葉を溢した。
「持って帰らないのかぁ。最高の素材になりそうなのに勿体無い。付与が出来たらこれまで以上の魔道具が作れそうなのに」
瀬莉も生産組だったからダンジョンコアの様な魔力との相性が確実に良いモノは素材として魅力的。
このまま放置して帰るのは、瀬莉として非常に勿体無いのだろう。
確かに、素材としては最高だろうねぇ。
付与して武器や防具に加工出来たら、そこらの武具とは比較にならない代物が出来そう。
凄い性能の魔剣とか出来たりして。
あ。
「…………付与か」
「アカリ?」
その時、私の頭に一つの閃きが。
私は、祭壇に置かれるダンジョンコアを手に取る。
「アカリ、持って帰るのかい?」
ダンジョンコアを手に取った私に瀬莉は、少し弾んだ声で聞いてきた。
「ん?うん。本当は、城に戻ってダンジョン発生の報告をしようと思ったから置いとくつもりだったんだけどね。ただ、正確には持っては帰らないよ」
「それは、どういう」
私の言葉に瀬莉は?を浮かべて首を傾げる。
「とりあえず、脱出するよ。コアを破壊せずとも、祭壇から取ったらダンジョンの崩壊が始まるかもだし」
「崩壊!?は、早く脱出しないと」
「そんな急がなくても即座に崩壊はしないと思うから安心しなよ」
大慌する瀬莉を宥めながら私は、瀬莉と共に魔法陣に入った。
瞬間、ダンジョンに飛ばされた時と同じ様に視界が暗転し浮遊感に包まれる。
五感が上手く働かない感覚は相変わらず不快感が凄いが、しばらくすれば感覚が戻った。
目を開けば、視界には広がる多くの木々。
だが、直ぐにおかしいと感じる。
「アカリ、気のせいかもしれないが」
「何?」
瀬莉も私と同じ様におかしいと思ったのだろう。
その原因について話した。
「森の木々が枯れてるが、元々枯れていただろうか。枯れていなかった気がするのだが」
そう、周囲の見える限りの森の木々が何故か枯れているのだ。
それも、木々だけではない。
見える限りの地面に生えている草花も枯れているし何なら、地面もカラカラに乾燥してひび割れている。
まるで、死んだ大地とでもよぶかの如き光景。
これが、瀬莉と同じく私がおかしい思っていた原因である。
「いや、私も枯れてなかったって記憶してるけど」
「別の場所?」
「多分同じ場合の筈。木々が空けてる広場みたいなのは同じだし」
「確かに、それじゃあ、本当に同じ場所?」
「ちょっと待ってて。よっと」
空力を発動し数回空中を跳躍。
ある程度の高さまで来たら目を細め周囲を眺める。
「ん~~~~うん」
確認を終えて地面に飛び降りる。
「どうだった」
「元の場所で間違いなさそう。周りに見える山の景色とか、森に来るときに遠方に見えてた町もあった」
「そうか、良かった」
ちゃんと戻って来られたと確信が持てた。
その事に瀬莉は、ホッと安堵する。
ぶっちゃけ、私も別のダンジョンに飛ばされたのかと思ったから内心凄い安堵してたりする。
「何で枯れてるのか気になるけど、私達じゃ分からないし気にしなくて良いかな?」
「私も、それで良いと思うよ。見た感じ害はなさそうだからね」
「もう遅いしここで野宿しよっか」
「そうだねぇ。流石に、疲れたよ」
実は、もう夕方で時間も遅いのだ。
森に着いたのが昼頃。
ダンジョン内を探索して脱出までに数時間は掛かっている。
なので、かなり周囲が暗かったりするのだ。
「はい。果実水と夕御飯。流石にお腹が空いたでしょ?」
「ありがとう。昼御飯を食べ損ねてたからねぇ。流石にお腹が空いたよ」
昼御飯抜きの上に突然のダンジョン探索。
冗談抜きにお腹がペコペコだ。
瀬莉も私も収納から出した食料と果実水を普段以上の早さで黙々と食べるのだった。
※※※※※
「ふ~~~~気持ち良かった。こんな事も出来るなんて。本当に万能だねぇ」
「ただの魔法だけどねぇ」
食事を終えた私達は、ダンジョン探索で汚れに汚れた身体を綺麗にするべくお風呂に入っていた。
会話から分かる様に私の土属性魔法で造り上げた手造りお風呂。
贅沢に二人で入った上に足を伸ばしても余裕な広さのお風呂を造ってみました。
血と土と泥水で汚れた身体を綺麗に出来た上に暖かいお湯に浸かれたので、目茶苦茶スッキリ。
魔法で、瀬莉と自分の髪を乾かし綺麗な服に着替えた私は、とある事を始める。
「さてと、始めますか」
土属性魔法で造り上げた椅子に座った私は、収納からダンジョンから持ち出したダンジョンコアを取り出し同じく土属性魔法で造ったテーブルに置く。
「何を始めるんだい?」
そんな私が気になったのか、同じ様に向かいの椅子に座り果実水を飲む瀬莉が質問してきた。
「ちょっとした実験だよ。ダンジョンコアを使ってね?」
ダンジョンコアを使って一体どんな実験をしようとしてるのかだが、本当に簡単な実験だ。
「え~~と、まずは付与を発動。コアを付与対象にしてっと」
「ちょっと待て!?」
「ん?」
「何をするつもりだい」
「実験だけど?」
そう実験。
失敗したらワンチャンだがダンジョンコアが無駄に。
成功したら、ちょっと面白い事になる素敵な実験だ。
因みに、何で付与を取得してるのかだが生産組を見てる際に流れで私も取得する事になった。
他にも、錬成や錬金術とかも取得してたりする。
「下手したらダンジョンコアは無駄になるけどね。けど、元々偶然手に入った物だし良いでしょ?」
「良くない良くない!!!??勿体無いって!!」
まぁ、却下してくるのは知っていた。
けど、どうしても試してみたい事なのだ。
「お願い!!やらせて。どうしても試してみたいの」
両手を合わせ頭を下げながら必死にお願いする。
ダンジョンコアを無駄にしたくない。
けど、必死にお願いする私の気持ちを無下にもしたくない。
結果、悩んだ末に瀬莉は…………
「分かったよ。やりたまえ」
「ありがとう瀬莉!」
私のお願いを許してくれた。
許可も降りた。
これで、私の行いを邪魔する者は誰も居ない。
私は、意気揚々と実験の続きを再開した。
「付与対象にしたら、これを使ってと」
そう言って取り出したのは、ベージュ色の小さな球体。
本日ゲットしたばかりのスキルオーブだ。
私は、それを魔力を流して使用。
瞬間、スキルオーブが砕け散り私に流れ込んでくる。
人化のスキルを取得成功。
私は、その取得成功した人化のスキルをダンジョンコアに付与した。
「……良し成功。後は、魔力を流してっと」
ダンジョンコアに魔力を流し込む。
私の考えだと多分これで上手くいくと思う。
しかし、反応は一切無し。
「駄目かぁ」
やはり、そう上手くいくわけないかとガッカリして項垂れた。
「え」
「は?」
その時、テーブルの上に置いているダンジョンコアが強く光輝きだした。
目が開けられない程の閃光を放つダンジョンコア。
「眩しッ!!」
瀬莉は、直ぐに反応に気付いたので目を閉じ手で視界を隠したから良かった。
「ギャアアァァァァァ!!!??目があ!!目がああぁぁぁぁ!!!!??」
しかし、項垂れてた私は僅かに反応に遅れたせいで目をやられてしまった。
ぐおおぉぉぉああぁぁぁーーーー!!!??
目が目茶苦茶クソ痛いーーーッ!!!!
目を押さえながら痛みに悶え苦しむ。
幸い、どこぞの大佐の様に視力を失う事は無かった様で目の痛みも少ししたら引いてきた。
そして、同じタイミングでダンジョンコアの光も収まってきた。
「光が弱まってきた」
「一体何が起きたんだい」
閃光から目を守っていた手をどかす。
光が弱まってきた事で、ようやく目視可能な明るさになった。
「お」
「なッ!?」
私と瀬莉は、ダンジョンコアに何が起きたのか確認する事が出来た。
~~~~~~~~~~~~
※アカリの秘密その6
実は、少し方向音痴。
真っ直ぐ進むだけの道や簡単な造りの場所なら問題ないが、少し複雑な場所になると地図があっても迷う事がある。
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