第74話 外見だけじゃ分からないって話
「あ、アカリ様」
「アカリ君。大丈夫か?」
私の様子に二人から心配されるが、反応する程の精神的余裕が今の私には無い。
厨二病でもないのに二つ名をつけられる。
しかも、二つ名がよりにもよって戦姫!姫だ!!
自意識過剰だが、見た目だけで言えば姫の名も似合う事だろう。
しかし、中身は前世一般人のJK。
姫とつけられ呼ばれている事に私の脆くか弱い精神は甚大なるダメージを受けた。
そして、天を仰ぎ続ける事三分。
私は何とか再起動した。
「ハァ~~~それで、いつ向かうんですか」
諦めた私は、いつ向かうのか訪ねる。
本当は、王族になど会いたくないがもう今の段階では巻き返すのは不可能。
目の前のギルマスを殺せば逃げれなくもないが、流石にそこまでして逃げる気は起きなかった。
それに、元々王都には行くつもりだったし冒険者ギルドにも寄るつもりだった。
遅かれ早かれ同じ結末だっただろう。
「それだが、馬車を用意しておくので明後日の朝にギルド前に来てもらえるだろうか。アカリ君達も色々あって疲れてるだろう。今日、明日休んで身体を癒して欲しい」
「それはどうも。それじゃあ、今度こそ行かせてもらいますね。フェリ行こう」
「はい、アカリ様。それでは、フーズ様失礼します」
「あぁ、二人とも今回は報告をありがとう。感謝する」
部屋を出た私達は、案内してくれた受付嬢に一言挨拶するとそのままギルドを後にした。
「アカリ様大丈夫ですか?」
「うん、ダイジョバナイ」
「あ、ヤバイですねこれ」
明後日には、馬車で王城へと運ばれる。
その事に、ズーンと肩を落としテンションが格段に落ちた私はトボトボと街中を歩く。
「逃げよっかなぁ」
「それは、止めた方が良いのでは。下手したら魔王の関係者等と悪い方向に思われるかもしれませんよ」
「だよねぇ。ハァ~、ん?そう言えば、フェリも受付嬢だったのに私の事知らなかったの?」
現私の眷属のフェリだが元は受付嬢。
私の名前を聞いた時に分かっていたのなら教えてくれても良かったのにとジト目でフェリに尋ねる。
すると、フェリは私のジト目から顔を反らすと非常に申し訳なさそうに白状した。
「え~~と……すみません。受付の仕事が忙し過ぎて完全に忘れてました。さっき話を聞いて『あ、そんな話もあったなぁ』って思い出しました。あの、ほ、本当にごめんなさい」
「……そっか、まぁ良いよ。あ、今度は服屋に案内お願い」
「はい。分かりました」
起きた、決まった事を掘り起こしても仕方ない。
フェリだって本当に忘れていたみたいでしょんぼりしている。
別にフェリを責めたい訳じゃないので、潔く今回の事は諦めて街に急いで来た目的の場所へと向かうのだった。
あ、そういえば、二つ名称号に付いてるのかな?
ふと、称号関連で以前ジョニーのステータスを覗いた時の事を思い出した私は、ステータスを開いて確認する。
────
名前:アカリ
種族:黒血鬼
状態:通常
LV:17/60
HP:785/785
MP:820/820
筋力:816
耐久:635
敏捷:833
魔法:772
─スキル─
【鑑定】【収納】【言語理解】
【血液支配Lv7】【吸血】【眷属化Lv4】【索敵Lv9】
【偽装魔法】【火属性魔法Lv6】【水属性魔法Lv6】
【風属性魔法Lv7】【土属性魔法Lv6】【再生Lv7】
【日射耐性Lv8】【状態異常耐性Lv8】
【痛覚耐性Lv7】【霧化】【魔力制御Lv5】【黒血】
【物理耐性Lv2】
─称号─
【女神アリシアの加護】【女神アリシアのお詫び】
【Bランク冒険者】【白銀の戦姫】
────
予想通り称号と化していた。
「あ"あ"ぁ"ぁぁ~~~」
分かっていた。
前に見たジョニーも二つ名が称号になっていたのだから私だって称号になっていてもおかしくない。
しかし、それでも受け止めきれず口から呻き声が漏れてしまう。
「ッ!?あ、アカリ様。どうかしました?」
「ごめん。何でもないよ」
驚かせてしまったフェリに謝りステータスを再び見る。
やはり、称号の表記に間違いはなかった。
加護とお詫びは、女神様に付けられたモノだから初めからあるのは分かる。
冒険者ランクやフェリの眷属の称号は、ある種自己を分かりやすく示すモノだし簡単に付くのだろう。
で、二つ名。
これは、呼ばれ始めてから付くんじゃなくて自分で呼ばれているのに気付いて初めて付くの?
それとも、何か条件が?
私は、タップして確認する。
────
【白銀の戦姫】
-説明-
冒険者のアカリの武勇が多くの人々に伝わり万人に認められた事で称号として授けられたもの。
一定の数を越える敵と戦闘する際、ステータス上昇の恩恵を得る。
────
うわ。
恩恵ありの称号じゃんか。
しかも、何気に性能良いんですけど。
アカリは、説明文の称号の恩恵に目を剥く。
しかし、今は恩恵効果ではなく称号化する条件の確認が目的なので横に置いておく。
え~~と、つまり、誰か一人が呼んでも二つ名は称号化しない。
でも、一定の人に伝わって認められると二つ名も称号化する的な?
え、でも今日の朝まで無かったよね?
あれかな、称号化するちょっと前に確認してたからだよね?
流石に、短時間でそれだけ早く伝わってるとかないよね?
アカリは、何とか自分に言い聞かせて精神の平穏を保とうとする。
しかし
あ、でも結局称号化してるって事は私の二つ名って既に万人に知れ渡って呼ばれているって事?
「あぁぁぁ"あ"ぁ"ぁ"~~~」
「え!?またですか!!?」
私は、精神のダメージに呻くのだった。
※※※※※
「あ、アカリ様」
「ん?何?あ、店員さん、もう少し明るめの服ってあります?」
「ありますよ。少々お待ち下さい。直ぐに持って来ます」
さて、会話から分かる通り私達は服屋に来て買い物していた。
フェリに案内してもらった店だが、様々な服が揃っていて種類豊富、服の品質も触った感じしっかりしていて良さそうな服屋だった。
「あ、これも良いかも」
「あの、アカリ様」
所で、服屋に来て一番楽しいのは何だろうか。
ジャンル豊富な店ならただ服を眺めるのも楽しいだろうし実際に服を試着するのも楽しいだろう。
実際、私も前世では友人と服屋に行った時は眺めたり試着して楽しんだものだ。
「お客様。こちらお持ちしました」
「おぉ、これも良いですね」
「あ、あの」
だが、私は眺める、試着するよりも好きな事がある。
それは
「それじゃあ、フェリ」
「は、はい」
「次は、これ着て?」
人に服を着せてそれを見る事だ。
「ま、まだ着るんですか」
「うん。あ、それ着たら次これで」
私は、自分が選んだ白シャツに紺のズボン、グレーのコートをフェリに渡しながら女性店員が持ってきた服も着る様に言う。
それを聞いたフェリは、終らぬ試着タイムに疲れきった表情を浮かべるも頷くのだった。
「……はい」
現在、フェリの服の試着回数37回。
間も無く40回越え。
フェリが疲れきった表情を浮かべて当然である。
「着替え終わりました」
フェリが試着室に消えてしばし。
試着室から着終ったと声が聞こえるとカーテンを開けてフェリが出てきた。
「おぉ~~似合ってる!フェリ凄い綺麗だよ!」
「…………ありがとうございます」
着替えたフェリの姿に私は素直に思った感想を述べる。
やっぱり、フェリ美人だなぁ。
見た目が良いと何でも似合うね。
さて、話が逸れるがフェリの見た目を少し話そう。
フェリは、肩より幾分か下位の長さの黒に近い焦茶色の髪に黄金色の軽いつり目、色白の綺麗な肌。
身長は私よりも高く多分167、168cm位はあるんじゃないだろうか。
そして、どこがとは言わないが背負ってた時に背中にムニュムニュと柔らかい大きなお山が当たったり支えていた手にも弾力あるブツが同じ様に触れてきた。
まぁ、良く言う出るとこ出て引っ込むとこ引っ込んでる感じだ。
顔も小顔だし、前世のそこらのモデルよりも断然美人だと断言出来る。
私が、そんな美人さんなフェリが選んだ服を着ている姿を眺めてるとフェリが疲れた声で聞いてきた。
「あの、別に服を買わなくてもアカリ様の予備の服でも良かったんじゃ」
まぁ、一理ある。
だが、それは無理だ。
「え、無理だよ。だって、フェリの方が身長とかその他サイズが色々大きいから、服とか下着のサイズが合わないもん。だから、わざわざ急いだんだよ。ゆっくり来たらフェリ、土や血で汚れた服で連日過ごす事になるし」
私が、わざわざ全速力ダッシュで急いだのはこれが理由だ。
でないと、フェリは身体を拭く事は出来ても私の服は小さくて着れないので土や血で汚れた服を着続けるしかない。
流石に、同じ女子としてそれは可哀想。
なので、大事な眷属の為に頑張った。
まぁ、綺麗な服を着たフェリを見て癒されたいって理由もあったが。
「そうですか」
フェリは、私から訳を聞いて一言そう言うと黙りこんだ。
かと思えば、私の身体を頭からつま先まで眺めある一点で視線が止まった。
そして、自身のモノと見比べ…………
「確かに、アカリ様は私と違って慎ましいですもんね」
「なッ!?」
きっと、長時間の服の試着の仕返しだろう。
遠慮無しに私へそう言ってきた。
「ち、小さくないわ!!」
「アカリ様。嘘はダメですよ?」
「嘘じゃないし!着痩せしてるだけだし!!」
「フフフ、ムキになって可愛いですね。大丈夫です。私と違って小さくてもアカリ様の事を嫌いになりませんよ」
フェリは、服の上からでも分かる自身の大きな胸に手を置き話ながら私の目の前に歩いて来ると、おもむろに私の胸に触れてきた。
「ひぇッ」
「……え?」
そして、何故か疑問の声をあげた。
「え?……85?…56……88」
「??ッ!ちょ、はぅッ!。何、なんなの」
フェリは、疑問の声をあげたと思ったら何故か私の胸を揉んで数字を呟くとそのまま腰、お尻も触ってきて同じ様に数字を呟いた。
そこまでされて、ようやく私はフェリの呟いた数字の意味が分かった。
「嘘。まさか本当に」
「だから、着痩せって言ったでしょ!」
触って確かめた癖に納得しきれていない様子のフェリの額に強めのデコピンをかます。
「い"ったあぁぁ~~!!?」
それを受け額を押さえて服屋の床を転げ回るフェリを呆れながら眺め迷惑を掛けてしまったので一言謝ろうと店員を探すと少し離れた位置に控えていた。
「あの、すみませんでした」
「いえ!ご馳走さまです」
「何でや」
謝ったのに何故かサムズアップでそう返されて意味が分からないのだった。
※※※※※
あれから、痛みから回復したフェリに気に入った服、下着類、フード付きのコートを十セット位選ばせて購入。
商品がパンパンに入った袋を受け取り次の目的地である宿を目指していた。
「ねえフェリ」
「……何ですか」
あ、まだ落ち込んでる。
ある意味暴走していたフェリは、正気に戻った後こんな感じで落ち込んでいた。
まぁ、人前であんな事をしてしまったのだから落ち込んでしまうのもわかる。
そっとしておいてあげるべきなのだろうが、気になる事があったので私はフェリに質問した。
「何で、触っただけで私のサイズ分かったの?もしかして、触っただけで分かったりする的な?」
私が気になったのはこの事。
昨日出会ったばかりとはいえ色々とあり仲良くなった私とフェリだが、流石にスリーサイズを教えて等いない。
てか、私自身今世と前世ではサイズが異なっているので把握していない。
なのに、何故かフェリは触っただけで私のスリーサイズらしき数値を恐らく当てていた。
それが、どうしても気になったのだ。
「あ、それは、両親が服の仕立て屋をしてて子供の頃に手伝ってたら触っただけで分かる様になりまして。まぁ、手伝うって言ってもメジャー測りや数値を紙に書く程度ですけど。両親なんて見ただけでサイズが分かってましたし」
「いや、凄ッ!所謂職人技みたいな感じなのかな。ん?あ、宿ってあれ?」
「はい、そうです。それなりに大きな宿なので多分部屋は空いてると思います」
思った通り目的地の宿で間違いなかった。
フェリの言う通り周りの建物に比べてもそこそこ大きい。
建物の外観が古い感じからしてかなり昔から経営しているのだろう。
フェリの話では、お風呂もちゃんとあり料理も美味しいとの事なのでとても楽しみだ。
私は、ワクワクと宿の中にフェリを連れ立って入っていった。
「あれ、誰も居ない。ごめんくださ~い」
受付に誰も居ないので建物の中に向けて呼び掛ける。
すると、私の声で気付いた様で建物奥から女性の声と走ってくる足音が聞こえてきた。
「は~い」
奥から姿を見せたのは、声から分かった通り女性の従業員の方だった。
「いらっしゃいませ。本日は宿泊でしょうか」
「はい。二名で今日明日の二泊。二人部屋で、食事とお風呂付でお願いします」
「二泊の二人部屋に食事とお風呂付で銀貨一枚と大銅貨二枚になります」
女性が提示した料金を収納から丁度で取り出して渡す。
それを確認した女性は、受付テーブルの後ろの壁に掛けられている部屋の鍵を一つ取り私に渡してくれその際に、必要な事項を丁寧に教えてくれた。
「ーーー説明は以上です。どうぞ、ごゆっくりお寛ぎ下さい」
説明を聞き終えた私達は、女性に一礼して宿泊する部屋へと向かった。
説明だと通路奥の左手だと言っていたので言われた場所を歩いていく。
「006、006……あったここだ006号室」
扉に006のプレートが掛けられた部屋。
今回私達が泊まる部屋だ。
「二人部屋は初めてです。どんな感じなんでしょ」
「だね。私も初めてだよ。さて、オープン」
扉を開けて部屋へと入る。
「おぉ~」
「広いですね」
中は二人部屋相応の広々とした造り。
軽く部屋の中を歩くが隅々まで綺麗に掃除されベッドメイキングもきちんと行われている。
これだけで、ここがとても良い宿だとわかった。
その後、部屋を見終わった私達は良い時間なので従業員に頼んで運んでもらって夕食を食べた。
料理は、フェリの言ってた通りどれも美味しく野菜と何かの肉の肉野菜炒めが特に美味しかった。
そして、夕食に満足したアカリとフェリは皿を返しにいった足でお風呂へと入りにいったのだった。
※※※※※
「うぅ~~まだ、額が痛いです」
「自業自得でしょうが」
お風呂から上がった私とフェリ。
そして、フェリは赤くなった額を押さえて痛がっていた。
何故フェリの額が赤いのか。
それは、私が再びデコピンしたから。
そして、デコピンした理由。
「でも」
「『本当だった』とか言うからでしょ」
フェリが、風呂場の脱衣場で服を脱いだ私を見てそう言ったからだ。
服屋で確かめた癖に、こやつまだ完全に信じていなかったのだ。
だから、再びデコピンで制裁した。
「全く、確かに私は服を着てると着痩せしてC位に見えるけどさぁ。確かめたんだから分かってたでしょ?」
「そうなんですけど、実際に見たらつい口から溢れて出ちゃって」
「次言ったら威力二倍だからね」
「すみませんごめんなさいやめて下さい。これ以上痛いと本当に頭が割れちゃいます」
本気でやると分かったのか、フェリは額の激痛を思い出して涙目で謝ってきた。
「なら気を付けてよ。ふぁ~~ほら寝るよ」
「はい。おやすみなさい」
「おやすみ~~」
肉体的、精神的にも疲れた1日だった為、ベッドに横になった二人は数分後寝息をたてて眠りについたのだった。
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