第75話 王都到着
※投稿が遅れてしまい申し訳ありませんでした。
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豚や牛は、加工場へと運搬されて行くときどんな気持ちなのだろうか。
加工の為に殺される時は、並んでいる豚や牛達が恐怖で涙を流す的な話は聞いた事がある。
だが、運搬車で移動中の時はどうなのだろう。
ただ車で移動していると思ってストレスを感じるだけで他には何も考えてないのだろうか。
そうだったら、とても羨ましい限りだ。
さて、いきなりこんな事を話している理由だが、現在私は…………
「どれくらい掛かるの?」
「う~ん。どうでしょう。王都とそれなりに近いとはいえ距離はありますから。一週間位で着けば良い方でしょうか」
王都行きの馬車に乗っているからだ。
見た目や内装が豪華な馬車で中の椅子も程よく反発性があり腰やお尻が痛くなりにくい。
明らかに身分の高い人々が普段使う様な高級な馬車である。
そんな馬車が、今日の朝にギルドに行ったら用意されていた。
これがもしフェリとの王都観光をする旅行であれば私も素直に高級馬車に大喜びしていただろう。
だが、残念な事に行き先は国王が待ち受ける王城。
しかも、周りを護衛の為の兵士十数名と荷物運搬用の馬車に等間隔で囲まれながら連れられている。
その事が、私の精神をカンナで削る様に磨り減らしていたのだった。
「そっか。ハァ~~嫌だなぁ」
「アカリ様を呼び出すのは、カラクでの防衛戦に対する褒賞を渡すのが目的なんですかね?」
フェリは、今回の呼び出しの目的が何なのか分かってる範囲で予想する。
それを聞いていた私は否定した。
「無いと思うよ。ただ、直接褒賞を渡す為だけに冒険者の小娘を国王が呼ぶと思う?ハハハハ、ないない。ありえない。仮にも向こうは国王。権力の頂点。報奨を渡したいなら、私の住む街の領主にでもやらせれば良い。なのに、自分の元に呼び出す。多分、手元に取り込む、何か命じてやらせるつもり何じゃないの」
あくまで、私の推測でしかない。
だが、国王という一国の頂点である者が直接呼び出しているのだ。
この推測はきっと正しいだろう。
違っても、当たらずとも遠からずだと思う。
「だとしたら、国王様は何が目的で」
フェリが、私に聞いてくるが私は地球の北欧の全知な神格存在じゃないので正解は分からない。
眷属の疑問に答えてあげたいが、これも推測でしか答えてあげれない。
「さあね。まぁ、大方魔王討伐を任せたい。魔王討伐のメンバーに加わって欲しい。それか、何か難しい依頼を頼むとかじゃないの」
「もしそうだった場合。アカリ様はどうするんですか?」
恐る恐ると言った雰囲気で、私の推測を聞いたフェリがそう尋ねてきた。
実際に、魔王の脅威の一部を目の当たりにしたのだ。
魔王討伐がどれだけ危険なものなのか理解している。
それに、フェリは私が魔王に手も足も出なかった話を聞いている。
その事もあって本当に魔王討伐を命令された時の事が心配なのだろう。
私は、フェリの心配を失くす為に軽く笑い答える。
「どうだろうね。仮にも王命だし。まぁ、適当に言いくるめて時間を稼ぐかな」
「時間ですか?」
「うん。今はまだ弱いから無理だけど、どの道あの糞魔王は殺すつもりだからね。だから、適当に時間を稼いでその間に最低今の倍は強くなる。そんで、今度会ったらこれまでの恨みを晴らすべく確実に殺す」
「あの、お願いなので無茶だけはしないで下さいね」
「了解」
了承したが、守れないと思う。
強くならないと糞魔王を殺す等出来ない。
その為には、多くの魔物と戦闘してレベルUPする必要がある。
そうなれば、必然的に危険な場面も多くあるだろう。
フェリには悪いが心配を多くかける事になると思う。
殺されかけた分は、キッチリ倍にしてやり返さないとねぇ。
負けっぱなしも癪だ。
強くなって絶対ぶっ殺してやる。
内心私が打倒糞魔王に燃えているとフェリが、ふと思い出した様に私に質問してきた。
「そう言えばアカリ様。昨日はベッドの上で何をしてたんですか?空中を長い時間眺めてましたけど」
「あ~あれね。ステータスを偽装魔法で軽く弄ってたの。王城でステータスを見せる事になっても大丈夫なように」
「そんな事も出来るんですか!?」
「うん。偽装魔法は、鑑定結果にも干渉出来るからね。それと、念の為にフェリにもステータスに偽装掛けとくから」
「ありがとうございます」
念には念を。
何が起こるか完璧な予測等出来ないのだから、注意し過ぎて困る事はない。
幸いと言って良いのか分からないが、フェリはまだ吸血鬼になってからレベルが上がってないし吸血鬼固有のスキル以外に新たなスキルを身に付けてない。
なので、ステータスの内容を弄るのは楽だった。
「それにしても、馬車で一週間近くかぁ」
「馬車で宿泊は少し辛いですもんね」
そうではない。
別に私的に馬車での宿泊は問題ない。
私にとって、一週間が馬車移動に費やされるのが問題なのだ。
「ハァ~~本当は、王都までの道中でフェリを鍛えるつもりだったのに」
「え!?そうだったんですか!」
そんな事を考えていたと思ってなかったのかフェリは、驚きの声をあげて私の顔を見てきた。
「うん。勿論何かあった時は守るよ。だけど、当然私だって限界はある。私が守れない時、敵を任せたい時の為にもフェリが戦える様に強くなってもらわないと」
「理由は分かりました。けど、強くなれますかね私」
フェリは、私に聞いてきた。
自分が強くなれるのか不安を抱いているのだろう。
だが、問題ない。
「大丈夫だって。嫌でも強くなってもらうから」
「え」
「とは言え、馬車じゃマトモな鍛練なんて出来ないから鍛えれないんだけどね」
「ほっ」
私の言葉に固まったフェリだったが、今すぐどうこうはしないと分かりホッと安心していた。
だが、そんな安心も次の言葉で消え去ったが。
「仕方ないか。とりあえず、窓のカーテン開けるから日光浴びて日射耐性上げよっか。後、身体強化をスムーズに行える様に同時に魔力制御の練習ね。それじゃあ、開始」
「ぁ」
その後、夕食を知らせに兵士が来るまでフェリは椅子に倒れながら鍛練。
そして私は、拗ねたフェリをなだめるのに苦労する事になるのだった。
※※※※※
馬車で出発してから3日が経ち夜間。
現在私達は、道中の町で宿泊している宿の裏庭にて………
「ほら、殺すつもりで攻撃!」
「そう、言っても。当たらないん、ですよ!」
戦闘をしていた。
勿論喧嘩ではなくフェリを鍛える為の模擬戦だ。
ちなみに、フェリは短剣を使用。
私は素手で戦闘している。
「もっと素早さを生かす。攻撃の仕方も考えて。そんな我武者羅な攻撃じゃ当たらないよ」
「くぅッ!」
必死に身体を動かし私に短剣を振ってくる。
しかし、元の身体能力の差と私のこれまでの戦闘経験。
それにより、フェリの攻撃は簡単に防げるし避けられた。
「ハアッ!」
「遅い。もっと動きをコンパクトに」
私が後方に下がるのに合せ、フェリが間合いを詰め首に向けて右手に持つ短剣を振り抜いてくる。
しかし、それを耳飾りと部分強化で防御力を高めた左手で受け流す様に弾いて防ぐ。
「嘘!?」
「ほら、注意散漫」
「え、キャっ!」
足元が疎かになっているフェリに足払い。
あっさり足を掬わたフェリは、バランスを崩して地面に転がった。
「はい終わり」
「また駄目でした」
「そうでもないよ。それなりに動けてる。さっきの攻撃もタイミング的には良かったよ。まぁ、パワーとスピードが低くいけど」
「ぐうぅぅ~」
私の指摘に悔しそうに唸るフェリ。
だけど、実際先程の最後の攻撃は素人目線だが良かったと思う。
しかし、素のステータスが低いのが問題だ。
本当なら魔物を倒してレベルUPさせたいのだが、今は王城へ向かう道中なので無理。
本当に面倒な事この上ない。
「模擬戦お疲れ様です」
「すみません。こんな時間まで」
声が聞こえそちらを向くとこちらに歩いてくる二十代半ば位に見える男性がいた。
彼は、今回の私達の護衛の兵士の一人。
私達が、裏庭で鍛練すると知ってこんな夜間に見張りを指示された可哀想な方だ。
「良いですよ。これが仕事ですから。所で、もう終わりですか?」
「はい。後は、お風呂に入って寝ようかと」
聞かれた事に正直に答える。
すると、目の前の男性から驚きの答えが返ってきた。
「もし良かったら一度手合わせをお願い出来ますか」
「え?」
何故か、私に手合わせを願ってきた。
まさかそんな事を言われるとは思ってもいなかったので驚いてしまい直ぐに言葉を返す事が出来なかった。
「ダメですか」
「いや、あの、何故に?」
男性の言葉に何故手合わせを願ってきたのか気になり理由を尋ねる。
「貴方が、噂で聞いた『白銀の戦姫』だと聞きました。貴方のカラクでの活躍は知っています。そんな方と一度手合わせしてみたいのです」
何か、武者修行している武士みたいな答えが返ってきた。
てっきり、「お前みたいな小娘が本当に強いのか俺が確かめてやる」みたいな答えが返ってくるのかなと思ったのだがそうではなかった。
別に手合わせ自体は問題ないので受ける事にする。
「あぁ、そういう。まぁ、別に良いですよ」
「ありがとうございます。それと、手を抜かずに本気でお願いします」
釘を刺されてしまった。
もし手抜きと思われたら後が面倒になるかもしれない。
仕方ないので、怪我させない程度に本気でやる。
「フェリ、合図お願い」
「はい。それでは、始め」
フェリが、挙げていた手を下ろし手合わせがスタートした。
そして、スタートした瞬間。
「いきまッ!?ぐぁ"ッ!」
剣を構えていた男性の横に一瞬で移動した私は、男性の脇腹にボディーブローを放つ。
避けられずモロにボディーブローを受けた男性は耐えられる筈もなくアッサリ気を失った。
「はい終わり」
結果は私の勝ち。
手合わせは、文字通り一瞬で終わったのだった。
「よっと」
「あの、その人大丈夫なんですか?」
「大丈夫でしょ。仮にも兵士なんだし。多分」
手応え的には、骨や内臓にまでダメージは与えていないと思う。
なので、気を失っているだけで重傷は負ってはいないはずだ。
まぁ、重傷を負っていても回復薬があると思うのである程度の治療は出来るだろう。
「それよりフェリ。宿に戻ってお風呂に入ろ」
「あ、はい」
宿に戻った私達は、男性を別の兵士に預けた後お風呂へと入浴。
そうそうにベッドで眠りについたのだった。
※※※※※
あれから更に5日程が経過。
「着きましたね」
「うん。ここが王都かぁ」
ついに、私達は王都へとたどり着いた。
「アカリ様にフェリエ様」
「ん?何か?」
窓から見える景色を眺めていると護衛部隊の隊長が話し掛けてきた。
多分今後の行動予定についてか何かだろう。
「これからですが、国王様との謁見が明日の昼の予定です。なので、本日宿泊していただく宿に向かわせてもらいます。その後、明日王城への迎えが来るまでは自由となります明日までごゆっくりして下さい」
「了解です」
予想通り予定確認だった。
どうやら、国王と会うのは明日の昼みたい。
いつの間に予定を取れたのか知らないが、多分早馬か魔道具で私を捕まえたと知らせてそれから同じ様に何度か報告しあったのだろう。
それから、私達は事前に予約していたらしい見るからに高級な宿へと連れていかれ宿泊手続きを済ませると一週間共に行動した兵士達と別れた。
「フェリ、王都の観光したいんだけど案内お願い出来る?」
「了解です。とは言っても私もそこまで詳しくないですが。それに、まだ日光下だと上手く動けないですよ?」
「別に大丈夫だよ。迷子にさえならなければ良いから。それじゃあ、しゅっぱ~つ」
そうして、私とフェリは観光を始めた。
王都でも有名らしい商店や人気の観光名所等々。
フェリが知っている少ない範囲だけとはいえ、やはり王都というべきか見たことないものが多くとても楽しめた。
「あ、こぇおいひぃねふぇい」
「アカリ様。女の子がはしたないですよ?食べてから話して下さい」
「ゴクン。ん。了解」
「あの、せめてちゃんと噛んで飲み込んで下さい」
「あ、うん。ごめん」
フェリの言葉に素直に謝った私は、先程から気になっていた事をフェリに聞いた。
「ねえ、フェリ。王都って元からこんなに冒険者が多いの?」
実は、先程から冒険者らしき人物がやけに目に付くのだ。
別に、冒険者が居るのは問題ない。
だが、ここはアルタナとは違いダンジョンはなかったはずだ。
なのに、こうも冒険者が多い理由が気になった。
「あぁ、それはAランク昇格試験があるからですね。確か、3日後だったでしょうか?多分冒険者が多いのは、パーティー仲間や見学の冒険者も多く訪れてるからだと思いますよ」
「成る程ね」
理由が分かり納得した。
冒険者の中でも特に実力を誇るAランクを決める試験があるならば、野次馬冒険者が多く居ても不思議ではない。
現に私もフェリから聞いて凄く気になっている。
「所で、アカリ様は試験資格はないんですか?」
「ないない。だって、私冒険者になってまだ二、三ヶ月位だよ?それに、Bランクになったのもつい最近なんだよ?資格なんてある訳ないって」
そもそもこんな短期間でBランクの時点で普通はおかしいはずだ。
Aランク試験の資格まで持ってたらそれこそおかしいの言葉ですまない。
当分私には縁の無い試験資格だろう。
だが、昇格試験自体はどんなものか気になる。
なので、時間があればフェリと見に行ってみよう。
「それより、あっちの出店に行かない。気になっててさ」
「良いですよ。行きましょう」
その後、出店を見て周り買い食いしたりして楽しんだり配達可能とフェリから聞いて『オーレスト冒険者ギルド。カリナ様宛』と商業ギルドに頼んでアリサやカリナさん、フィー、サリエへのお土産を買って一つに纏めた荷物の配達を頼んだり等々王都観光を大いに楽しんだ。
しかし、楽しい時間は直ぐに終わるもので気付いたら夕暮れ。
日が暮れて辺りが暗くなってきたので宿へと戻り食事と入浴をすませた私は、明日の国王との謁見を思い憂鬱な気分で眠りについたのだった。
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