第73話 吸血鬼さん○になる。

 サンサンと光輝き私達生き物を照らす太陽。

 そんな太陽の陽光の下で現在私達は…………


「本当にすみませんアカリ様」

「良いよ。こればかりは仕方ないって」


 動けないフェリを私が背負いながら走っていた。

 何でこうなっているのか。

 それは、私達があの家を出た直後にまで時を遡る必要がある。


 ※※※※※


 フェリの発案で王都へ向かう事に決定。

 さっそく、出発する為の準備を始めようとした。


 しかし


「あ、収納に大半必要な物を仕舞ってるから準備する物無いじゃん」


 収納の中に必要な食糧、衣類、薬品類等々が仕舞ってありそもそも準備と呼べるモノが終わっていた。


「そういえば、さっきのステータスにそんなスキルがありましたね」

「うん。てな訳で私の準備は終わってるね。フェリは荷物と…ってそもそも無いか」


 何か荷物があれば収納に仕舞おうと思い聞いたが、そもそも身に付けている衣服の類い以外何も持っていないのでフェリには荷物自体無かった。


「はい。持ち物は何も無いので」

「ん~~色々やる事があるなぁ」


 今後の予定が一つ増えた。

 それも、とても重要な。


「王都に行く道中に街とかあるっけ?」

「はい。一つあります」

「そっか、良かった良かった」


 どれだけの規模の街なのかは知らないが一先ず街が有った事に安堵した。

 これで、最優先事項の問題を解決出来る。


「良~し。先ずは、あ!フェリちょっとごめんね」

「え?何ですか?」


 私は、大事な事を忘れていたとフェリの口元に手をかざし偽装魔法を施す。

 そして、手を離せば。


「出来たっと」

「え?え??」


 フェリの開かれている口には、吸血鬼になった事で生えていた鋭い牙が普通の歯と変わらない見た目になっていた。


「魔法で牙を隠したんだよ。これで、牙で吸血鬼だってバレる事は無いね」

「アカリ様、ありがとございます」

「気にしなくて良いよ。良し今度こそ、街に行くよ!道案内宜しく」

「はい、任せて下さい」


 意気揚々と扉を開けて外へと出る。

 いざ、新たな街へ出発と歩き出そうとした瞬間。


「それじゃあ、しゅ『ドサッ!!』へ?」


 自身の直ぐ後ろで何かが倒れる音がして振り返る。


「え、フェリ?」


 倒れていたのは、やはりフェリだった。


「な、何で。何が!?」


 ついさっきまで元気だった。

 なのに、突然倒れ意味がわからずパニクる。


「フェリ!しっかり!」

「だ、大丈夫です。力が突然抜けて。上手く、動けなくて」

「え、それって」


 私は、昨日自分が体験した症状に似ていてまさかと思い鑑定を掛けた。

 しかし、吸血衝動の表記は無い。

 そもそもフェリなら吸血衝動で理性が無くなる。

 なので、吸血衝動とは違うと判断。


 一体何が。

 吸血衝動以外で不調になる原因。

 部屋までは元気だった。

 部屋と違うのは…………あ。


 原因が分かった。

 既に確認していた為に問題無いと思っていた。

 私は、フェリを抱えて家の中に戻る。


「あれ?動ける」

「やっぱり」


 すると、フェリは先程までが嘘の様に動けた。


「フェリ、出てみて」

「あ、はい」


 フェリに外に出てもらう。

 一歩ずつ慎重に足を進めて行く。

 片足、胴体、首と扉を抜けてフェリの身体が外の輝く太陽の光に包まれていく。

 そして、全身が光に包まれた瞬間。


「ぁ……」


 フェリは、糸が切れたかの様にその場に崩れ落ちた。


「思った通り。太陽が原因だったか。よっと」


 私は、地面に倒れるフェリを抱き上げお姫様抱っこする。

 すると、フェリが私の顔を見て質問してきた。


「何で、太陽は」


 当然の疑問だ。

 フェリは、私の強引な方法で太陽の光は問題ないと確認した。

 その時は、片腕を太陽に晒しても何も無かった。

 なのに、外に出たら突然倒れて太陽が原因だと私が言っている。

 内心非常に不安になってるだろう。


「全身が太陽光に晒されたからだと思うよ。ある程度までは日光に晒されても問題ない。でも、日射耐性で身体が焼けて灰にならない代わりにスキルLvが低いから力が抜けるんだろうね」

「なるほど。安心しました。でも、これじゃ」


 身体に死ぬ様な害がないとわかり安心したフェリだったが、このままでは動けないと分かり顔を曇らせて俯く。


「大丈夫。問題ないよ」

「え?キャッ!」


 そんな顔はして欲しくない。

 私は、何も問題ないと分かって貰う為にフェリを抱え直し落とさない様に抱き締める。


「あ、アカリ様!?何を」

「ちゃんと掴まっててね」


 身体に身体強化+脚に部分強化を施す。


「え!え?!」

「行くよ~~」


 フェリへそう言いながら軽く前傾姿勢になり膝を曲げ脚に力を込めてスタートの体勢を取り。


「ま、まさか!?」

「しゅっぱ~つ!!」


 出発の言葉を合図に地面を砕く程に踏みしめ走り出した。


「キャ~~~~ッ!!」


 人気の一切無い無人の街を走り抜ける。

 景色が次々と後方へ流れる様に変わっていく。

 数日前まで賑わい華やかだった街の光景と今の光景の違いに上手く言えない感情が湧く。

 気付けば、街の入り口までたどり着いた。


「これで、この街ともお別れだね。数日しか居なかったけど、エゲツない数日だったよ」

「長い間過ごした街と別れるのはやはり寂しいですね。今でも、昨日の事が夢なんじゃないかと思ってしまいます」


 フェリの寂しそうな表情と声音。

 何か励ます為に声を掛けてあげたいが、上手い言葉を思い付かない。


「上手い事は言えないけど、元気出して。これから、今の寂しさを塗り替える位楽しい日々を過ごそう。私も一緒に居るからさ?」

「はい。ありがとうございますアカリ様」


 少し恥ずかしい事を言った気がする。

 しかし、フェリの表情に多少は明るさが戻ってくれたので気にしない。


「うん。あ、所で道はどっちに行けば良い?」

「あの道を進めば着きます」


 フェリの示したのは、私が街に来た時とは違う方角に向かって敷かれている街道。

 その街道を進めば街までたどり着くみたいだ。

 わかりやすい道で良かった。


「了解。落とさないけど、ちゃんと掴まっててね」

「は、はい」

「それじゃあ、街に出発」


 フェリが、ギュっと私の首に手を回してキチンと掴まったのを確かめると私は街に向けて街道を走り出した。


 ※※※※※


 そして、何度か休憩を挟みながら走り続けて現在の状況になると。


「所でアカリ様。聞きたい事が」

「ん?何?」

「どうして、魔法で空を飛ばないんですか?」


 何で空を飛ばないのか。

 フェリの聞きたい事は理解出来る。

 空を飛んだ方が速いし体力の消耗も低いと思っているのだろう。

 確かにそう思うのも仕方ないだろう。

 だが、走っているのにはキチンと理由がある。


「空を飛ぶのも良いけどあれって魔力の消費が多いんだよね。レベルアップで魔力は増えてるけど、何かあって魔力が足りないとかあったらいけないし。それに、飛んでる時にフェリが落ちたらヤバイでしょ?」

「た、確かに」


 昨日の飛んでる時を思い出してるのだろう。

 落ちたらどうなるのか想像したのか顔を見ると少し青ざめブルリと震えていた。


「まぁ、走ってもこの通り速いからね。問題ないよ。もしかして、飛んで欲しい?」

「だ、大丈夫です。このまま走って向かいましょう!」

「え、別に多少は飛べるよ?」

「本当に大丈夫ですから!安全第一です!」


 少しからかってみると必死にフェリが止めてきた。

 実にからかいがいのある反応だ。


「ハハハ、冗談だよ。さてと、ちょっとスピード上げるよ」

「え」


 フェリが、私の言葉に固まる。

 既に、かなりの速度故に最高速度と思っていたのだろう。

 しかし残念。

 まだ、全速力の七割位だ。……多分。


「このままだと、着くのが遅くなりそうだからね」


 現在太陽の位置が真上に近い。

 直に正午になるが、今だ街の景色が見えてこない。

 もしまだ半分も進んで居なかったら街に着くのがかなり遅くなってしまう。

 その為、スピードを上げる事にした。


「しっかり掴まってよ。ハァ!!」


 今まで以上に脚に力を入れる。

 更に、脚への部分強化を強くする。

 すると、踏みしめた地面が放射状にひび割れ走り出した瞬間、ズンッ!と重い音が鳴った。


「いいぃやあぁぁぁッ!!?お、落ちるぅぅ!!?」

「うわっ!?危な!」


 あまりの走る速度に背負っていたフェリの身体が一瞬風の抵抗で離れて目茶苦茶焦る。

 景色の流れる速さからして私の走る速度は、軽く七十、八十キロ以上は出ていると思う。

 その為、落ちればフェリは軽い怪我ではすまないだろう。

 しかし、何とかフェリを落とさずにすみ走り続けるのだった。


 ※※※※※


「着いたぁ」

「ほ、本当に着いちゃった」


 あれから、どれ位経っただろうか。

 私は、フェリを背負いながら走り続けついに街の前までたどり着いた。


「結構早く着いたね」


 まだ、太陽の位置は高い。

 夕方までにはまだまだ時間がありそうだ。

 これなら、問題を解決する為の時間が十分ある。


「それじゃあ、中に入ろっか」

「はい。って待って下さい。私背負われたままですか!?」


 フェリが、背負ったまま街へと入ろうとする私を慌てて止めてくる。


「え、でも動けないよね?」


 フェリを下ろしても動けない。

 なので、背負っていくしかないと思いそう言った。

 しかし、フェリは人目のある中で歳下の私に背負われているのは恥ずかしいのか一つ案を提示してきた。


「そ、そのコートを貸して下さい!全身が日光から隠れたら多分動けるはずです!」

「え、まぁ、良いけど」


 道中で陰の中ならギリ野外でも動けるのがわかった。

 その為、服で日光を遮れば動けると思ったのだろう。

 フェリの提案を受けて一度道端の木陰に移動して予備のコートを貸し出す。

 受け取ったフェリが袖を通し私と同じ様にフードを被った。


 そして


「や、やった。アカリ様、何とか動けます!」


 フェリは、太陽の下でも自身の両足で立ち上がり歩く事が出来たのだ。


 ただし


「良かったね。まぁ、凄いふらついてるけど」


 まるで、貧血で今にも倒れてしまいそうな人の様に左右にふらふらと揺れているが。

 だが、立てたものは立てたのだ。

 これで、背負って街に入らずにすむ。

 私は、フェリに私の腕を掴ませ倒れない様にさせる。

 そして、城門の門番の前まで行き私はギルドカード。

 フェリは、身分証を提示して街へと入った。


「身分証持ってたんだね」

「はい。この服の内ポケットに」


 フェリは、そう言って内ポケットから小さなモノを取り出した。

 それは、所謂巾着と呼ばれるモノでその中に先程の身分証や何かのカード、多少のお金が入っていた。


「結構便利なんですよ。まぁ、アカリ様の収納の方が桁違いに便利ですけど」

「うん。あれは私もおかしいと思うから」


 そんな事を話ながら歩いているとフェリが気になったのか質問してきた。


「所で、何処に向かってるんですか?」

「ん?別に何処にも。言うなれば、歩きながら探してる感じ」

「言ってくれたら私が案内しますよ?一応何度か来た事があるので」


 それは、非常にありがたい。

 私は、さっそく行きたい所をフェリに伝えた。


「それじゃあ、服屋と冒険者ギルドに案内してくれる?」

「服屋と冒険者ギルドですね。了解です。それじゃあ、冒険者ギルドが近いのでそちらから行きましょう」


 そうして、フェリの案内のもと歩く事しばし。

 視界の先に見覚えのある剣と盾のエンブレムが見えた。

 冒険者ギルドだ。


「アカリ様。用件はやっぱりアルタナの事ですか?」

「うん。街が滅んだんだから早期に連絡しておかないと流石にヤバイでしょ」


 私の知る限り街が滅んだのはこれで二度目。

 早期に上の人間にこの事を伝えて何かしら対策を取らないと今度は、どんな規模の被害が出るのか分からない。


「ですね。ですが、ギルドマスターと話が出来たら良いのですが」

「そこ何だよねぇ」


 問題はそこだ。

 いきなり現れたら小娘がギルマスと話せるか。

 普通は、どう考えても無理だ。

 何故か、これまでの街では毎回ギルマスと仲良くなって直接話をしてるが、今回も話せるとは限らない。

 上手くギルマスと話せる様にと願いながら私は、ギルドの扉をくぐった。

 中は、どのギルドとも変わらない多くの冒険者の姿で溢れている。

 その光景を見渡しながら受付窓口を探す。


「あそこか」

「良かったですね。空いてます」


 時間的に空いてるタイミングの様で何処も窓口が空いていた。


「すみません」

「ようこそ。ご用件は何でしょうか」


 人当たりの良さそうな笑顔で私達を迎えてくれたら受付嬢の女性。

 実に見ていて晴れやかな気持ちになる笑顔だ。

 しかし、その笑顔も私の次の言葉で曇る。


「ギルドマスターに用があるんですが会えますか?」

「……は?ギルドマスターですか?」

「はい。ギルドマスターです」

「何か、紹介状の様な物はありますか?」


 予想通りこんな小娘がギルドのトップを出せと言ってきた事に不審な表情を向けられる。

 かろうじて、即突っぱねられず紹介状の有無と対応してくれたが当然そんな物は無い。

 どうしたものかと困っていると、フェリが前に出て対応しだした。


「私は、アルタナ支部の冒険者ギルドの受付嬢をしているフェリエと言います。実は、火急の用件がありギルドマスターに会いたいのです」

「これは、ギルド職員を示すカード。分かりました。少々お待ち下さい」


 気付けば、フェリのおかげであっという間に話は終えていた。


「これで、後は待つだけですね」

「ありがとね。助かったよ」

「いえいえ、私はアカリ様の眷属ですから」


 そして、待つ事数分。

 私達は、先程の受付嬢に案内されて何処かの一室まで連れてこられた。


「ギルドマスター。お客様をお連れしました」

「入れ」

「失礼します」


 中から、低い男性の声が聞こえた。

 その声に従い受付嬢は、扉を開き私達を部屋へと促すと本人は、そのまま扉を閉めて去っていく。


「座ってくれ」


 ギルドマスターに示されたソファーにフェリと共に座る。

 すると、ギルドマスターは私達の正面のソファーに移動して座ると口を開いた。


「俺は、ここウルス支部のギルドマスターをしてるフーズだ。急かしてすまんが、仕事が山積みでな。火急の用件とやらを話してくれるか」


 背後の書類の山を見るに本当に忙しいのだろう。

 これから、そんな彼の仕事を増やすのは申し訳ないが話さない訳にもいかないので話させてもらう。


「はい。実は、昨日アルタナが魔王によって滅びました」

「……は?」


 私の言葉を聞いたギルドマスターは、予想外過ぎたのだろう。

 そう言葉を漏らすと固まった。

 しかし、流石トップに立つ人間だけあり数秒で再起動した。


「どういう事だ。詳しく教えろ」

「分かりました。ただし、今から話すのは全て事実ですので」


 私は、ダンジョンの最下層まで行った事。

 そこで、魔王に遭遇。

 魔王によってスタンピードを起こされた事。

 そして、それにより街が滅んだ事。

 魔王が、スタンピードで街に溢れた幾千、万近い魔物を何らかの方法で全て支配下に置いた可能性がある事。

 自分達以外が恐らく全員死んでいる事。

 それらの出来事を自身に不都合な事以外全て話した。


「そんな、馬鹿な。アルタナが滅ぼされただと。しかも、何千もの魔物を支配下に置いたってのか」

「信じられないと思うけど全て本当ですので。アルタナを調べてみると良いですよ。全てが崩壊した街だけが残ってますので」

「分かった。事実確認も含めて後程調査隊を向かわす。だが、それよりお前達だ。特にお前。先程の話が本当だとしたらダンジョンの最下層と言ったな。しかも、魔王と遭遇したと。何故そんな状況で生きている。何故昨日の今日でこの街に居る」


 ギルドマスターは、私の話から疑問に思ったのだろう。

 そう質問をしてきた。

 当たり前の疑問だ。


 さて、どう答えるべきか。

 まぁ、程々に正直に答えるか。


 私は、パパッと頭の中でストーリーを作成するとギルマスへと話していく。


「最下層に居たのは単純な事です。攻略していたからですよ。これが、攻略の証です」

「これは、アルタナのダンジョンの。信じられない。まさか本当なのか」


 ギルマスは、私が取り出した攻略の証を受け取るとそれが本物と理解したのか、多少は納得してくれている様だった。

 確認を終えたギルマスから攻略の証を返してもらい私は話を続ける。


「それで、魔王と遭遇して生きてるのは、魔王がスタンピードを起こすだけで放置されたからですよ。魔王にとって、私なんて路傍の石。足元を歩く虫けら程度の認識だったんでしょうね」

「信じられないが、嘘とも思えないな」


 ここから、多少の嘘。

 強大な糞魔王故にありえそうな話をする事で会話等の余計な出来事を隠蔽して事実と思わせる。

 そして、最後の仕上げ。


「それで、私達が街に居るのは奇跡的に生き残ったので街から移動してきたからですよ。夜中から馬に乗って。まぁ、慣れてなくて途中で逃げられちゃいましたけど。私達どちらもあまり馬の扱いに慣れてないので」

「そうか、一先ず納得しよう」


 何とかギルマスが納得してくれた様で安心した。

 これで、調査隊の報告があれば事実と分かりアルタナの事後処理的な事や魔王に関する対策も多少は何とかなるだろう。


「そうですか」


 話も全て終わった。

 仕事が山積みらしいので、長居するのも悪いと部屋を出ようとソファーから立ち上がろうとした。


「それじゃあ、私達はこれ「待ってくれ」何ですか?」


 しかし、何故か止められてしまった。

 ギルマスの顔を見るとまだ聞きたい事がある表情をしていた。


「大事な事を聞いてなかった。名前は何と言う」

「あぁ、すみません。言ってなかったですね。私は、アカリって言います」

「ん?アカリ?」

「?」


 何故か、私の名前を聞いて?を浮かべているギルマス。

 どうかしたのかと見ていると、ギルマスが色々質問してきた。


「すまないが、登録してる職業は何だ ?」

「魔法使いですよ」

「近接は出来るのか?」

「ある程度出来ますが」

「すまないが、フードを取ってもらえるか」

「あ、はい」

「ッ!!」


 言われた通りフードを取る。

 すると、ギルマスが私の顔を見て衝撃を受けた様な表情をした。


「あの、何か?」


 一体先程から何をしているのか分からずギルマスに訪ねる。

 だが、ギルマスから返ってきたのはまたしても質問だった。


「最後の質問だ。カラクであった魔王襲撃の際に、君は防衛戦に参加していただろうか」

「何でそれを知ってるんですか?」

「ッ!……やはり、あの少女だったか。情報通りの見た目の特徴。それに、俺が聞いた二つ名の通りの美しい白銀の髪。恐らく本物。だったら、全て納得出来る。まさか、こんな所に」

「うわ~~……ん?」

「何を喋ってるんでしょう」


 私の疑問には一切答えず一人喋り何かに納得しているギルマス。

 一人で長々と喋っているのは中々に気味悪く私もフェリも軽く引いてしまう。

 そして、私達が引いて数秒。

 納得し頭の整理が終わったギルマスが再び話を始めた。


「すまない。まさか、最近各ギルドに伝達された人物が目の前に現れる何て思わなかったからな。アカリ君、君の話を信じよう」

「は、はぁ。と、所で、各ギルドに伝達って。それに、何か二つ名がどうとか」


 何か、もの凄く嫌な予感がする。

 各ギルドに伝達や二つ名等と一体私の知らない所で私に関して何が起きているのだろうか。

 恐る恐る私がギルマスに尋ねるとその最悪な内容が判明した。


「実は、アストレア王国の国王様がカラクでのアカリ君の活躍を耳にして王城に招待しようとしているそうなんだ。本来は、君の元いた街の領主様に手紙を出して呼び出そうとしたらしい。だが、アカリ君は丁度街を出ていただろ?」

「は、はい。そうですねぇ」


 そうだ。

 私は、カラクから帰って直ぐに街を出た。

 行き先を誰にも告げずに。


「しかも、その行き先がわからない。その事を返事の手紙で知った国王様は、王国全ての冒険者ギルド、各領主様へアカリ君の事を伝達。もし見付けたら、王都へと連れて来る様にと命令されたんだ」

「は?何ですか。要するに私は、これから王都。しかも、国王に会いに王城に連れてかれると?」

「そうなるな。そして、二つ名だが。アカリ君には、『白銀の戦姫』の二つ名が付いてる。誰が最初に呼んだのか知らないが、カラクでの戦いぶりを見た誰かが付けた呼び名らしい。戦場に舞い降りた美しい白銀の髪を持つ少女。圧倒的強さで数多の魔物を屠っていくその姿は、まさに戦の姫。そんな由来で付けられた二つ名が『白銀の戦姫』。最近じゃカラクでの防衛戦の活躍話と共に二つ名も徐々に各地に広まってるぞ。現に俺も、最近話した商人や他のギルドの友人から何度か聞いたしな」


 私は、嫌な予感が的中処か斜め上に突き抜けていた事に両手で顔を覆い天を見上げ。


「Oh my God」


 そう言葉を溢し固まるのだった。

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