第54話 お日様ポカポカ日向ぼっこ
美しい青空、ポカポカと暖かい太陽、肌に心地好そよ風。
思わずお弁当でも持ってピクニックにでも行きたくなる様な気分華やぐ今日この頃。
そんな日に、現在私は……
「あ"ぁ"~~生きとし生ける全ての生命を平等に照らす太陽の暖かい陽光が骨身に染みて活力が満ちていくよぉ~~ふみゃあぁぁ~~」
意味のわからない事を言いながら吸血鬼的にどうかと思う日光浴を満喫していた。
カラクからオーレストへと向かう馬車の屋根の上でダラ~ンと仰向けに寝転びながら。
ん?
真面目に護衛しなくても良いのかだって?
良いんだよぉ~。
何せ、今回は護衛ではなくて馬車の乗車客として乗ってるんだからねぇ。
だから、護衛は依頼を受けた冒険者に任せて私はのんびり気ままに日向ぼっこに励むのです。
「ふぁ~~~ぁむ。眠くなってきたよぉ。おじさ~ん、少し寝るから昼御飯になったら起こしてぇ~」
私は、眠たい目を擦りながら屋根の上から下を覗いて御者をしている男性へとお願いする。
すると、御者の男性がこちらを少し心配そうな顔をしながら話してきた。
「あ、あぁ、別に昼寝は良いが、中に入らなくて本当に良いのか?護衛の冒険者の人達が守ってくれてるから安全だと思うが、もし危険な魔物と遭遇したらそこに居たら危ないぞ」
男性の言ってる事は、至極当然だし客を運ぶ側としては出来たら何かあった時に守り易い馬車の中に居てほしい事だろう。
しかし、自分勝手で申し訳ないが今回は日向ぼっこしながら昼寝してリフレッシュしたいので男性には我慢してもらう事にする。
「大丈夫ですからぁ。何かあってもどうにかするので安心して下さぃ~」
「どうにかって、アンタみたいな女の子がどうするんだよ」
男性は、私の言葉を聞いて訝しんだ目をしながら聞き返してくる。
それに対して私が答えようとした時、横から男性に対して答えが返ってきた。
「彼女の言う通り心配しなくても大丈夫ですよ」
そう言ってきたのは、名前は覚えてないが馬車の護衛をしている冒険者の1人だった。
「それはどういう?」
「言葉通り彼女なら仮に何かあっても自分でどうにか出来るからですよ。貴方も噂位なら聞いたんじゃないですかね。1人で魔物の軍勢から城門を守り1人で吸血鬼を撃退した謎のフードの少女の話を」
「あぁ、聞いたが、何でその話しを今?彼女が、その少女とでも言うのか?」
「そうです」
「そう言う訳ですよぉ~ブイ」
名も知らぬ冒険者は、どうやら私の事を知ってる人物だったのかそう言った。
恐らく、直接防衛戦で見たのか模擬戦を見た類いだろう。
これ幸いと私は、冒険者の言葉が本当だと肯定しながらピースして答えた。
現在の服装も丁度フード付きコートを着ているので多少は説得力もあるだろう……多分。
冒険者と私2人の言葉を受けて男性は、しばし考え込んだ後、再び私へと向き直る。
「…………本当何だな?これが嘘で何かあっても責任は取らないぞ」
「ありがとうございます~。それじゃあ、お休みなさ
~い」
そうして、私はしばしのお昼寝タイムを満喫し始めるのだった。
「スゥ~~スゥ~ウニュ~」
※※※※※
時は遡り
アカリは、クレアさんと執務室で別れた後、冒険者ギルドを出る事なく1度受付窓口に立ち寄った。
何故そのまま冒険者ギルドを出なかったのかだが、1つ聞きたい事があったからだ。
「すみません。ちょっと良いですか」
「はい。何でしょう」
「護衛依頼とかじゃなくて普通のオーレスト行きの馬車に乗りたいんですけど、初めて1人で利用するものでして。何処に行けば乗れるんでしょうか?」
私が、聞きたかった事とはこの事。
ドイルさん、護衛依頼、領主邸の時等に馬車に乗った事はあれどそれは全て向こう側が用意してくれていたモノに乗っていただけ。
その為、私は何処で何をしてどうすれば馬車に乗れるのか何一つ知らないのだ。
「馬車ですか?それでしたら、商業ギルドに行けば運行の一覧が貼り出されてますよ。それを見て商業ギルドの受付窓口に言えば手続きも出来る筈です」
「ありがとうございます。早速行ってみますね」
「あ、待って下さい!」
受付嬢の方に引き留められ何事かな?と振り替える。
すると、突然受付嬢の方が頭を下げてきたので私は突然の事に驚く。
「え!?いきなりどうしたんですか!?」
「この度は、本当にありがとうございました」
私は、受付嬢の方の言葉で何で頭を下げたのか納得した。
どうやら、今回の防衛戦の事に対して私に感謝しての事だった様だ。
「頭を上げて下さい。それと、ありがとうございます。私も、皆さんを守れて良かったです。それでは」
そう言って、今度こそ私は冒険者ギルドを後にし商業ギルドへと向かった。
「確か、こっちの方にあったようなぁ」
防衛戦の夜に建物の屋根を爆走した際に、商業ギルドの近くも通ったので何となく建物の位置は頭の中に浮かんでいる。
しかし、あの時は索敵の反応位置ばかり気にしていたせいで詳しい建物の配置や景色を見ていなかった為にはっきりとした道順や目印になりそうな建物を何一つ覚えていない。
「ヤッベ……また、迷子になるかも」
私は、もしかしたら再び迷子になる可能性が出てきた事に若干の焦りを感じてきた。
しかし、最悪再び屋根上に上れば良いかと思い一先ず商業ギルドがあると思われる方角目指して歩いて行く事にする。
まぁ、幸い道中に人は居るし屋根上を走らなくても場所を聞けば着くでしょ。
別に、私方向音痴って訳でもないし。
そうして、商業ギルド目指して歩く事暫し。
道中何度か人に道を尋ねたりもしたもののアカリは無事迷子になる事なく商業ギルドにたどり着く事が出来た。
「これが、商業ギルドかぁ。外装は冒険者ギルドとは全く違うけど、やっぱりこっちも大きいなぁ」
アカリは、目の前の大きな建物を見上げながら相変わらずの大きさに純粋に凄いと思った。
大きさはパッと見は、前世の高校と同じ位かなぁ。
冒険者ギルドも、商業ギルドと同じ位の大きさだったよね確か。
流石、避難所にされるだけはあるなぁ。
ん~~それとも、避難所にもする為にあえて大きくしてるとか?
まぁ、どうでも良いか。
そういや、領主邸もアホみたいにデカかったなぁ。
アカリの宿泊したカラミス家は、目の前の建物程とは言わないがそれでも、バカデカイ家なのに代わりなかった。
三階建て建築で一フロアに幾つも部屋が作られている様な豪邸。
しかも、外には大きな庭まで見られた。
オタクの知識で多少理解が有るとは言え、やはり実際に見るとその凄さに圧倒されたものだ。
おっと、こんな所に突っ立ってたら邪魔になるね。
さっさと中に入ろっと。
私は、邪魔になるといけないのでそそくさと商業ギルドの中へと入って行く。
商業ギルドの中は、冒険者ギルドとは色々異なってはいるものの受付窓口や恐らく私の目的の馬車の運行表が貼られてる掲示板も直ぐに見付かり困る事は無さそうで一安心した。
長居するつもりもないしパパッと済ませてしまおうかな。
ん?
アカリは、早速掲示板の方に向かおうとした時に何かやけに見られてる気がし周りを軽く目だけで見る。
すると、やはりと言うか自分に視線が集まっていた。
あぁ~冒険者ギルドの方では、私が防衛戦の途中から素顔晒して戦闘してたからそこまで見られてなかったけど、ここの人達は違うのか。
これなら、コート着てフード被ってれば良かったかも。
アカリは、今からでも着るか?と考えたものの今更着ても意味ないかと思いそのままでいる事にした。
「さてと、え~と、馬車の運行表は……あった、これか。オーレスト行きの馬車は……マジか。今日は既に出てて無いのか」
どうやら、今日の分は既に出てた様で明日の朝まで次のオーレスト行きの馬車は出ない様だった。
私は、無いものは仕方ないと諦めて明日の朝の分をお願いする事にした。
「すみません。明日の朝のオーレスト行きの馬車の予約?をお願いしたいんですけど」
「はい。わかりました。オーレスト行きですね。少々お待ち下さい。……明日の空きはまだありますので問題ありません。大銅貨3枚程になります」
「え~と、大銅貨大銅貨……はい」
私は、収納から大銅貨を3枚取り出して受付嬢の方に渡す。
「丁度ですね。ありがとうございます。所で、今の収納スキルですか?」
「はい。そうですよ」
肯定すると、受付嬢の方は笑顔から真面目な顔になって私に忠告してきた。
「他の場所ならともかく。商人ばかり居るここでは、あまり使わない方がよろしいですよ。今回は、幸い気付かれて無さそうですがバレると騒ぎが起きますので」
「はい。気を付けますね」
素直に忠告に頷いたアカリを見た受付嬢の方は笑顔に戻ると馬車に乗る為の集合場所や時間について教えてくれ最後に一枚の札を渡してきた。
「これは、乗車する方の証明用の札です。乗る際に御者の方にお渡し下さい。それと、他の方も乗られますのでくれぐれも遅れない様に気を付けて下さいね」
「はい。ありがとうございました」
そう言って受付嬢の方と別れたアカリは、その後明日まで時間が出来たのでどうするかと考え………
「アリサやフィーにお土産でも買っていこうかな。それと、今日の宿を探さねば」
私はまず、今日泊まる為の宿を探しに向かうのだった。
中々見付からず苦労したものの無事泊まる宿が見付かりその後、お土産も無事買う事が出来たのだった。
そして翌日、朝に集合場所へと向かい無事馬車へと乗れ天気も良くせっかくなので許可を貰って屋根上に上り日光浴に勤しみ現在の昼寝に繋がるのだった。
※※※※※
時は戻り
「スピ~~スピ~~ンゥ、ン?」
アカリは、昼御飯を食べた後も屋根上で陽光の下気持ち良く寝ていると周りが何か騒がしい事に気付き寝返りをうち騒がしい騒音元へ顔を向ける。
そこには、護衛の冒険者達が魔物と戦闘している姿が見えて騒音の正体が戦闘によるモノだとわかった。
あぁ~魔物と遭遇したんか。
えぇ~と、ウルフ10匹か。
ん?何か一匹だけ毛色が違う様な。
あぁ、あれ進化個体か。
アカリは、ウルフの群れを眺めていると後方に居る一匹だけどこか毛色が違う事に気付きその個体が進化個体である事に気付いた。
ん~~見た感じ問題なく戦えてるし大丈夫かな?
まぁ、とりあえず様子だけ見てようかな。
ウルフとの戦闘は、アカリの思った通り特に問題なく進んでいきこれなら大丈夫かと思った。
しかし、冒険者の隙をついて一匹のウルフが馬車に向けて襲い掛かって来た。
「しまった!!」
「駄目!間に合わない!!」
冒険者達が、抜け出したウルフを対処しようとしたがとても間に合いそうにない。
「ウォータースピア」
「キャウ"」
なので、屋根上から魔法を放って代わりに対処した。
「気を付けて下さいねぇ」
ウルフが倒れたのを確認して私は、冒険者達へと気を付ける様に注意する。
「すまない!感謝する!」
「ありがとう!」
「悪い!!」
「助かった!」
冒険者達は、私の言葉に今一度集中し直すと残りの進化個体含めたウルフの群れを今度は討ち漏らしなく討伐し終えたのだった。
終わったね。
念の為に索敵で周りを確認してみたけど反応はないしもう大丈夫かなぁ。
それじゃあ、もう一眠りしよっと。
「アカリさん」
再び眠りに就こうとしたその時、自分を呼ぶ声が下から聞こえアカリは、のそのそと動いて下を覗く。
そこには、先程戦闘していた護衛の冒険者達が揃ってこちらを見ておりアカリは、どうかしたのかと?が浮かぶ。
「何か?」
「先程は、助かりました。危うく護衛対象が襲われる所でした」
「本当にありがとう。アカリさんが居なかったら最悪御者の男性は死んでいたかもしれなかったわ」
「俺からも、ありがとう」
「ああ、本当に助かった」
どうやら、先程の感謝を言いにきた様だ。
「それで、本来依頼を受けてないアカリさんがウルフから彼を守ってくれたんだ。少ないが、受け取って欲しい」
名も知らぬ冒険者1は、そう言って銀貨8枚渡してきた。
「う~ん、まぁ、わかりました」
気にしなくても良かったが、相手の立場としては危うく護衛対象を死なせかけたのだ。
私でも同じ立場ならするだろう。
なので、受け取る事にした。
「本当に助かった。それじゃあ、俺達は護衛に戻るよ。お前ら、気を引き締めて行くぞ」
「ええ」
「「おう」」
私は、それを眺めながら下の御者の男性に声をかける。
「おじさん、大丈夫だった」
「死ぬかと思ったよ。ありがとな」
「いえいえ、明日以降もここで寝かせてくれれば良いよ」
「好きなだけ寝てくれ」
「やり~~。それじゃあ、早速お休み~~」
私は、再び眠りに就いた。
翌日
私は、朝から屋根上に寝転びながら本日は眠らずに魔力制御の練習に励んでいた。
ん~~大分称号の補助無しでも魔力の制御が出来る様になってきたね。
魔法も前に比べて補助無しでも直ぐに発動出来る様になってきたし成長したなぁ。
まぁ、それでも発動に最低3、4秒は必要なんだけねぇ。
これが、魔力制御のスキルが自前で持ってたら楽になるんだけどなぁ。
「大分練習してきたからそろそろ獲得出来たりしないかなぁ。MPどれ位減ったかな?ステータス」
────
名前:アカリ
種族:紅血鬼
状態:通常
LV:18/40
HP:492/492
MP:472/529
筋力:497
耐久:371
敏捷:539
魔法:482
─スキル─
【鑑定】【収納】【言語理解】
【血液支配Lv5】【吸血】【眷属化Lv3】【索敵Lv6】
【偽装魔法】【火属性魔法Lv4】【水属性魔法Lv4】
【風属性魔法Lv5】【土属性魔法Lv4】【再生Lv4】
【日射耐性Lv6】【状態異常耐性Lv7】
【痛覚耐性Lv4】【霧化】【魔力制御Lv1】
─称号─
【女神アリシアの加護】【女神アリシアのお詫び】
【Dランク冒険者】
────
「あ、魔力制御のスキルだ。…………んっ!!?魔力制御!?え!?もしかして、今の練習でようやく覚えたの?マジで?やった!!」
「どうかしたか」
「何でもな~い!」
私は、一月近くの練習の成果がようやく実を結んだ事にとても喜んだ。
よ~し!せっかくだし魔力制御の練習しよっと!
アカリは、その日魔力が枯渇すれば回復枯渇すれば回復と異常な練習を続け1日で魔力制御のスキルLvを3にまで上げたのだった。
そんな魔力制御の練習をした翌日、ついに馬車はオーレストにたどり着いた。
「お~帰って来た~ってあれ?」
1週間近く離れていたオーレストに変わった様子は…………あった。
カラクで、魔王の出現があったせいで警戒体制が敷かれてるや。
まぁ、仕方ないか。
そんな、ちょっと変わったオーレストの景色を眺めながら城門を身分確認をして通り馬車は、バスで言う停留所的な所に止まった。
「お疲れ様でした。皆さん、これで短い馬車の旅は終わりです」
これで、今回の馬車移動は終わりの様だ。
私以外の人達は、御者の方に降りてお礼し各々目的の場所に向けて去って行き最後の1人が降りたのを見て私も屋根上から降りた。
「おじさんお疲れ」
「おう、お疲れ。結局、飯と夜寝る時以外はずっと上にいたなアンタ」
「いや~屋根上が気持ち良かったもんで」
男性の言う通りアカリは、この3日間殆んど屋根上で過ごしていた。
その事に、アカリは屋根上が気持ち良かったからと苦笑いで返す。
「まぁ、また利用する事があればよろしくな」
「うん。機会があればよろしく。じゃあね~」
「おう、またな」
そうして、男性と別れたアカリは、まずは冒険者ギルドにでも行こうかなぁと歩き出した。
その時
『ブチッ!』
「うわっ!?……靴紐が切れたのか。危なか『にゃあ~』…………」
突然靴紐が切れたのかと思えば、私の目の前を黒猫が鳴きながら通って行った。
「………………何で」
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