第53話 クラスメイト side(4)


 ※投稿が遅れてしまい申し訳ありませんでした。


 誤字りました。

 ❌オーレスト王国

 ⭕アストレア王国

 既に読まれた皆様本当にスミマセン

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 あれから、1ヶ月の月日が経過し現在俺達は……


「相沢さん、建治の2人は、弓と投擲で先制攻撃からの援護!俺と誠也は、2人の攻撃と同時に接近しヒットアンドアウェイで攻撃!行くぞ!!」

「「「おう!!/ええ!!」」」


 とあるダンジョンにて、実戦兼レベルUPを目的としたダンジョン遠征に来ていた。

 現在相手しているのは、異世界モノで定番のオークが2体程。

 初めて目にした時は、その巨体と手に持つ岩の棍棒に気圧されもしたが、ダンジョンに来てから何度も目にして流石に慣れてきた。


「行け!」

「オラ!!」


 相沢さんと建治のスキルによる弓矢と投擲による投げナイフの先制攻撃。

 それを合図に俺と誠也は、オークに接近し攻撃される前に一撃をお見舞いし離れる。

 不恰好な戦法だが、無理に接近し続けて反撃を喰らうよりはマシな為、俺も誠也もこのやり方で戦闘を行っている。

 しかし、このやり方では決定打となるダメージを与えるのに長い時間を要してしまう。

 そうなると、遠距離組の武器が底を尽くし近距離の俺達も体力が持たない。

 なので……


「カウント3で、フラッシュを使う!3、2、1」


 何度か攻撃を与えた後、オークから軽く距離を取り俺は、カウントしながらスキルの魔力制御で魔力を操作する。

 そして、カウントを終えると同時に光属性魔法で空中に1つの光球を生み出す。

 その光球は、直後破裂したかと思うと今俺達が居る空間を強烈な光で真白に染め上げた。

 例えるなら、魔法版フラッシュバンだろう。

 時間にして1、2秒程度で光は収まり目を開け前方を確認する。

 そこには、閃光で目を焼かれて苦しむオークの姿が見えた。


「今だ!」

「しゃあ!!」


 視界を奪っている隙をつき俺達は、オークの懐まで潜り込み手に待つ剣を心臓目掛けて深々と突き刺す。


「ブゴ…アァ」

「ゴ、ガ…アァ」


 心臓への一撃が致命傷になり剣を引き抜くとオークは、地面へと倒れ伏し動く事はなかった。


「何とか勝てたな」


 俺は、それを見てオークが完全に息絶えたのを確認しようやく警戒を解いた。


「お疲れさん。今回も、天之の指揮と魔法のおかげで何とかいけたな」

「誠也もお疲れ」


 声が聞こえて隣を見ると、共にオークと戦闘していた誠也こと山根誠也が隣まで歩いて来ていた。


「とりあえず、建治達の所に戻ろうぜ」

「そうだな」


 誠也の言葉に頷き少し離れた場所に居る相沢さん達の元に戻る。


「2人共怪我はない?」

「お疲れ。良い倒しっぷりだったぞ」

「ありがとよ」

「2人も、良い援護だったよ。ん?」


 4人で、話していたら近付いてくる足音が聞こえそちらに振り向く。

 そこには鎧を着た1人の男性がこちらに歩いて来ていた。


「お前ら、見てたが今日も良かったぞ」

「ビクターさん」


 彼の名前はビクター。

 王国騎士団の騎士団長を務める方で、今回俺達クラスメイト一同のダンジョン遠征の監督兼護衛を務めてくれている方だ。

 ちなみに、何故これまで訓練を見てくれていたクロードさんやバゼットさん達でなくてビクターさんなのかというと、クロードさん達は近衛騎士団だからだ。

 近衛騎士団の本分は王族の護衛。

 その為、王城から離れた場所にあるダンジョンまで同行する事は出来ない為、今回のダンジョン遠征では代わりとして王国騎士団長であるビクターさんがついてくれたという訳だ。


「相沢、まだ、矢を放つ際に誤射を恐れてか力みが見られた。昨日も言ったが、お前は十分弓に関して腕は確かだ。冷静さを保てる様になれば今よりも良くなる筈だ。それと、矢に魔力を少し込めすぎてる様に見えたからそこも気を付ける様に」

「はい」

「建治、昨日よりも投げナイフの扱いが良くなってるぞ。だが、今のお前なら、もう少しナイフに速度と魔力を込めれたと思う。肩や腰、魔力の強化を上手く使え」

「はい」

「誠也、昨日よりは剣の扱いは良くなっていた。しかし、少し握りや軌道に拙い部分が見えた。まぁ、元々持ってなかったスキルだし仕方ない。要鍛練だ。だが、身体強化は上手くなってるぞ」

「はい」

「天之、剣術は昨日よりは良くなっていた。だが、誠也同様まだ拙い部分がある。要鍛練だ。だが、身体強化、魔法の発動はスムーズに出来てきている。これからも頑張れ」

「はい」


 ビクターさんは、戦闘で気になった点を毎回こうして指摘してくれる。

 そのおかげで、俺達は毎回どこが悪かったのか又は、良かったのか知る事が出来て大助かりしていた。


「荒削りな所もあるし拙い部分も見られる。だが、つい最近まで戦闘した事の無い人間にしては十分上出来だ。このまま、経験を積めば今より何倍も強くなれる。気負わず頑張れよ!」

「「「「はい!!」」」」

「よし、何度か戦闘してお前らも疲れただろ。他の奴等も戻ってるだろうし俺達も戻ろう」


 会話からもわかる様に実は、ダンジョンには基本4人1組のチームを組んで入っていた。

 その為、現在は将吾や亮介達他のクラスメイトとは別れて行動している。

 とは言え、1チーム最低1人はビクターさんの部下の方がついて居るので心配はあまりしていない。


「お前達、新しいスキルや魔道具の使い心地はどうだ?戦闘を見る限りは、上手く使ってる様にみえるが」

「さっき、ビクターさんが言った通り何とか使えてますよ」

「えぇ、この弓の力を全て完璧に使えてるとは言えませんけど良い感じだとは思います」


 そう、ビクターさんの少し前の指摘や質問にある通り実は俺達は、ダンジョン遠征に来る前に国王からスキルオーブや魔道具を貰っていたのだ。

 俺の場合だと、魔剣と魔力制御のスキルオーブ。

 魔剣は、何でも魔力の貯蔵と増幅、解放の効果があるとか。

 1度どんなモノか試してみたがビームだった。

 某最強の聖剣エク○カリバーだった。

 俺の魔力量が少ないから威力は目茶苦茶低いものの光属性の魔力を込めたのも相まって完全にあのビームそのものだった。

 そして、魔力制御のスキルオーブは魔法を扱う為に必要で貰った。

 勉学で聞いた話しだが……


「魔法は魔力を制御、操作する事で扱う事が可能です。ですが、制御に誤り魔力が暴走する事があります。そうなると、火属性なら爆発。水属性なら 大量の水で水浸し。風属性なら暴風。土属性なら瓦礫だらけ等になります。そうならない為にも、魔力制御のスキルもしくは、魔力制御効果を持つ魔道具は必要不可欠です。それと、時折暴走すると威力が上がるからわざと暴走させる頭のおかしい者が居ますが大抵失敗して大怪我しますのでくれぐれもマネをしない様に」


 と言っていた。

 その為、俺は現在新しく魔力制御のスキルを覚えている。

 まだまだ、スキルLvが低いので時折危ない事があるがそこは地道に頑張るしかない。

 そして、俺以外だと相沢さんは弓と遠距離を視認する遠視というスキルオーブを貰ったらしい。

 建治は、強腕と剣術のスキルオーブ。

 誠也は、元々戦闘系のスキルを持ってなかったが剣術のスキルオーブに身体能力を上げる魔道具を貰い戦える様になった。

 他のクラスメイト達も、各々自分に合った魔道具やスキルオーブを貰いおかげで、元々戦闘スキルを持っていなかった者も戦える様になり元々戦闘スキルを持っていた者は戦力の底上げが出来た。


「お、出口が見えてきたぞ」


 そんな事を考えてる間に、どうやら出口の近くまでたどり着いた様だ。


 さて、他の皆はどうだったのかな。


 こうして、今日のダンジョンでの訓練は終了した。


 ※※※※※


 ダンジョン訓練を終えた俺達は、ダンジョン近くに建っているここ2週間お世話になっている建物にて食事をとっていた。

 何故、ダンジョン近くに建物が建っているのかだが聞いた所このダンジョンは元々、アストレア王国が管理しているモノらしく騎士団の訓練用に使われているダンジョンで訓練を終えた後の宿泊場所として建てられているのだそうだ。

 そこを、現在俺達も使わせてもらいダンジョン遠征を行う事が出来ていた。


「皆は、今日どうだったんだ?」


 俺は、夕食を食べながら同じテーブルに着いている皆に聞いた。


「そうだな。大して変わらなかったぞ?天之の所と同じで連携とって俺が殴って気を引いて後ろからトドメを刺してもらう。他の奴等は?」


 隣に座る将吾は、その様に話すと他の皆を見る。

 それに続く様に将吾の向かいに座るクラスの女子の1人、芹沢さんが話し出した。


「ウチの所は、まぁ、うん。凄かったよ」

「?何が?」


 芹沢さんの歯切れの悪い様子に将吾が?を浮かべながら話を促す。


「昨日までは、ウチらが基本的に戦ってたんだけど今日は違ってさ。今日は、亮介君が戦ったんだ」

「「あ」」


 その瞬間何となく察した。


「うん。無双してたよ。人間ってあんな事が出来るんだね。私初めて見たよ。抜き手で胴体貫く所。現実で出来るんだね?漫画だけの事かと思ってた。ハハハ」


 瞳から光が抜けた顔で乾いた笑いを漏らす芹沢さんの様子から余程とんでもない光景だったのだと察した。

 それを見て俺と将吾は、亮介へと顔を向ける。


「「おい、何してんだよ超人」」

「あ、うん。僕もやり過ぎたと後悔してますはい」

「てか、何で抜き手なんだよ。お前武器持ってただろ」


 俺は、亮介をジトーとした目で見ながらそう聞いた。

 何せ亮介は、あれだけ武器系のスキルを所持しているのだ。

 その為、亮介も武器を持ってダンジョンに入っていた。

 なのに、話しを聞いてみれば何故か素手で魔物を屠っていたのだ。

 気になってしまうのもしょうがなかろう。


「いやさ、ちょっと漫画で見た数○抜き手って技を真似して形だけは出来てたから魔物で試してみたんだよ。そしたら、あの、出来ちゃいまして」


 どうやら、漫画の技を使ったらしいですね。

 本当に意味がわかりませんねはい。

 てか、数え○き手って前に亮介と神白さんが話しを白熱させてたバトル漫画に出てくる技の1つじゃねえか。


「確か、抜き手を四回に見立てて行ってそれぞれ異なる力を込めて四回目の突きは、どんな防御も貫くんだったか?」

「うん。そんな感じ」

「亮介お前さぁ」

「なんつう技使ってんだよ」

「いや、前に神白さんと話した時に僕も興味が湧いた技だから仕方ないだろ」

「「どこがだよ!?」」


 俺も将吾も、色んな意味で呆れて頭を抱えるしか出来なかった。


「賑やかだねぇ。何か面白い事でもあったのかい?」

「あぁ、宮本さん。ちょっと、超人の事でね。って何作ってんの?」

「これかい?薬だよ。私は、創薬と錬金術のスキルを持ってるからね。予定だと身体能力が向上するのだが、どうだい、飲んでみないかい?」

「あぁ、えぇと、今は、遠慮しとこうかな」


 声が聞こえそちらを向くと何かをコップに注ぎながら混ぜている宮本さんが居た。

 宮本さんの言う通り、創薬と錬金術のスキルを持つなら何かを作るのはおかしくない。

 しかし、コップの中身を薬と言っているが俺にはそれがどう見ても赤黒い色をし発光するスライムにしか見えず答えに困ってしまった。


「所で、緋璃の事を話していたが何か緋璃の面白いエピソードでも話してたのかい?」

「あぁ、この超人が神白さんと話してた漫画の技をダンジョンで完コピしたらしいんだよ」


 将吾が、苦笑いを浮かべながら先程まで話していた技の話しを宮本さんに話す。


「それは、何と言うか、凄いねぇ」


 流石に、宮本さんも答えに困った様でそう返すしかなかった様だ。


「そういやさ、宮本さん。神白さんの事で前にあんだけキレたって事は、神白さんと仲良いんだもんな?」

「そうだね。私は、仲良いと思ってるよ」

「俺も、それは前から見てて思ってるよ。だけど、何が切っ掛けで仲良くなったんかなぁって思って。宮本さん最初の頃は、周りと馴染んでなかったろ」


 将吾の言う通り宮本さんは、入学してから最初の頃は今ほど周りと仲良くしてはいなかった。

 しかし、ある時から周りとも話す様になって今の様に自分から話し掛ける様になったのだ。

 確か、そんな宮本さんと最初に話していたのが神白さんだった筈。

 なので、この話しは俺も少し気になった。


「そうだねぇ。私と緋璃が仲良くなった切っ掛けは」


 宮本さんは、俺達にその切っ掛けを話してくれた。


 ※※※※※


 あれは、私が入学して暫く経った頃だ。

 当時の私は、孤立していた。

 それは、幼少期から大人びた性格をしていたせいで幼稚園から現在まで周りと馴染めず友達と呼べる者が出来なかったから。

 これは、私の親がどちらも所謂理系的な人達だったから私もその血を引いててだからだろう。

 とは言え、別に私は親を恨んでいないよ。

 寧ろ、日夜病に苦しむ人々を救うために薬を開発している両親を私は誇りに思っている。

 そして、私も両親の様な薬剤師になりたいと思っていたから友達等勉学の邪魔だと必要と思っていなかった。

 しかし、そんなある日彼女と出会った。


「ねぇ、もしかして、それって最近アニメとコラボしたドク太郎の限定キーホルダー?」


 突然話し掛けられたので、少し驚いたがそちらを向くと私の鞄に着けていた最近両親が知り合いからわけて貰ったと言ってくれたキーホルダーをキラキラした目で見ている彼女。

 緋璃が居た。


「?あぁ、これの事かい。良く知らないが両親から貰った物だよ」

「少し、少しで良いから見せて!」

「あ、あぁ、良いよ」

「ありがとう!」


 そう言うと彼女は、キーホルダーを貴重品を扱うかの様に触れながら眺め始めた。


「ありがとう!まさか、こんな所で幻の限定キーホルダーを見れるなんて思わなかったよ。ありがとね。知ってると思うけど私は、神白緋璃。貴方は、宮本瀬莉さんだったよね」

「あぁ、そうだね。所で、これはそんなに貴重な物なのかい?」


 私は、彼女の様子からこのキーホルダーがそんなに貴重なのかと少し疑問が浮かび聞いてみた。


「勿論!何せ、最近話題のアニメとコラボして特別に限定一万個作られた限定キーホルダー!先着一万名のみ配布された今や現物を見る事すら叶わない幻のキーホルダーなんだよ!!」

「そ、そうかい」


 どうやら、相当貴重だった様で彼女は鼻息荒く力説してくれた。

 それを見て私は、鞄に仕舞っていたある物を彼女にあげる事にしてみた。


「良ければ、これをあげよう。貰ったは良いが、2つもいらないのでね」

「ま、まさか!?」


 それは、私の鞄に付いてるキーホルダーと同じ物だった。

 実は、両親は1人1つ貰っていてそれをどちらも私にくれていたのだ。

 両親は、キーホルダーを付けるタイプの人でないのでまぁ、仕方ないとはいえ私に2つ渡すのもどうかとあの時は思ったがこうして欲しい人が居たので結果的に良かったと言えよう。


「ほ、本当に」

「良いよ。これも何かの縁だ」


 別に友達になる訳でもないので適切ではない言葉を使ったかなと少し私は思った。

 しかし、次の彼女の言葉で覆された。


「あ、ありがとう!!本当にありがとね。あ、良かったらこれからも時々話そ。折角クラスメイトなのにこれっきり何て悲しいし。と言う訳で私達友達ね」

「わ、私と君が友達?」

「え、うん。嫌、だった?」

「…………嫌、ではないかな」


 不思議と嫌ではなかったので了承すると彼女は安心したのか笑顔を浮かべた。


「そう、良かった。あ、もう遅いね。帰ろっか」

「そうだね」


 その日から緋璃は私と話す様になった。

 放課後やちょっとした休憩時間に雑談や周りであった出来事等々を小話程度に話したりした。

 最初は、初めての友達で戸惑った。

 でも、前まで友達等邪魔と思っていた私だが存外緋璃との時間は楽しく心地良かった。

 そして、緋璃と話す様になって1週間程経ったある日。

 今日は、何を話そうかと緋璃の席に向かうと慌ただしい緋璃の姿が見えたのでどうしたのかと思った。


「どうかしたのかい?」

「あ、瀬莉!実は、今日は前から楽しみにしていた限定特典付きのラノベの発売日なんだ!4時から並ぶらしいから今から全力ダッシュで向かう予定!」

「……そうかい。間に合うと良いね」

「うん!また、明日ね!」


 話せなかったのは残念だが、仕方ないと思い彼女を見送った後私も帰る準備をして学校を後にした。


 そう言えば、参考書や筆記用具で少ないものがあったね。


 私は、手持ちのお金を確認し足りるとわかって帰りに買って帰ろうと思いそのまま近くの書籍店へと足を進めた。


 緋璃は、目当ての本を買えたのだろうか?

 もうそろそろ、予定時刻の4時になるはずだが私より先に出ていたし間に合ってるのかな?

 まぁ、明日にでも聞いてみるとするか。

 きっと、キラキラした目で楽しそうに話してくれるんだろうねぇ。


 そんな事を考えながら目的の書籍店に向かっていると店が見えてきたその時……


「お、可愛い女の子発見!」

「ねぇねぇ1人?俺らと遊ぼうぜ」

「俺ら金あるし退屈させないからさ」


 見るからにガラの悪い男3人組に絡まれてしまった。


 最悪だ。

 折角明日の事を考えて楽しい気分だったのに一気に冷めたよ。


「邪魔だよ。失せたまえ。私は、用事があるから急いでるんだよ」


 こういう輩には、ハッキリと断るのが大切と前に何かで聞いた事がある。

 なので、明確に拒絶するが。


「冷たくすんなよ。ちょっと遊ぶだけだろ」

「そうそう、そこら辺でお茶するだけだからよ」

「用事なんてほっといて楽しもうぜ」


 男達は、私の言葉を聞いても気持ち悪くニヤニヤして離れる様子はなく寧ろ私に近付いてきて1人の男が話しながら私の腕を掴んできた。


「だから、断ると言ってるだろ!離せ!」


 断ってもしつこく迫り強引に腕を掴んできた事に私は、苛立ちながら男達にそう言った。

 しかし、それを聞いた男達が離す筈もなく逆に怒らせる結果になった。


「あんまし調子に乗んなよ女が。黙ってついて来れば良いんだよ」

「あぁ、殴られたくなかったら俺らの言う事を聞くんだな」

「もう面倒だしこのまま連れてこうぜ」


 先程までのニヤニヤとしたふざけた雰囲気から一変しドスの効いた声で脅してくる男達に私は恐怖し周りへ助けを求めた。


「ヒィ!!嫌だ、だ、誰か!」


 しかし、周りを見渡すが夕方の時間帯の為か人通りは疎ら。

 僅かに居る人達は、関わりたくないのか誰も顔を反らすばかり。

 私は、酷く絶望した。

 駄目だと悟り情けなくも涙も出てきた。

 しかし、そんな時助けが現れた。


「ようやく大人しくなったか」

「さっさと連れてって楽しもうぜ」

「ヒヒヒ、久々に朝までパーティゴブァッ!」


 連れ去られそうになった瞬間、突然3人の内の1人が物凄い勢いで突っ込んできた何かに胴体を蹴り飛ばされその勢いのまま吹き飛んでいった。


「は?」

「何が起こった?」

「え」


 吹き飛んでいった男から視線を戻すとそこには、元々居た男の代わりにここに居ない筈の1人の少女が立っていた。


「てめえ、いきなり何しやがる!!」

「連れに手出しやがって!!」

「あ、緋璃?何で、危ないから逃……え」


 私は、緋璃が何で居るのかわからなかったが逃げてほしくて声を出そうとしたが出せなかった。


「てめえも、コイツと一緒に俺らの玩具にしてやるよ」

「泣いても許してやらねぇからな。覚悟しろ」


 何故かって?

 そりゃあ、何せ


「おい、お前ら」

「あ?」

「?」

「私の大切な友達を泣かせやがって。お前らこそ覚悟が出来てるんだろうなぁ」


 これまで私が見た優しい笑顔や楽しそうにキラキラした目をしていた顔からは想像もつかない酷く怒りに染まった顔をしていたのだから。


「連れを偶然倒せたからって調子に乗んなよ」

「俺らが覚悟だ?笑わせんな!」

「避け!…え?」


 男が、緋璃に殴りかかろうとし私は緋璃に避ける様に言おうとした。

 しかし、それは無意味だった。

 何せ、私が何か言う前に緋璃は男の懐に居てカウンターで腹部に肘を打ち込んでいたから。

 男は、それを喰らってあまりの苦しさに声も出せずにその場に踞り動かなくなっていた。

 それを、緋璃は欠片も興味無さそうに無表情に冷めた目で見下ろし残り1人となった私を掴んでいる男に視線を移した。


「今なら見逃してあげるよ。ほら、逃げたら?」

「うるせえ!女如きが、もう絶対許してやらねぇぞ」

「あっそ」


 普通なら、怖くなってもおなしくないドスの効いた男の声なのにそれを向けられた緋璃はどこ吹く風と平然とこちらに向かって歩いて来る。

 それを舐められてると感じたのだろう。

 男は、掴んでいた手を離して緋璃に向かって殴り掛かった。


 しかし


「フッ!」

「ガハッ!」


 あっさりと避けられて側頭部にハイキックを叩き込まれ瞬殺された。


「フゥー……瀬莉大丈夫だった?……瀬莉?」

「……あ、うん。ありがとう。おかげで、助かった」


 私は、自分の見たものが信じられず少し呆然としたが緋璃の声に気付いて慌てて返事を返した。


「良かった無事で。ちょっと、道に迷ってる人に道教えて慌てて本屋に急いでたら瀬莉が絡まれてたから驚いたよ」

「そうだったんだねぇ。…………何で、私の事を助けてくれたんだい?」

「え?友達だからだけど?大切な人を助けるのは普通でしょ?」

「普通、そうか、普通か。……フフフ、アハハハハハハハ!!!!」

「え!?ちょ、瀬莉!?」


 いくら友達だとしても、自分の身に危険が迫ると目に見えてわかれば普通なら誰だって躊躇う。

 なのに緋璃は、家族でもない1週間程度の付き合いの雑談位しかしない私の為に僅かな躊躇いもなく助け出してくれた。

 普通である筈がない。

 しかし、初めて出来た友達に家族と同等かそれ以上に大切に思われている事が私はとても嬉しく感じてしまい久方振りに心の底から笑った。


「所で緋璃、時間は大丈夫なのかい?」

「へ?あああぁぁぁ!!?ヤバい急が「ちょっと良いかな?」え?」


 振り向いた先に居たのは警察。

 ニコニコとしかし決して逃がさないと緋璃の肩を掴んでいた。


「やはり、また君か。通報で女子高生と男が喧嘩してると聞いてまさかと思ったが。これで何件目だい。とりあえず、交番に行こうか」

「いや、待って!まだ、目的の物を買えてないんです!せめて、5分で良いからお願い待って!ねぇ!本当にマジでお願いだから慈悲を!私にお慈悲を~~~!!!嫌あああぁぁぁぁ~~!!!!私の特典付き○○○○があああぁぁぁぁ!!!!」

「君、また何か買いに来てたタイミングなの?運が悪過ぎないかい?とは言え駄目なものは駄目だから交番に行くよ」

「うわ"あ"あ"ぁ"ぁぁぁん!!!!私の○○○○~!!」


 そうして、大号泣しながら緋璃は気絶した男達共々警察に交番へと連行されていった。

 何で警察と顔見知りなのかや何件目等々色々と疑問はあるが取り合えず。


「買い物をすませるか。それと、○○○○だったね。まだあるのかねぇ」


 私は、少し駆け足で書籍店へと向かった。


 後日


 教室で再び大号泣しながら瀬莉に抱き付く緋璃が居たとか。


 ※※※※※


「こんな感じだよ」

「そんな事があったのか」

「だから、あの日泣いてたのか神白さん」

「わかる。買えると思ってたら買えない絶望感は、マジでヤバいからね」


 1人おかしな所に対して同感しているが俺達は、気になってた事が聞けて満足した。


「お前ら明日も早いんだ風呂に入って早く寝ろよ」

「「「「「は~い!!」」」」」


 ビクターさんの声に返事した俺達は、各々動き出していく。

 そして、俺も風呂に行こうとするが入れてたコップの中の水を飲んでしまおうと思い……


「水、水」

「ほら、コップ」

「ありがと。!?ブッーーッ!!?!?!」


 宮本さんに渡された薬を飲んでしまった。

 生温く酸っぱい様な辛い様な何故か甘い様な喉に絡み付く最悪の飲み物だった。

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