第29話 進化
早速進化しようと意気込んだアカリは…………
「あれ?そう言えば、どうやって進化するんだっけ?」
そもそも、進化の仕方がわからない事に気付いた。
「う~~ん……進化しようと頭で念じたりするのかな?それとも、ステータス画面で何か操作したり出来るのかな?」
私は、どうやって進化するのかと頭を悩ませたが特にこれ以外思い付かず一先ず頭の中で進化しようと念じてみる事にする。
「んんん~~!!……あ、何か進化先?が頭の中に浮かんできた」
念じてみればまさかのビンゴ。
うっすらとだが、進化先の候補が脳内に浮かび上がってきた。
しかし、うっすらとな為候補の詳細が明確にわからずこれだけで選ぶのは、気後れしてしまう。
「う~ん……ステータス画面からは何かわからないのかな?」
私は、以前スキルの詳細を見た時の様にステータス画面の進化可能の文字をクリックする様に触れてみる。
すると、画面が変わりに進化先の候補が表示された。
「やった!正解だったみたい。これなら、詳しい詳細がわかる」
────
【デミリッチ】
-説明-
魔法使いがアンデッドに成ろうとし失敗した存在と言われている。
また、高い知能と魔法に対する適正を有している魔物。
────
【鮮血鬼】
-説明-
高い戦闘力と血液の操作に長けた吸血鬼。
鮮血鬼が現れた場所は、鮮血により赤く染まると言い伝えられており人々に恐れられている。
────
【狂血鬼】
-説明-
吸血衝動に呑み込まれ自我を失ったとされる吸血鬼。
高い戦闘力を有し本能のままに殺戮を繰り広げる姿から人々から恐れられている。
────
「Oh~」
表示された説明欄は、見るからにヤバそうな事ばかり書かれていた。
「そもそも、吸血鬼じゃない奴に鮮血なんてヤバい名前に自我喪失とか酷くない?」
アカリは、あまりの酷さに「う~~ん、見間違えかな?」とステータスを閉じたり、目を擦ったり、眉間を解す等何度か繰り返したものの表示が変わる事は無かった。
「変化無しですか。そうですか。ハァ~~」
どうやらこの世界は、とことん私の身を危険へと追い込みたい様である。
救いはないのかなぁ。
無いですか、そうですか。
チクショウ。
私は、顔を手で覆い天を仰いだが暫くして仕方ないと腹を括り現実に向き合う事にする。
「仕方ない。真面目に考えよう」
アカリは、再び詳細から候補を一つずつ見ていく。
「まず、デミリッチだけど……無しかなぁ。魔法の適正って私もう魔法スキル4つあるしデタラメな称号で既に適正バリバリにあるんだよねぇ」
今更ながら考えたら本当におかしいよなぁ私のスキルと称号。
これお詫びのレベル越えてるよマジで。
何考えてんだろ女神様。
けど、結局そのお陰で私は今生きられてるから結果的には助かってるんだけどね。
まぁ、この話は置いといて
「次が、鮮血鬼か。高い戦闘力に血液の操作に長けるって事は今のヴァンパイアが強化される感じかな?ただ、後半の文章が物騒すぎるんだよね。」
後半の文章はともかく、候補としては、先のデミリッチよりは断然こちらの方が魅力的ではある。
まぁ、どちらもバレたら人生終了まっしぐらなのは変わらないけど。
「最後が、狂血鬼……うん。絶対無いわ~~」
そもそも、自我喪失の時点で無し。
ワンチャン吸血衝動を無くせてる私なら耐えれる可能性も無くわないが確実じゃないので試す気が微塵も起きない。
「となると、選ぶのは鮮血鬼かな?」
アカリが最終的に選んだのは鮮血鬼だった。
まぁ、選んだと言うか消去法でこれになったと言えるのだが。
「それじぁ、今度こそ進化してみますか」
私は、進化先を鮮血鬼に選択した。
その瞬間、今まで感じた事のない感覚が全身を襲い私はふらついてしまう。
「な…んだ、これ」
まるで、身体を内側から弄られる様な異様な感覚。
だが、痛み等を感じる事は一切無く寧ろジワジワと身体の奥底から力が湧いてくる。
そんな、不思議な感覚だった。
「フゥ~~」
全身を襲った不思議な感覚はそんな長く続く事は無くほんの数十秒で治まった。
「これって、もう進化が終わったんだよね?」
アカリは、感覚が治まった事から進化が終了したと判断して早速どのように変化したのかステータスを確認する。
「ステータス……おぉ~」
────
名前:アカリ
種族:鮮血鬼
状態:通常
LV:1/20
HP:221/221
MP:235/235
筋力:219
耐久:141
敏捷:228
魔法:196
─スキル─
【鑑定】【収納】【言語理解】
【血液支配Lv3】【吸血】【眷属化Lv2】【索敵Lv5】
【偽装魔法】【火属性魔法Lv3】【水属性魔法Lv3】
【風属性魔法Lv4】【土属性魔法Lv3】【再生Lv3】
【日射耐性Lv5】【状態異常耐性Lv6】
【痛覚耐性Lv2】【霧化】
─称号─
【女神アリシアの加護】【女神アリシアのお詫び】
【Dランク冒険者】
────
「凄い!強くなってる!」
表示されたステータスは、基礎値が全体的に高くなりスキルも軒並みスキルLvが上がっていた。
「と言うか、つい最近上がった再生と取得したばかりの痛覚耐性まで上がるって進化半端ないな。それに、何か新しいスキルも取得してるし」
詳細に物騒すぎる説明が書かれていた為にしぶしぶ選んだものの私は、進化の結果にかなり満足し正直もうあまり気にしていなかった。
「色々スキルLvも上がったし新しく霧化のスキルまで取得したし少し試してみよっと」
アカリは、その後暫くの間スキルの確認を行った。
その確認の結果ほとんどのスキルの性能が上がっていた。
そして、新たなスキルである霧化。
これは、文字通り身体を霧へと変化させるモノで間違いなさそうだ。
「さて、大体確認も出来たし良いかな」
私は、スキルの確認も終わったのでそろそろオーレストの街に向けて出発しようとしたが…………
「あ、そうだ」
その前に、一度収納からサイクロプスの死体を取り出した。
すると、目の前にあの巨体が私が脱出した時と同じうつ伏せの状態で現れる。
「うわ~~コイツ見ると治った筈の手足に無い筈の痛みを感じるよ。それよりも……」
アカリの視線はサイクロプスの背中に向けられており、そこには背中に大きく爪の様なモノで切り裂かれた様な傷跡が見られた。
「この傷、コイツいったい何と戦ったの?」
私が気になったのはこれの事。
怪我の再生や進化の事ですっかり忘れていたが街に戻ったらこうして出せないのでもう一度見ておこうと思っていたのだ。
この傷に気付いたのは脱出してサイクロプスの死体を収納しようとした時。
遭遇した時は、正面の姿しか見えてなかったので気付いた時は本当に驚いた。
「傷自体は既に塞がってるからそんな最近ではないのかな?」
そう言えば、ザックさん達はサイクロプスを見て何で居るんだ的な反応をしていた。
つまりは、本来サイクロプスは別の場所に居る魔物って事だ。
それがこの森に居たって事は、何らかの原因があるって事になる。
例えば、生息域に食べ物が無くなったり縄張り争いに負けて生息域から追い出された等。
「本来この森に居ない事と背中の傷からして縄張り争いに負けてこの森に逃げて来たって事なの?」
爪みたいな跡から推測したら相手もかなりの大きさっぽいんだよなぁ
「巨体で爪を持つ強い魔物ねぇ。……ドラゴンとか?」
この世界には魔物がいる事からわかる様にドラゴンが存在している。
以前資料室で魔物図鑑を読んで知った事だが、この世界ではドラゴンは亜竜、竜、龍の三種類が存在している。
そして、この三種類の種族は魔物の中でも上位に位置する強さを誇る強大な魔物だ。
仮に私の勘通りサイクロプスがドラゴンと戦闘したのならば負けても納得がいく。
「とは言え、図鑑じゃドラゴンは滅多に出現しないって書いてあったんだよなぁ。う~~ん……あぁ~~わからん」
アカリは、頭が回らなくなってきたので推測するのを今は諦めてサイクロプスの死体を収納へと片付ける。
「別に必ず知らないといけない訳じゃないし今はいっか。とりあえず、オーレストに帰ろう」
そうして、アカリは風魔法で浮かび上がり空を飛ぶ。
「それにしても、マジで遠いな」
空へと浮かぶアカリの目には遥か遠くにオーレストの街が見えた。
てか、そもそも脱出した場所が本来サイクロプスと遭遇した時の場所から目測で6、7キロ近く離れてそうな所だったんだよなぁ。
「とりあえず、行くか」
街までの距離に少々へこたれそうになったものの帰らない事にはどうしようも無いので街へ向けてアカリは出発した。
それから、数分程飛んでいた時…………
「~~~っ!!」
「~~!!」
「ん?何か聞こえた様な」
何処かから喧騒音が聞こえてきた様に感じて私は、移動を一旦止めて周囲を見渡す。
すると、森の木々で見えずらいが少し離れた場所で馬車が魔物に襲われているのが見えた。
「見た感じピンチっぽいね。助けるか」
そうして、私は助けに向かうのだった。
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