クラスメイトは異世界転移なのに私は異世界転生

第5話 オーク戦 後半

「あとは、お前を殺ったら終わりだね」

　その様に言った瞬間、オークはこん棒を振り上げながらこちらに向かって走ってきた。

「ブゴォアァ！！」

　私は、その攻撃を眺めながら右横に軽く避ける。

　直後、自身の左横をブオンッ!!!と風切り音を鳴らしながらこん棒が過ぎ去りズガアァンッ!!!と地面を叩き割っていた。

「ブガア！？」

　こん棒が当たったと思っていたのだろう。

　しかし、こん棒を軽く避けた私を見て驚くオークはこん棒を振り下ろした直後の為に動く事が出来ず大きな隙をさらした。

　その隙を私は逃さずオークの懐に潜り込む。

「残念ハズレ、、エアカッター！」

「グガア"ァ"！！」

「おっと、危ない」

　至近距離からのエアカッターを喰らったオークは、モロにダメージを喰らい怯んだ。

　だが、怯んだ様に見えた直後その手に持つこん棒を振り回し直ぐ様攻撃を返してきた。

　しかし、アカリはその攻撃をバックステップでかわす事で回避する。

　動きに慣れてきたのかな？よく見さえすれば避けられるようになってきたよ。

　流石戦闘特化種族の吸血鬼の身体、スペックが凄く高いや。

　にしても、エアカッターを喰らったのにさっきのオーク程ダメージが深くなさそう。

うーん、、何でだろう？

　さっきとの違いは……堅牢か。

　防御力を上げる強化系スキルって所かな？

「まぁ、ダメージが通らない訳じゃないし、このままゴリ押しでもいけるかな？」

　雨垂れ石を穿つって言うしね？

　いくら堅牢を持ってても何度も魔法を喰らえば限界が来るでしょ。

　え？意味が違う？

　根気よく続ける＝ゴリ押しでしょ？

　なら同じだ、細かい事は気にするな。

　てなわけで、アカリは作戦名「雨垂れ戦法」でオークを殺る事に決めた。

　作戦はとても簡単

　1.オークに魔法を放ちます。

　2.1番と同じ所付近に魔法を放ちます。

　3.2番をオークが倒れるまで続けます。

　以上とても簡単なオークの倒し方でした。

　どうだ私の完璧な作戦は！！

　この作戦でオークに挑めばきっと誰でも簡単にオークを倒せる様になるはずだ。

　ふふふ!!!我ながら作戦が完璧過ぎて笑いが止まらないよ。

　え？何だって簡単じゃない？

　はははっ!!気のせい気のせい。

　きっと疲れてそう思っただけだよ。

　まぁ、茶番劇はこの辺でお仕舞いにするとして。

「とりあえず殺ってしまおうかな」

　戦闘の再開は、オークの攻撃が合図となった。

「グブオアァ！！」

「他に攻撃ないのかよ。ハァッ！！」

　既にオークの攻撃に慣れてきたアカリは容易く避け、地面に着いたこん棒を足場にする事でオークの頭部に飛び回し蹴りを放つ。

　うおぉ～！！前世の格闘ゲームの真似で何となくやってみたけど出来たぁ！？

　ついさっきも思ったけど、近接も出来ちゃうとかこの身体マジでスゲー！！

　前世じゃ真似しようと思ってもちっとも出来なかったのに。

　流石戦闘特化種族～～！！！

「ゴブアァ！？」

「よっと」

　地面に着地したアカリが、オークを見ると蹴りはそこそこ効いたのかオークは少し足元がふらつき頭を振っていた。

　おっ防御力高いし、堅牢があるからあまり効かないと思ったけど意外と効いてる？

　アカリは、自身の蹴りが効いたのに内心喜んでいるとその間に蹴りのダメージから回復したのかオークが再び迫ってきているのに気付いた。

「もう回復したんだ早いね。これならどう？、エアカッター！ウォーターボール！」

　私は、近づいてくるのに対してエアカッターとウォーターボールを複数放った。

　仮にこん棒で防ごうにも全てを防ぐ事が出来ずにダメージを与えられる、まさに「雨垂れ戦法」！！

「グブオァ！！グガア"ァ"」

　何発かは、こん棒で防いだが、ほぼ全ての魔法を喰らったオークは、堅牢でも耐えきれず大ダメージを受け地面に膝をつき動けなくなる。

「もう動けなさそうだね。終わらせようか」

　アカリは、オークがもう動けないのがわかり、この戦闘を終わらせようとオークの前に立ち、血液支配を発動する。

　ただし、今度は剣等を作るわけではない。

　今の立ち位置だと女の子から見える為、吸血鬼バレするかもしれないから。

　幸い距離が多少はあるから何をしてるのかわからないはずだが、剣を作れば流石に見えてしまう。

　なら、血液支配で何をするのか。

「ハァッ！！」

　アカリは、血液で手を覆い指先の鋭い擬似的な鉤爪 を作り出す 。

　そして、オークの胸へ抜き手を放ち心臓を貫き破壊した。

「ゴ、ブ、、ア"ァ"」

　心臓を破壊されたオークは、そのまま力尽き地面に倒れ伏した。

「終わった。…疲れたぁ」

　異世界に来て初の戦闘、アカリは見事に白星で飾って見せるのだった。

「うげ～ベタベタする。気持ち悪い、水球」

　オークを倒したアカリは、抜き手で血塗れになった腕を洗う為、水魔法で水球を作りさっさと腕を洗い流していた。

「服が半袖で良かったよ。長袖だったら洒落にならなかっただろうなぁ」

　実は、転生したアカリが着ていた服は、前世の制服とかではなく恐らくこの世界の物と思われる服で、半袖半ズボンの動きやすいラフな格好であった。

　まぁ、変に前世の服だと怪しまれるだろうしねぇ。

「綺麗になったね。さてと、女の子に出てきて良いって言いたいとこだけど、その前に、、偽装魔法」

　え？何で偽装魔法を使うのかだって？

　当たり前でしょ、私吸血鬼だよ？

　まだ、全身は見てないからわかんないけど、外見的には人間とほぼ同じだと思う。

　だけど、決定的に違う所が１つだけあるんだよね。

　それは何か……牙だ！！

　転生した直後から、何となく口の中に違和感はあったんだ。

　それで、ステータスで種族が吸血鬼ってわかって触って確かめたら鋭い牙がはえてたんだよね。

　だから、偽装魔法で牙を隠してバレなくする必要があるんだよ。

　戦闘前に顔合わせたから見られた可能性もあるけど偽装すれば勘違いだったと思うでしょ多分。

「こんなもんかな？とりあえず隠すイメージで使ってみたけど、まぁ発動した感覚はあったから多分出来てるかな？」

　偽装が出来たので私は、女の子が隠れてる場所に出てきて良いと声をかける。

「もう出てきて良いよ～～」

　すると、顔を出しこちらを確認した女の子はトコトコとこちらに歩いてきた。

　そして

「凄いですね！本当にオークを倒されるなんて！私あんな凄い戦い見たの初めてです！！助けてくださり本当にありがとうございました！」

「あ、えっと、うん。どういたしまして？」

　会った直後は、警戒されてたもんだから呼んでも直ぐには出てこないかなと思っていた。

　しかし、そんな事はなく、寧ろ呼んだら直ぐに出てくる上にキラキラした目でコチラを見ながら話し出す。

　怒涛の台詞の波に襲われ逆にアカリが言葉に詰まってしまい余所余所しくなってしまう。

　え！？何でこの子こんなにキラキラした目で私を見てくるの！？

　会った直後は、私の事めっちゃ警戒してたよね！？

というか、私とオークの戦闘もしかして全部見てたの！？

　アカリは、内心困惑しながらも警戒されるよりは良いかと思う事にし、お互いまだ名前を知らないので自己紹介をする。

　まぁ、鑑定すれば名前を見れるけど、流石に勝手に見るのは何か悪い気がするしね。

「助ける事が出来て良かったよ。私の名前は、アカリ貴女の名前は？」

　名前を聞くと女の子は元気に名前を教えてくれた。

「はい！私はアリサって言います！アリサって呼び捨てで良いです」

「そう、ならアリサって呼ぶね」

「はい！」

　その後、アリサと話すと私が向かう街に帰る様で一緒に街に向かうことになり、道中アリサが何でこんな森の奥にいたのか聞いてみた。

　何でもアリサは、冒険者ギルドのハンターに登録していて依頼で薬草採集をしに来ていたらしい。

　だけど、必要な量を採集出来なくていつもより奥まで来てしまい、そこで先程私が殺ったオークに遭遇もはやこれまでって時に私が現れたそうだ。

「本当にあの時は死を覚悟しましたよ」

「私もアリサを見た時は、何でこんな所に！？って驚いたよ本当に」

　本当あの時は驚いたのだ。

　だって、アリサはどう見ても前世の中学1.2年生ぐらいなのだ。

　見た目は、私と違い肩上位の少し癖ッ毛のブラウンの髪の毛に同じ色の綺麗な目。

　身長は私より低い150ぐらいだろうか？

　服装も見た事はないけど町にいる女の子が着てる様な半袖にスカートで半袖から見えてる腕は普通の肌色した細い腕。

　いかにも町娘です。と言われる様な装いで、鑑定しないとステータスやスキルはわからないけど少なくとも見た目はハンターには見えない。

「それを言うなら私だって驚いたんですよ！いきなり空からまるで女神様みたいな綺麗な女の人が降りてきてオークを１人で倒すから隠れてて何て言ってくるんですもん」

　アリサは、私の言った事に反論するかの様にそう言った。

　しかし、私はその言葉に驚き過ぎて上手く反応出来ず困惑のあまり……

「へ？」

　と間抜けな返答をしてしまう。

「ん？どうかしました？」

　私は、アリサの今の言葉に聞き間違いの筈と思いもう一度聞くべく問いかける。

「今なんて？」

「どうかしました？」

「その前」

「オークを１人で倒すから？」

「もうひとつ前」

「えっと、女神様みたいな綺麗な女の人が空から降りてきて？」

「は？」

「へ？」

　女神様みたいな綺麗な女の人？

　誰が？

　もしかしなくても私の事？

「あのアカリさん？どうしたんですか？もしかして私何か失礼な事でも」

「大丈夫、アリサは何もしてないから。だけど、ちょ～～っとだけ待ってて」

　様子がおかしい事に自分が何か失礼な事をしたんじゃないか心配するアリサに大丈夫だと伝え、私は現在歩いてる場所の横。

　空を飛んだ時に見た街に向けて流れている川に近づき覗き込む。

　そこには

「はは……マジか」

　白銀赤目の美少女がいた。

　いや、正確には白銀赤目になった前世の私に似ている少女が困惑顔で映っていたのだった。