第4話 オーク戦 前編
私は、その光景に唖然とした。
そりゃそうだろう?
こんな森の奥に人がそれも女の子が居るなんて想像付くわけないじゃんか。
出来たら逆に怖ええよ!!
驚いて固まったけど私は、直ぐに我にかえりそのまま空を飛び助けに向かった。
え?なんで見ず知らずの相手なのにわざわざ危険を犯してまで助けるのかだって?
バカ野郎!!例え危険だろうが救いを求めてる女の子がいたら助けにいく。
これは世界共通の常識なんだよ!!
そんな常識知らない?
今知っただろ?
喜べ!これで常識になったな!!
あ?その女の子が助ける気も失せるような性格の悪い性悪女だったらどうするのかだって?
そのまま放置して見捨てるけど?
だってどう考えてもそんな奴、今まで散々悪い事してきてるに決まってるじゃん。
因果応報そのまま罪を償ってもらいましょう。
え?言ってる事が矛盾してる?
そんなん知るか!
私がルールだ!!文句あるか!!
まぁ冗談はこれくらいにして、半分は冗談じゃないんだけどね。
本当の所は、ただ助けてあげなきゃって思ってそのまま行動しただけなんだけどさ。
だからそんな大それた理由はないんだよね。
それにさ、いくら吸血鬼になったからって、女の子が殺されそうになってるのを見て見ぬふりして見捨てるほど人間性を捨てるつもりはないからね。
それに、危険を犯してまでって言っても相手は前世じゃ物語でゴブリンやウルフの次くらいに倒される様な魔物のオーク?でしょ?
私には女神様から与えられた力がある。
女神様はこの力なら魔物や人に襲われても『倒せるはず』と言っていた。
だったら、オーク?程度その言葉通り華麗に倒して女の子を救いだして見せようじゃない。
おっと話が大分脱線したね戻ろうか
私が、そんな事を考えてた間に女の子が居る場所の上までたどり着いた。
「良かった。まだ襲われてないね」
女の子は、追われてはいるもののオーク?から襲われる事なく逃げれていた様で安心した。
「って、呑気に安心してる場合じゃないね。早く助けなきゃ。だけどその前に、鑑定」
アカリは、直ぐに助けに入ろうと思ったが、相手の事を何も知らずに突っ込むのは危険かと思い鑑定を発動した。
────
名前:なし
種族:オーク
状態:通常
LV:7/10
HP:120/120
MP:15/15
筋力:145
耐久:127
敏捷:68
魔法:16
─スキル─
【強腕Lv2】【堅牢Lv1】
─称号─
なし
────
「やっぱりオークだったんだね。それにしても、結構強いね。MPや敏捷とか除いたら私よりも上じゃんか。もう一体は」
────
名前:なし
種族:オーク
状態:通常
LV:5/10
HP:98/98
MP:7/7
筋力:102
耐久:98
敏捷:42
魔法:13
─スキル─
【強腕Lv1】
─称号─
なし
────
「こっちはさっきのよりは弱いね。それにしても」
私ってもしかして結構強かったりする?
アカリは、自分のステータスとオークのステータスがレベル差がかなりあるのに少ししか変わらない事に驚いた。
「やっぱり戦闘特化種族の名は伊達じゃないって事なのかな?」
吸血鬼って凄いんだなぁ、種族が違うだけでここまで差が出るなんて、私思わなかったよ。
色々と驚いたが、情報も知れたので、助けに行こうと鑑定を閉じて下を見る。
すると視線の先には、女の子が躓いたのか木を背にして追い詰められそうにって、ええぇぇぇぇぇ!!!??
「ヤバいヤバい!!私のバカ!時間かけすぎた」
アカリは、慌てて急降下して女の子とオークの間に降りたった。
「ふぅ~セーフ!」
「「ブゴォア?」」
「え?誰?」
うん、まぁ、そうなりますよねぇ~
案の定と言うべきか、いきなり空から降りてきた私に対してオークも女の子も私が何者なのか疑問符を浮かべながら言葉を溢していた。
まぁ、オークは言葉ってより鳴き声だけどね?
てか、鳴き声も相まってマジで豚みたいだな。
目の前のオークを倒し始めてもいいけど、それよりも先に女の子を安心させてあげた方が良いよね?
それにこのままだとこの女の子戦いに巻き込まれて怪我するかもだし。
そう思ったアカリは、まずは自分の後ろで今も困惑している女の子を安心させてあげようと思い目を合わせて声をかける。
「もう安心して、助けに来たよ」
「……」
シーーーーーン
私の声に対して反応はなかった。
ん"ん"!!、や、やっぱ信用してないかぁ。そうだよねぇ。わかってた事だけどちょっとショックだなぁ。
だけど、空から降りてきた見ず知らずの相手にいきなり声をかけられたら普通こんな反応だよね。
女の子に信用されてない事に少なからずショックを受けたアカリだが、信用出来ない気持ちもわかるのでしょうがないかと諦めた。
だけど、流石にこれだけは聞いてもらわないとと思いアカリはもう一度声をかける。
「別に無理して信用しなくて良いよ。だけどこれだけは聞いて。私がオークを倒すまでは、木の裏でも良いから見つからない様に隠れてて。変に動かれてオークに狙われても助けてあげられるかわからないから」
「……わかりました」
本当は、私が戦闘をしてる間に逃げて貰う方が良いかもしれない。
だけど、私には2体も同時に相手する様な技術なんて当然ない。
だから、2体のうち片方が逃げている女の子を狙いに行かれたら最悪助けられないこともありえる。
だから、私はその言葉を聞けて安心した。
「うん、ありがと。っ!!向こうも動き出したか」
オーク側から気配がしたので視線を戻すと、こちらに向かってオーク達が迫って来ていた。
「ブゴオォ!!」
「ブゴァ!!」
「貴女は隠れてて」
「……はい」
「それじゃあ、殺りますか」
女の子がちゃんと隠れたのを確認した私は、目の前のオークを倒すべく駆け出した。
戦闘を開始したアカリは、まずオークの意識を自分だけに集めるために自分から近づき注目させた。
そうする事で女の子の方にオークが向かう危険が少しでも減らせるからだ。
「まずは小手調べに、エアカッター!」
私は、近づきながら小手調べと私に注目させる目的でエアカッターをレベルが低い方のオークへ放った。
「ブガア"ァ"!?」
ステータスを見た際に防御力が高かったので効くのか心配したが、当てたエアカッターはオークへダメージを与えていた。
「よし、魔法はしっかり効くね。だったらこれならどう?ウォーターボール!」
私は、更にダメージを与えるべく水魔法で4つの水の塊を作り出し放った。
しかし
「ブグア"ァ"!!」
「うっそでしょ!?こん棒で魔法砕きやがったコイツ!野球じゃねえんだぞ!?そのままデッドボールになっててよ」
放った水の塊は、確かにぶち当たった。
だが、喰らったらダメージを受けると理解したのかオークは手に持っていた岩のこん棒を振り下ろし2つの水の塊を粉砕したのだ。
その事に驚き思わず悪態をついたが、直ぐ近くにもう一体のオークが自分の近くでこん棒を振りかざしているのを見て我にかえる。
「グオアァ!!」
「危な!!」
咄嗟に後ろへ下がり避けた私は、眼前近くですり抜けていったこん棒に肝を冷やした。
危ねぇ!?危うくこん棒を喰う所だったよ。
このこん棒だけは絶対に喰らいたくないからね。
アカリがこん棒をここまで警戒するのは、オークの持つ強腕のスキルにあった。
このスキル自体どの様な効果を持つのかその詳細を見ないとわからないが、その名前とオークの筋力の高さから強化系のスキルかな?とアカリは予想していた。
実際その予想は正しく強腕のスキルは一時的に腕力を強化するスキルだ。
その様なスキルが、素の腕力が高いオークの力と合わさればその一撃は格段に高くなる。
結果、先ほどアカリを狙った一撃は地面を砕きこん棒の頭が地面に抉り込む結果を生み出した。
ヒョエェェェ!!??なんつう破壊力してんの!?こんなの喰らったら身体が潰されて死んじゃうって!!
転生1日目で吸血鬼肉のミンチになるなんて死んでもヤダよ!!
直ぐ様バックステップで距離を取ったアカリは一旦落ち着く為に深呼吸をする。
「すう~ふう~~、良し!」
落ち着けたアカリは、目の前のオークを警戒しながらどうやって殺るか考える。
一番早いのは火魔法で焼き殺す事だけど、ここ森だしね?
流石に森の中で火を扱う様な馬鹿な事はやれないからなぁ、延焼して森を焼き尽くす未来が見えるよ。
となると、堅実に1体づつ殺るのが確実かな?
レベルが高い方の奴は少し厄介だからダメージを与えた低い方から魔法も使って速やかに殺るのが良いかな?
アカリは、「ん~、こんなんかなぁ?」と大まかに殺る手順を決め戦闘を再開した。
「悪いけどお前の相手は後からな!!」
目の前のレベルが高い方のオークと自分の間の地面へ風魔法を叩き付け目眩まし代わりの土煙を生み出してその場から離れる。
「ブゴオォ!?」
背後で困惑しているオークの声に目眩ましが上手くいった事に「よし!」と思いながら、ダメージを負っているオークの方へ近づいて行く。
「ブガアァ!!」
近づいて来たのに気付いたオークは、こん棒をアカリへ振り下ろそうとする。
しかし
「グガア"ァ"ッ!!」
「動きが元々遅いからね。冷静に対処すれば意外と阻止できるもんだね」
振り下ろされるより速くアカリは、多くのエアカッターをオークに向けて放っていた。
それにより、全身を切り裂かれたオークはこん棒を手から落とし膝をつく様に地面に倒れる。
その隙にアカリは、オークの背後に回り込みトドメを刺すべくあるスキルを発動する。
そのスキルは【血液支配】
スキルを発動したアカリは、自らの血液から1本の剣を生み出しその手に握る。
「ハァッ!!」
剣を握り締めたアカリは、オークの心臓へと渾身の突きを放ち、心臓もろとも深々とその身体へと剣を突き刺した。
「ブゴォ"ア"」
そして確実に殺すべく抉る様に剣を抜かれたオークは完全に心臓を破壊され力尽き地面へと倒れ伏した。
「これで、1体目」
地面に倒れるオークを見て確実に殺した事をアカリは確認した。
「あとは、お前を殺ったら終わりだね」
アカリは、土煙のはれたその場でこちらを睨んでいるもう1体のオークに対してそう言った。
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