第4話 骸と孤独

 そして、16歳になった彼に、異変が起きる。




「う…うわぁぁぁ!!」




 彼の心臓は、突如として光りだした。




「な…何だこれは?」




光は10秒程で収まった。




「ん?な…何だったんだ…今の。」




 しかし、人を見た瞬間突如異変に気づく。




「ん?こ…心が見える!見えるぞ!何なんだ。」




 少女もその様子を見ていた。




「ふーん、凄いじゃん。」




「いや、待て…。操れるぞ!これは、もしや…。」




 さっきまで、真顔だった少女がいきなり泣き始めた。




「ひっ…ひっ…。や…やめてよ。」




「分かった。分かった。今元に戻す。」




 泣いていた少女は、真顔に戻った。




「すっ…すげぇー!なんだコレ!」




 その時から俺は、【能力】に目覚めた。


 すっかり生活が変わった。人の心を操れるので、最初はコントロールできなかったが、今では、もう騙して、人の物を奪ったり、少しいたずらしたりできるようになっていた。


 そのため、どんどん階層は上がり権力も大きくなっていき…少尉となった。




─現在─


 目の前で9番が白目をむいて、倒れている。

 その、華奢な体は輝きを失っていた。


「フッハッハッ!」


「だっ、誰だ!」


「悔しかったら、谷底の城までこい。そしたら、何かがわかるぞ…。ま…まぁ助かるかはわからんがな!ふっはっはっはっはっはっはっっ!」


「く…くそっ!なにが…何が原因なんだ!なにか…。なにか手立てはないのか!」


「いや、あります!あなたが、敵のアジトに乗り込んで…。そうすれば何かが見えてくるかもしれません!」




 7番は言った。


「いや、し…死んでいる?と思う。恐らくだが、も…もう…。……………………。」


「え…。う…うそだろ…。そ…そんな…ぅわけが!そんなわけが…。」


「8番。諦めも肝心だ。コイツはもう助からない。」


「いや、助かる!俺が敵の所に行く!」


「おい、もう諦めろ!助かる保証なんかない。むしろ、危険にさらされるだけだ!」


「あ…、諦めるなんて!そんな…そんなことっ!できるわけないじゃないか!な…なんで、そんなに吹っ切れられるんだよ!そんな、固定概念で解決されるようなやつじゃないっ!こ…こいつはっ…!」




《8番くん!無茶しないでよ!あんたの……に私は、……てるんだから!》




「そ…。そんな。やつじゃ…。」


「これが、現実なんだ!8番!目を覚ませ!」




 8番は、覚悟を決めたような顔で立ち上がり、歩き出した。


そして…




「お…。俺はっ!行くぞっ!たとえこの身が灰になろうと、コイツだけはっ!助けなくちゃいけないんだ!絶対に絶対に絶対に絶対に絶対に絶対に絶対にぜぇーーーっったいに!!」


「私も、行きます!」




7番は呆れたような顔で、




「もういい!俺は行かんぞ!」




「別にいい!俺のこの力があれば!」




ラシード副王妃が、何か思いついたように、




「家で飼っている風の精霊がいます!その精霊に連れて行ってもらいましょう!」


「わかりました!そうしましょう!」




 副王妃が、笛を吹くと前の方から何やら光らしきものが迫ってくる。


 風に吹かれてあっという間に、宙に浮いた。


 そして、地下から地上にワープした。


「ワープもできるんですかー?」


「いいえ、これはアイテムです!」


「すげぇー!」


「谷底といったら、この近くにはありません。もう少し、時間がかかります!」


「スッスゲェー!地上に出たの初めてだー!太陽ってこんな感じなんだ!想像より眩しいなー!うわっ!草が生えてる!綺麗な緑だなー!うわっ!牛ってこんな感じの動物なんだー!すげぇー!あっ!海もある!ほんとに青色なんだー!」




 小さい頃から、地上に出た事がなかった俺はその違いに驚いた。草や木、花も咲いている。それから、岩山、火山など、見たことないものばかりだった。




「雄大な自然。豊かな空気。スーーーッ。ハァーー。空気がきれいー!」


「フッフッ!私はうまれた時からあるのが当たり前だったので、環境が素晴らしいことなど気が付きませんでしたが、改めて、地下から出ると新鮮な空気を感じます!」


「だ…大丈夫なんですか?奴隷の仕事置いて来ちゃいましたけど?」


「私が、全奴隷を解放するようにお願いをしていますから、大丈夫です!」


「え…い…いつの間に!」


「副王妃ですから、これぐらいのことは出来ます!」


「ふーん。ってあれっ!アルパカじゃないですか!」


「なんで知ってるんです?」




8番が得意気な顔で、




「7番が、教えてくれたんです!地上のこと。海のこと。太陽のこと。色んなことを教えてもらいました。」




副王妃が笑顔で、




「仲いいんですね!」




8番が頬を赤らめながら、




「い…いや、お…教えてもらっただけで、仲がいいとかそういう事では…。」


「そうですか?私には二人とも、とても仲がいいように見えますよ!」


「そ…そうかな?あっ!見えてきましたね!例の城。」


「城というよりダンジョンのようにもみえますが…。ここでおりますね!」




地に降り立った。


精霊は言った。




「ピッパパーパ。パピロパピパーツ。パリッポパリパリパロピ。パロ!」




8番は気難しそうに、




「な…なんて言ってるんですか?」




「バイバーイって行っているみたいです!」




「え………。」


「バイバーイ!」


「あ…。じ…じゃーねーー!あは…あは…あは…。」




8番は、再び城に向き直り、




「よし!行くかっ!」




─end─

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