第2話 絶望と希望
俺は、生まれた頃から体も弱く施設に入れられた。その施設は、想像していたより楽園のようで、みんな仲良く暮らしていた。僕らには、それぞれ番号がつけられ、僕は8番だった。
そして、同じグループになった7番。彼はとても生真面目な男でふざけることなどなく、いつもルールに厳しかった。だがなぜ来たのかは分かっていない。9番。彼女は、身体能力には定評があった。とても元気な女の子で、俺と二人でいつもふざけていた。この世界の秩序によって施設に入れられたと教官から聞いているが、真相は闇の中だ。
だが…つい最近急にシステムがかわったらしく、俺は強制的に働かされるようになった。
要は、奴隷的な扱いを受けるようになったということだ。
何も…見えない、どうなっているんだ。俺は、死んだのか?
「おい、お前の望みはなんだ。」
「え?」
「あー、まだ分かんないの?僕が、神様が拾ってあげたんだよ。」
「んー、なんか死なせるのもったいねぇなーと思って、連れてきたんだよ。僕の世界に。」
(未だにこいつの言うことがイマイチ理解できない。)
「君が、すぐにでも戻りたいと願えば、戻ることができる。しかし、そのまま戻っても恐らくまた死んでしまうだろう。そこで、提案だ!この僕と一体化すればそれ相応の力は手に入れられる。だが、そのかわり、僕と入れ替われるのはほんの数秒だ。しかも、入れ替わるには、敵を10秒目視しなければならない。この条件に君が賛成するなら…。」
「賛成だ!」
(何が何だか分からない、でも今はこの状況を打破する以外に方法はない。)
「お…おう、そうか。そうと決まれば準備を始めよう。」
俺の体が真っ赤なオーラを放っている。辺りは、ぐるぐる渦を巻いている。目が回りそうだ。そして、俺の体の中心へと光が集まっていく。色のない絵の具に色がついたようにこの世界は虹色に輝いた。
と同時に、体が温かくなった。どうやら、俺の体内に刷り込まれたらしい。
「さてと、行くか!」
ハモンドと副王妃が対峙している。
「…なんで…8番さんを殺したの?なんで、なんで……。」
これでもかと涙が溢れ出す。私が、上でずっと眺めている間に世界は変わりに変わっていっていた。
8番はまだ動かない。
「動いてよ…動いて…8番さん…。」
ひくひくと泣くことしかできない。私には力がない。
「力がほしい…誰かを守れるだけの力が…。いつも…いつも…いつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつも!!!!!!!…………………………………たしはっ、わたしは!!!!!!誰の役にも立てない。結局は、人をっ!人を困らせる。何を求め、何を信じて生きればいいの!!こんな私でも、何もなくても…立ち向かって…死んでいくしかないの?考えろ!考えるんだ!なにか策が…。ん?」
いつの間にか副王妃の前に9番がいた。その姿はまるで虎のように勇ましく、怒りに満ちているようにみえた。でも違った、彼女は至って冷静だ。この状況で、仲間が死んだというのにとても落ち着いていた。
「落ち着いて。お姉さん。自分を攻めたくなる気持ちもわかる。でも、安心して。彼、そんなに簡単に死ぬような男じゃない。だから、いつか目を覚ます。その時までに倒す。」
「でっっでも!あいつは並の強さじゃない。」
「私は、絶対に逃げないってきめたんです!グループに入ったときから、まるで友達や家族みたいに優しく接してくれた。私は、それが嬉しくて、だから、きっとその恩を返したいっていうか後悔は絶対したくない。だから、立ち向かわなきゃいけないんです。」
「9番さん…。」
「大丈夫です。私強いので。」
「ああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」
真っ先に地を蹴った。後先なんて考えていない。ただただ拳を振りかざした。
ボンッ!!
「うっ!…まぁまぁやるな。」
少しは効いているようだった。が、それもつかの間!
「ゔ、やるわね!」
どんどんどん拳を打ち込んでいく。一発…また一発。
バン!…バン!
「あああああああ!!」
当たった!と思ったのもつかの間!右の脇腹に蹴りを入れられる。
「ゔあぁぁぁぁ!!」
ハモンドに首根っこを掴まれる。
「しねぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!」
ドッカーン!!!!
大きな爆発が起きた。辺りの地面は大きく揺れ壁は崩れ、おびただしい量の煙で何も見えない。
「ああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」
「フッフッフッフッフッフッフッフッフッフッフッフッフッフッフッハァッハッハッハ!!!!!!」
「やったぞ!!やったぞやったぞやったぞやったぞやったぞやったぞぉぉぉぉ!!!!!!!!!」
煙が解けた。視界がひらけた。何も見えない、なにも。
「私が追い求めていた理想郷を完成させるのだ!!今日こそ、今日がその日になりそうだ!!」
「奴の息も姿もなくなったなあ。さあ、始め……………………ブハッ!な…な…なん…だと。」
「はー………、馬鹿なやつね。そんな簡単にやられるわけないでしょ?私はぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
脇の下で拳を構える。ハモンドも動揺しているが攻撃の準備をする。……そして。静かな笑みを浮かべた。
「騎士たちよ!いけぇぇぇぇ!!!!!!!」
剣を持った騎士が攻めてくる。
シュッ!シュッ!軽やかに避けていく。
「そんな魂もない攻撃じゃ、私を倒せやしないよ!」
「はぁぁぁぁ!!!!てい!はぁ!」
確実に敵を仕留めていく。その身体能力の高さは、生まれつきの特殊能力など関係ない。
ただのパンチだ。ただの蹴りだ。でも、特殊能力のある鍛え込まれた騎士が、どんどん…どんどん…やられていく。ハモンドは唖然としていた。なぜなら、無能力者が能力者を上回るなど前例がない。
「はぁ、はぁ。倒せた。」
(どうしよう、完全に息切れしてしまっている。)
「やぁ、よく頑張ったなぁ。だいぶ息が切れてきたんじゃないのか?」
「う…うるさいな!ゔ…うわぁぁぁぁぁぁ!!!!な…なにをした!?」
だれかに、心臓を触られているような感覚だ。とても気持ちが悪い。
「いやぁ、ちょっと面倒なんでね。心臓ごと潰させてもらうよ。」
「や、やめろぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!」
その時、小さな影が動いた!
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