第44話 騎士団と魔法師団
攻撃の要が魔法師団とするなら、騎士団は防衛の要だ。
魔法師団が集中して夢幻亀に攻撃を仕掛けられるように、騎士団はそれをサポートする役割を担う予定だった。
ただ、夢幻亀に魔法攻撃が効かないという情報から攻撃役に変更となった騎士団は多い。
それでも変わらずに防衛を任せられているのが白薔薇騎士団だ。
「シロナ様。反政府組織『霧の使徒』の存在を確認しました」
「やはり出たか。──我々は、その者達の鎮圧化に向かうぞ」
「はっ!」
白薔薇騎士団の団長シロナは細剣を抜いた。
「あんな巨大な化物を相手にするよりも人間の方が気楽で助かるね。あの亀と違って簡単に斬れそうだ」
白薔薇騎士団は騎士団の中でも特に対人戦を得意とした集団である。
攻撃力は決して高くないが、技術が他の騎士団に比べてズバ抜けて良い者が集められているのだ。
そのため、今回のような反政府組織を鎮圧化させるといった場面で特に活躍が期待される。
そして、白薔薇騎士団の様子を見た第1魔法師団の団長ローレンスは笑った。
「上品な騎士団の雰囲気に似合わず、血の気が多いねぇ」
「ローレンス様、あと10分で大型魔法陣の準備が終わるそうです」
現在、第1魔法師団の団員30名が大型魔法陣の準備に取り掛かっていた。
進捗を聞いたローレンスはニヤリとした表情を浮かべた。
「よし、じゃあ後5分で何とかしろと伝えて来い。あんな攻撃見せられたらこっちもお返ししてやるしかねえだろ」
「し、しかし……5分は速すぎるのではないかと」
「敵は思った以上に頑丈だ。手遅れになって王都リードルフが夢幻亀にめちゃくちゃにされる可能性は決して低くないんだぜ?」
「わ、分かりました! 5分で準備するよう伝えて来ます!」
「おう。頼んだぞ」
ローレンスの部下は準備中の大型魔法陣のもとへ急いだ。
現代魔法において、最も威力の高い魔法は第十位階に指定される魔法である。
そして第十位階の魔法を放つには大型魔法陣が必要であり、詠唱できるのはラスデア国内でローレンスただ一人であった。
「さて、俺も5分で魔力溜めておかねえとな。人間族が放てる最高火力を夢幻亀に見せてやるよ。それでも魔法が効かねえってなったら……ははっ、ラスデアは滅ぶだろうな」
◇
夢幻亀の足元で物理攻撃を加え続ける赤龍騎士団。
彼らは白薔薇騎士団と対称的で技術は低いが、攻撃力は高い──対魔物のスペシャリスト達だ。
「テメェら! 夢幻亀の足をぶっ壊せ! 俺達の役目は弱点を狙う土台を作ることだ!」
赤龍騎士団の団長グレンは声を張り上げた。
「「「「うおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉ!!!!」」」」
団員達はそれに鼓舞され、雄叫びを上げた。
「龍殺しの一撃ッ!」
グレンは大剣を振り回し、夢幻亀に何度も大技を仕掛けている。
──が、何度も弾かれていた。
力でねじ伏せてきたグレンがこんな敵と戦うのは初めてだった。
「なんつゥー硬さしてんだよコイツはァッ!」
あまりの硬さに激怒しながら、グレンは諦めず大剣を振り続ける。
「うわあああああぁぁぁっ!」
「止まれよおおおぉぉぉっ!」
しかし、夢幻亀もかなりゆっくりだが歩き続けている。
ただ歩くという行為だが、かなり有効な攻撃手段だった。
ゆっくりと降りてくる足の裏。
100mを優に超える足の裏から逃げ遅れる騎士も存在した。
その者達の悲鳴が周囲に響く。
踏みつぶされる。
そう思い、同じ騎士団の人間は視線を逸らした。
──が、そこにアレクシアが現れた。
『《魔力障壁》』
アレクシアは夢幻亀の足を止めていた。
もうダメだ、と絶望していた騎士達は突然現れた少女に驚いていた。
間に合ったのは上空から戦況を眺めていたからだった。
しかし、夢幻亀の足を止めるために出力される魔力はかなりの量だ。
少しの間止めるだけでも精一杯だった。
アレクシアは苦しそうな表所を浮かべたまま、必死に耐えていた。
「バカッ! 何やってんだッ! その隙に早く逃げろ!」
「「は、はいっ!」」
騎士達はすぐさま逃げ出した。
それを確認したアレクシアは《魔力障壁》を解除し、再び上空へ浮かんでいく。
「なんだあの少女は……。魔法師団の制服は着ていない……。冒険者か? ……いや、そんなことはどうでもいい。あんな奴が味方にいてくれる事実だけで十分だ」
グレンはすぐさま思考を切り替え、夢幻亀への攻撃を再開した。
「命懸けで国守るんだろうが! 家族や友人を守れるのはテメェらだけなんだぞ! もっと気合入れろォッ!」
「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!!!!!!」」」」
アレクシアに介入のおかげで、赤龍騎士団の士気は更に高まった。
そして、上空へ浮かんだアレクシアは考える。
(こんな風に守っていてはすぐに限界が来る……。だから、今すぐに夢幻亀に少しでもダメージを与える必要があるわ)
そこでアレクシアはハッ、と攻撃手段を思いついた。
(あの発射口……魔力が込められていたわ。あそこを攻撃すれば夢幻亀にダメージを与えられるかもしれない)
そう考え、アレクシアは夢幻亀の甲羅へ移動するのだった。
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