チョーカー型VRと『IUO』
希望の扉は閉ざされ、俺は今その扉から最も遠い防音室に連行されていた。
不思議な話だ。会社の金を使った訳でも、借金した訳でもなく、自分のポケットマネーを溶かしただけでお説教だぜ?
「お話の続きといきましょうか」
俺はヘッドロックを決められて、真っ赤になった顔を元に戻す為にタップし続けてたが、感情が一切込められてない声と共に投擲されてクッションや枕に頭から埋もれる。
しかし、流石特注の
「で、合計で幾ら溶かしたんです?例の部品とやらで数千兆円、それよりも高額な箱とやらの金額をさあ!早く!」
「……一京と数兆円です。いや、でもね?無駄な浪費って訳じゃないんだよ!ちゃんとした計画の元に──」
埋もれたままの籠った声で説明するが、全てを言い終わる前に「スッパーン」という音と共に尻に若干の衝撃が伝わる。どうやらいつものハリセンで
いくらハリセンと言えど、凛に本気で叩かれれば骨が砕けるので加減はされているみたい。
「言い訳は以上でしょうか?」
「くそっ。何でこのタイミングなんだよぉ……」
俺は古代から伝わる諺のような情けない状態に、最大目標達成寸前の他人による暴露で泣きそうになっていた。いや、まあ自業自得ではあるんだけどさぁ…。
「あと、あと一週間で良いんだ。何も聞かずに見逃してもらえませんか?」
「駄目です。そう言って隠す時ほど何か企んでるんですから!何年貴方に付き従ってるとお思いですか?白状して下さい」
「…………きねんび。記念日だよ。俺が凛と、いや、俺が凛を作って今日から七日後は丁度七百年。製作者が機械知性相手に誕生日を祝う変わり者なんて俺ぐらいなもんだが、俺をこの歳まで支えてくれる最高の伴侶なんだ、手が込むのも当然だろ?」
……嗚呼、言ってしまった。超ッ恥ずかしい!穴があったらって…もう埋まってたわwww。本当ならもっと最高のシチュエーションと雰囲気も作って受け取ってもらうはずだったのにィ!!人の夢と書いて儚いってか?
俺が"変わり者"ってのは主に三つくらい理由がある。
一つ目は、正確な誕生日を知ってる事。普通の機械知性の子たちはストッパーの役割を持っている。それは人類が機械知性の、機械知性が人類の暴挙を止めるのが目的だ。その為、具体的な型番と初期設定を特定されぬよう秘匿されるのだ。
因みに人類も機械知性に対抗する為の兵器やらを秘匿している。相手側につく変わり者はどちらも一定数いるけど。
二つ目は、長年同一個体の機械知性と共にいる事。大抵は百年もすれば役目を引き継いで世代交代するか、人の方から別れを告げる者が多い。偶に俺と似たような変わり者が居て、同一個体を愛し続ける事もあるが、六百年もすれば人は魂や精神が擦り切れて死ぬ。
当然だが、機械知性にも相手を選ぶ権利や離れる権利があるので、ダッチワイフなどのそういう性的な知性体以外に交渉無しで乱暴すると一発アウトです。
つまり、見限られる事が存在してるんですよねぇ〜。何だかんだで凛は優しいのだ。
最年長は千二百歳で、俺は七日後に丁度千歳を迎えるぞ☆
火星にも移住してない古代から比べると年齢は十分の一ぐらいが目安かな?長生きの秘訣はやはり精神年齢を如何に子供のまま保つかだそうだ。
三つ目は、単純でこの時代に合わせた高度な機械知性を生み出せる人類が極ごく稀な存在だという事。普通、機械知性は機械知性が生み出すのが当たり前だしな。
数多く存在する星間国家の内数百国に数人居れば多い方と言われている。現在は俺含め全宙域に三人しか居ない。
隠匿は全国家と機械知性の両方から袋叩きの刑だぞ☆
「そういう台詞は面と向かって言ってくれませんと、感動も何もあったもんじゃないですよ」
「あのねぇ……。俺もそうしたいのは山々なんだよ?でもね?予想以上に上手くハマっててびくともしないの。お願い引っ張って〜」
「 」
「無視しないで?頭に血が上ってきてて結構切実なの」
その後、お仕置きとして三十分放置されてグロッキーになっている所を無事レスキューされましたとさ。
昼になるより少し早く用意された昼食。唐揚げ丼に油淋鶏に豆腐のさっぱりスープという、肉・肉・ある意味肉のガッツリ料理。野菜から得られるモノなぞ栄養剤で補えば問題ない。好きなだけ食えるって最高だね。
よくある星間国家のイメージだと料理はフードカートリッジから出来る謎の食い物って感じだろう。実際そうだけど、この企業は違う。実際に飼育されて加工された超高級食が出されるのである!!美味しい!!!
感想擬きはこれぐらいにして、そろそろ昼になっちゃうから準備しないとね。
チョーカー型VRを丁寧に装着してSWKSベッドのリクライニング機能を活かして寝心地の良い角度を取る。これで後は起動ワードとゲーム名を呟けば意識は落ちてゲームの世界へってな感じだ。
「いよいよかぁ。実際に苦労したのは俺じゃないけど感慨深いものがあるなぁ」
「そうですね。そう感じているのであれば少しはあの娘たちに還元してあげても良いのでは?」
"あの娘たち"とはゲームを管理している機械知性の事を指す。俺が生み出した娘たちではあるが、公平を期す為に他の機械知性の手も入ってる。
「え?やだけど?前例作ったら引き摺るじゃん」
「あの娘たちが可哀想でなりませんね」
俺の能力のせいでバグやらバランス調整が大変なんだと直談判された事もあった。俺以外にも能力持ちは一定数いるんだけど、一番のバランスブレイカーは俺みたい。
「今回はどうすんの?」
「前回は参加しなかった事に後悔しましたからね。今回は最初から参加しますよ」
前回っても二百年かそこらなんだが。
「なら楽しみが倍になるな!」
「私の苦労は増えますけどね」
素直じゃないなぁ。まあ、そこも含めて好きなんだけどね。
隣に並んで寝転んだ凛から受け取ったケーブルをVRに接続する。
「In 『
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後書き
カクヨムでは初めましてです。
作者の
特に大した事ではないんですが、近況ノートの方にとあるサイトを紹介してますので、覗いて体験してみて下さい。b(・ω・)d
一般の方は夢と妄想が広がリング、小説家の方は想像と創造が捗リングな内容になってるはず!
あと、自分で自分に飯テロしてて書いている途中でめっちゃお腹空いてましたwww
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