嬶殿下の凛様!
「おっはよー!!今日も一日やらかすぞ!」
太陽光を再現し時間と共に変化するライトに照らされ、俺は元気よく朝の挨拶と現在の心境を叫ぶ。
「絶対に止めて下さい。迷惑です。貴方は後処理をする方の気持ちも考えた上で行動するべきです」
「冷たい事言うなよぉ〜、なぁ凛!で?今日の予定ってどうなってんの?」
「はぁ〜……。貴方のその無駄に溢れる元気と自信は何処から出てくるんでしょうね。言わなくて結構ですよ?内容が空っぽなのは明白なので」
ベッド脇に立つ黒髪の超絶美人から呆れを含んだお叱りの言葉を頂戴する。透明感のある黒い瞳は見ていると吸い込まれそうになるが、現在は圧倒的なジト目で半分ほど隠れてしまっている。
「はっはっは!あんな楽しくも面白くもない事を頭に記憶してるなんて容量の無駄遣いだ。あんな胡散臭い顔してる老害共の相手をしてやってる上に技術提供までやってんだから、顔と名前と予定を覚えてない事ぐらいどってことないだろ」
「トップがそれでは問題あるから忠告しているのですが?」
「だから、俺はトップに立った覚えはないって言ってんだろぉ?何度目の遣り取りだよコレ。俺は他人が困ってたり驚いてたりする姿を見るのが楽しいからこの職業やってんの!
文字通りの天職だと思ってるけどさ」
俺の職業は簡単に言うと所謂ゲーム制作会社のエンジニアって感じだ。具体的に言うとゲームに限らず機械系全般ってなるけど。
そんな俺はある特殊な能力を持ってるんだが、メリットもデメリットも、んでもって厄介事を引きつける能力も非っ常〜に高い。
「さ、早く支度して下さい。朝食の時間が無くなってしまいますよ」
「起きるの邪魔したの凛なのにひどない?」
「そうですか?なら最高級鮭茶漬けは私が食べてしまいますね」
「バッカ!それを早く言え!!待ってろよ俺の朝食ぅ!!!」
食堂で用意されていた鮭茶漬けはダシ用にと丼が二つあり両方に切り身が二つも入ってて最高に美味しかった。
その後にあった◯◯国の大統領だとか、△△国の国家研究所団体との会話内容は全て凛にほっぽり投げ、俺は椅子に深く腰掛け全力で脱力しながら、ピクニックに出掛けそうな気分でパックコーヒーを数本空にした。
「神威さん、新作のVR機器出来ましたよ!」
「おお!マジで!?」
なっっがい会議終わりの疲れた心に清涼剤に匹敵する情報が飛び込んできた。因みに俺の名前は『
「マジです、マジです。いや〜、今回のは苦労しましたよ。反動の為とはいえ能力をセーブされてたんで、あの部品目指して技術力を引っ張り上げるのが特に」
「ここ数十年間反動来てないのが怖過ぎるんだよ!」
俺の能力のメリットは正しく神懸かってるけど、代わりのデメリットも破滅級なんだよねwww。
「で!ブツは?」
「こちらです!」
手の平の上にはチョーカー型のVR機器と思われる物が載せられていた。
は?冗談だろ?従来のVR機器は数十年前に
「……マスター?色々と聞きたい事が山ほどありますが、お幾らほど浪費されたので?」
「…………いやぁ?ぜ、ぜん、全部ポケットマネーで買ったしぃ???だ、誰にも迷惑は掛けてないし……」
「それは聞いておりません」
「……ぇ、ぇ、ぇっとぉ〜。数千兆円ほどかなぁ〜?って。…………へへへ」
「えぇっ!?あの部品ってこの前作ってたよく分かんない箱っぽいやつより安いんすね!逆にびっくりっすよ」
お、お、おまっ、お前ぇ!!今このタイミングで秘密をバラす奴があるかぁ!
見ろ!見てみろよぉ!!凛の髪が揺ら揺らと逆立って普段の大和撫子風な雰囲気が般若を通り越して菩薩になってんじゃねぇかぁ!
「ふふふっ。不思議ですね?マスターへの愛が溢れて止まらないです。この私の感情、是非とも受け取って欲しいのですが、お返事は如何でしょうか?」
声がすっごい柔らかくて表情もすんげーニッコリ笑顔なのに何でこんなに恐怖を感じてんだろうね?汗が止まらないや。
「あっははぁ〜。気持ちは嬉しいけど、ちょ〜〜っと用事を思い出したから出掛けるね?」
「逃げれるとお思いで?」
凛の身体能力をフルに活かした縮地は瞬間移動したように見えるほど早く、俺の唯一の退路は断たれた。
( m9(^Д^)プギャー ざまぁ!)
「お、俺はお邪魔み、みたいなんで帰りますね……プフッ」
(日頃の恨みここで全て返してやったぜ!!)
(普段から爆弾投下される気持ちってのを存分に知ってこいや!!)
出口付近で笑いを堪えてこちらを見ている開発部の監督は実に清々しい笑顔をしている。一旦地獄に落ちれば良いのに……。いや、駄目だな。それだと復讐にならん。
そうか!開発部だから爆弾を連投してワークデスマーチさせてやれば良いんだ!覚えてろよ貴様!
「さっ!奥のお部屋でたっぷり、ねっとり、オ・ハ・ナ・シ☆しましょうね〜」
「いや、まッ──グエッ」
俺の首を正面からがっしり掴んだ凛は、抱き寄せると同時にヘッドロックを行いギリギリと締め付ける。
頬に当たる膨よかなはずの感触は、気道を塞がず動脈を的確に締め上げ窒息ギリギリを保つ完璧な技術によってそれどころではなくなっていた。
「ごゆっくり〜」
その言葉を最後に希望の扉は閉ざされた。
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