4話 原因不明の踏破成功

 よく分からないが何故か魔眼王とやらが負けを認めていた。そして踏破したことになった。攻撃が通っていたんだろうか。正直あんまり効いている様子は無いな、なんて思っていたが他にできることもなかったので降りてきて抱き着くの繰り返しをしようと下で攻撃を受けながら待ち構えていた。



 そうしたら何故か魔眼王が負けを認めた。良くわからない。繰り返すが瀕死の重傷って感じでもなかっただろ。どうして急にという気持ちしかない。一日も付き合わされてうんざりしたんだろうか。それ以外に思いつく原因は無かった。



「ところでここはどこだ?」

 <神域に近い場所だ。今回は特例としてお前をここに連れてきた>

「うわっ!」


 答えが返ってくるとは思わなかった。俺の信仰することになった迷宮神イドナントの声だった。



「イドナント様ですか。何か御用でもあるんですか?」

 <踏破した褒賞の授与だ。信徒となって初めての踏破。お前には特別な加護を与えようと考えたためにここに呼んだ>

「なるほど……あとすいません。良くわからないうちに魔眼王とやらが負けを認めたのですが原因は何なんですか?」

 <お前の諦めの悪さに根を上げたのだろう>

「そうですか」


 根競べで敗北を認める迷宮主なんて聞いたことがないがたぶん蘇生上限なしで何度倒しても向かってくるのにうんざりした、というのは確かにあるかもしれない。蘇生の加護がいかに反則か本当によくわかった気がした。


 <まずは魔眼王討伐報酬か。本来なら討伐時に迷宮主に応じた物を何か落とすようになっているが今回は非常に稀有な例で迷宮主が生存したまま終わったため代わりにここで私が付与することする>

「あ、ありがとうございます」

 <これだ>


 イドナントがそう言った後目の前が光った。

 光収まった後そこには俺の腕にぴったりはまりそうな黒い腕輪らしきものが浮かんでいた。

「これは?」

 <魔力攻撃を一定量吸収しその魔力で腕輪に刻まれた魔術を発動させる神器だ。神器の中ではそれほど高位というわけではないが役には立つはずだ。受け取れ>


「ありがとうございます。助かります」

 素直にありがたく頂く。攻撃手段になるかは分からないが魔眼王みたいな魔法を使うやつには強い味方になるだろう。利き腕である右腕に身に着けると自分に腕にあっていた。俺の腕に合わせた大きさにしたのだろう。ってあれ一度取ろうとしたら取れない。おかしいな。

 ……いやまあいいか。外す意味もないか。


 <次に踏破報酬だが、お前の行動を見てお前には生存にかかわる能力を加護として付与するのが最もお前に向いていると判断した。完全とは言えないが不死だ。お前は才に乏しい。損傷を受ける機会が常人よりはるかに多いだろうからこの加護が必要になるはずだ>


「つまり今ついている蘇生ですか?」

 <それほど絶対的なものではない。だがお前が今回身に着けた再生能力と合わせれば強力な力となるはずだ>

「ありがとうございます。あれ? でも不死ってことは凄い病気にかかっても死ねないというとんでもないことになるのでは?」

 <病気が発生しない加護を同時に与えてやる。それで良いだろう>

「ありがとうございます! これでそうそう死ななくなったので助かりました」

 <強力な加護だろう。何故こんなものを与えたかわかるか? お前が一番信徒の中で才がなかった。だからそれを埋めるのに他の信徒より強力な加護を与えた。あとは迷宮主が死なずに敗北を認めたのは初めて観測した。珍しいものを見せてもらったから、というのも大いに含まれているか>


「はぁ……ありがとうございます」

はっきり無能だといわれると微妙な気分になるがその分強力なものが貰えるというのなら有り難いからいいのか。


 <無知が今回は力となったといえるだろう。だが、強くなることに貪欲たれ。より強く。そしてより踏破難度の高い迷宮に挑めるようにいつでも前に進む心を失うな>



 <神域迷宮をいずれ踏破して見せよ。まだ一度も踏破したものはいないが前に進む心を失わない限りお前にも可能性はある>


「神域迷宮? 分かりました。頑張ってみます」

 <ならば啓示を達成せよ。迷宮を踏破せよ。私がお前に求めるものはそれだけだ>


 その言葉を最後にイドナントはここから去ったようだった。


 良くは分からないが最終的に神域迷宮とやらに挑めという話らしい。行けるかどうかは分からないが迷宮神の信徒になったんだ。目指すしかないだろう。まあそれに

 人付き合いをするよりは迷宮で一人黙々とやっている方がはるかに気楽そうだし、それで良いか。


 ……カラベルムとかクレムのこととか人関係のしがらみはもう作りたくない。


 そして俺の目の前は真っ白に染まり意識が一瞬途切れた。





 グリフ 年齢19 男

 生命力 2523


 才能 生存適性(小)

 称号 死と踊る凡愚 


 所持技能

 歴史知識 7レベル

 クレム語解読 10レベル

 クレム語筆記 8レベル

 悪食

 飢餓耐性 30レベル

 悪意看破 5レベル

 打撃耐性 78レベル

 斬撃耐性 31レベル

 火耐性 46レベル

 氷耐性 23レベル

 酸耐性 81レベル

 肉体再生 66レベル

 痛覚遮断 53レベル

 不死 81レベル

 病毒無効

 迷宮内能力強化

 迷宮内成長強化

 迷宮生物士気低下(小)



 知力 12

 体力 85

 腕力 29

 魔力 337

 敏捷 22


 特筆事項 迷宮神信徒 死亡回数1000回到達 迷宮主未討伐踏破者



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