第14話 猫被
~プロプスダンジョン管理ギルド内 スクロイ視点side
こんなすぐばれそうな作り話じゃ流石に無理か――。
「グスッ、感動しました。お姉さんそういう話に弱いんですよ。特に可愛い男の子同士の……」
――いけたのか、後ろにいる部下共もこの女のチョロさに少し驚いていた。
「グスッ、わかりました、今回は特別にご協力いたしましょう。まずは身分を証明できるものか冒険者カードの提出をお願いいたします」
ここに来る前に俺は『イーダース』の冒険者ギルドで冒険者登録を済ませていた。ただ部下共は最近依頼を受けていなかったのでEランクまで落ちていた。
パーティー登録もしたがEランクパーティーだった。ギリギリここのダンジョンに潜れるが、それにしても次期領主のパーティーがEランクとは情けない。
―――――――――――――
スクロイ・ポルックス (男、15歳)
種族:人間族
冒険者ランク:F
ジョブ:剣豪
スキル:剛剣
―――――――――――――
「スクロイ・ポルックス様ですね――ポルックス?」
「すいません、色々事情がありまして、聞かないでいただけると有りがたいです」
「あっ、失礼いたしました。ダンジョンは初めてでしょうか? 初めてでしたらダンジョンのご説明をいたしますが?」
「いえ、後ろの三人がダンジョン経験者なので問題ないです」
「かしこまりました」
「えーと、それで兄の件は?」
「はい、
ディオ様達? もしかして奴もパーティーを組んでいるのか、少し厄介だな。
それよりも二十階層か、結構進んでいるな、良く分からんが。
「兄さんはいつもどのくらいの時間からダンジョンに潜っているのですか?」
「そうですね、大抵朝一番の乗合馬車で来て、夕刻前には戻ってきますね」
くそっ、朝一番かよ、面倒くせぇなぁ。
「そうですか、有難うございました、あっ後、僕がここに来ているのは内緒でお願いしますね、絶~対ですよ、兄さんを驚かせたいので」
「分かっていますよ」とウインクしてきやがった。
俺達は 闇ギルドで雇った奴らを待機させている森の中に戻り、今後の作戦を練ることにした。
まあその前に俺様の後ろで笑いをこらえていた三人をぶっ飛ばしてからな。
▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽
近くの森の中にある小さな小屋で闇ギルドの連中四人と合流する。この小屋は元々あった訳ではな無く、ここにいる闇ギルドの奴らが建てたらしい。
別に今回俺様からの依頼の為に建てた訳でもない。元々こいつら自体が数ヶ月前から『プロプスダンジョン』を攻略していて、近場にアジトがあった方が便利だから建てたようだ。
「で、旦那どうだったんだぜ? 上手く情報は手に入ったのか?」
闇ギルドのメンバーので、今回のまとめ役のジャヴェロットが聞いて来た。
「ああ、一応な」
「それは良かったぜ、ただ俺っちらだって別の依頼でここを離れていなかったら、ダンジョンを潜っている奴等の情報くらい普段ならすぐ分かるんだぜ」
「ああそうかい、でだ、今十五階層のボス討伐にハマっているそうだ」
「十五階層? ああゴーレムのコアか。今、とある国が戦争の準備をしていて需要があるから価格が上がっているんだろぜ」
「あ? 戦争にゴーレムのコアなんか使うのか?」
「そうだぜ、土系の魔導士とかが作る事が出来るゴーレムには、コアが必要なんだぜ、まあ要はコアの使い回しだぜ」
「へー、接近戦に弱い魔導士共は金が掛かって大変だな、それとだ、あとディオはパーティーを組んでいる可能性が高い」
「パーティー? そいつらも始末するなら別料金になるぜ」
「はぁ? ふざけるなよ、お前この前言っていただろ、ダンジョンは最初に攻略して行った奴の方が、良いアイテムや宝箱があるから、このダンジョンに来ようとしている強そうなパーティーは、ここに到着する前にこっそりと始末しているって、だったらそいつらだって攻略が進んでいるんだからお前らの排除対象だろ」
ディオとパーティーを組んでいる奴らはきっとディオより強い奴らだ。
なぜならディオも俺様と同じで今は少しでも早く強くなりたいと思っているはずだから。俺にはわかる。それなのにわざわざ足手まといになるような奴らと組むはずがない、組むとしてもディオの性格上もっと自分が強くなりダンジョンに馴れてからだ。だからディオのパーティーメンバーはこいつ等の排除対象になるはずだ。
「旦那ぁ、これはこれ、それはそれって言うだろ、まあ安くしておくぜ、ははは」
くそっ、舐めやがって俺様は次期領主だぞ。……だがまとめ役のこのジャヴェロットの
「くっ、それでどういう作戦で行くんだ」
「俺っちらは前の依頼が終わって数日前にここに戻って来ている。そしてすでにダンジョン攻略を再開しているんだぜ。数日前に三十階層のボスも倒したぜ」
そう、こいつらは俺達と一緒に『イーダース』の街から来たわけではなく、元々ここに居たのだ。『イーダース』にある闇ギルドに依頼しに行った時、そこのボスから依頼内容を書いた手紙を預かり、ここに居るジャヴェロットに渡すように言われて来たのだ。
「だから取りあえず旦那達は俺っちらと一緒に二十階層のボスまで攻略してもらうぜ、パーティーは四人までだが、一つのパーティーでボスを倒さなければいけないという規則はないんだぜ、報酬を気にする必要がないなら、ボス部屋の扉が閉まる前に滑り込めば何人でもいけるぜ」
「規則の抜け穴ってやつか? まあ八人で攻略すればすぐだろう、その後は?」
「それはまた二十階層ボスを倒してからだぜ、あちらさんの状況次第で変わるぜ」
「そうか、で、いつ出発するんだ? 着いたばかりで今日はもう休みたいんだが」
「旦那ぁ、なに甘い事と言っているんだい、急いで行かないとあちらさんが二十階層のボスも突破しちゃうぜ、そうなると今度はこっちがその先を攻略しなくてはならなくなるから時間と金が掛かるぜ」
「くそ、分かった、分かった、必要なもの買い揃えてすぐ行けばいいんだろ、ただちょっと時間かかるぞ」
「一緒に行動すると目立つので、俺っちらはこの小屋に『魔物除けの結界』と『人払いの結界』を張り直したら、先にダンジョンに行っているぜ、一階層で待っているから早く来るんだぜ」
俺様はダンジョンを舐めていた、ジャヴェロット達が居なかったらあっという間に死んでいただろう。こんな所をディオは攻略して行っているのか、ディオが強いのかそれとも仲間が強いのか分からんがどっちにしろ、俺様も本気で強くならねばいけないようだ。
このままではディオと対面した時、俺様は役に立たないから――。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます