第7話 毛皮

 途中何度かゴブリンやコボルトなど魔物の襲撃に有ったが、無事『プロプスの街』に辿り着いた。



~プロプスの街 冒険者ギルド


 メブスタさん達はギルドの受け付けで今回の報告や、亡くなった冒険者の遺品の提出等をしていた。

 その間暇だった俺は、ギルドの依頼掲示板に貼っている依頼書を眺めていた。

 俺のランクで受けれそうなのは『薬草採取』『スライム討伐』『ゴブリン討伐』『コボルト討伐』『ポイズンスネーク討伐』『森ウルフ討伐』辺りか。 

 ポイズンスネークと森ウルフは素材の買取りもあるな。


 しばらくすると受け付けのお姉さんに呼ばれた。

 本来は俺のランクでは護衛依頼は受けられないのだが、今回の様に事情がある場合は特別に指名依頼として考慮してくれるらしい。たまにあるそうだ。


「盗賊討伐の報酬も出ますので冒険者カードの提示をお願いします」


 カードを渡し、水晶に映る俺のステータスを見て、お姉さんは少し驚いていた。


―――――――――――――

ディオ (男、15歳) 

種族:人間族

冒険者ランク:E


ジョブ:ものマネ士

スキル:ものマネ

―――――――――――――


 俺も水晶も覗いてみた――おや?『称号』も表示されないのか、要らないけど。


 ただ少し気になったので受付のお姉さんに聴いてみると、冒険者ギルドなどにある水晶は昔、遺跡から発見された『アーティファクト』と呼ばれる古代技術で作られたアイテムを解析して作った物だと言う。

 オリジナル版はもっと詳細なステータスを見ることが出来るらしいが、量産されてギルド等で使っている劣化版はそこまで性能は良くないと教えてもらった。


 もしかしたらそのオリジナル版を使えば、俺にステータス補正が付いているかどうか分かるかもしれないな。


「えーと、ディオさんですね、えっ? 冒険者ランクは『E』ですか……結構な数の盗賊を討伐したと聞いていたので、もう少し高ランクかと思っていました」


 メブスタさんや護衛の人達も驚いていた。


「ええ、まあ、最近冒険者になったばかりなので」


「そうですか、ではこちらが盗賊討伐の報酬になります。お受け取り下さい」


 思っていたより報酬が多くて驚いた。


「それではわたし達はこれで。何か御用があれば『アキンド商会』までお越しください。ではまた」


「じゃあな兄ちゃん」


「こちらこそ、お世話になりました」


 メブスタさんや護衛の人達はギルドを出て行った。


「そういえば、来る途中で倒した魔物の討伐証明部位を持っているんですが、ここでも処理できますか?」


「随時討伐依頼を出している魔物でしたら、依頼達成と報酬を出せますよ」


「ゴブリンとコボルトです」


「それでしたら随時討伐依頼の魔物なので、買い取り窓口へお出し下さい」


 ドサッドサッドサァァァァァ 


「……結構ありますね、最近街の周りにも魔物の出現が多くなって来ているので、ギルマスに相談して一度大々的に魔物討伐した方がいいのかもしれませんね」


「もう一つお聞きしたいことがあるんですが、ダンジョンが出来たと聞いてこの街に来たんですが、場所はどこでしょうか?」


「場所はこの街の北の門から乗合馬車が出ておりますので、それに乗れば一時間も掛かりませんよ。ただ新しく出来たその『プロプスダンジョン』は、冒険者パーティーならパーティーランク『E』以上、ディオさんの様にソロでしたら『D』以上なければ入れませんよ」


「……『D』以上か」


 話を聞くとダンジョンは国の管轄になっていて、冒険者ギルドで管理しているパーティーランクや冒険者ランクでダンジョンに入れる人の制限をしているが、それ以外では深くは関与していないとの事だった。


 なので、とりあえず冒険者ランクを上げるかパーティーを組む事を進められた。ダンジョンの入り口付近には『ダンジョン管理ギルド』の建物があり、そこでもっと詳しい話は聴けるし、さらにそこでは案内人や荷物持ちも雇えるとの事だった。

 と言う訳で、まずはこの街で依頼を受けて冒険者ランクを上げる事にした。


――――――――――――――――――――

・依頼難易度:E

・依頼内容:プロプスの東の森のポイズンスネークの討伐

・討伐証明部位:ポイズンスネークの尻尾

・報酬:1体に付き小銀貨貨1枚

・買い取り素材:毒袋(但し破損のある場合は買い取り不可)

・期限:随時

――――――――――――――――――――

・依頼難易度:E

・依頼内容:プロプスの東の森の森ウルフの討伐

・討伐証明部位:森ウルフの尻尾

・報酬:1体に付き小銀貨貨1枚

・買い取り素材:牙、毛皮

・期限:随時

―――――――――――――――――――― 

 以上、二つの依頼を受け、先に宿を取り、東の森へと向かった。


▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽


 森の中を少し探索していると何かの気配を感じた。

 草場からニョロニョロっと魔物が顔を出した。ポイズンスネークだ。


 シャー!


 威嚇しているな、裏側に毒袋がある顔の辺りは傷つけないように倒さないと。

 すると突然俺の足元めがけて飛びかかって来た。


 早い!っが。


 俺は半身で攻撃をかわし、そのまま首を切断した。

 ポイズンスネークは声をあげること無くそのまま絶命した。

 

 解体用のナイフを取り出し傷つけないように毒袋と尻尾を切り取った。


 ポイズンスネークの血の匂いに誘われたのか、また何かの気配を感じた。

 一匹じゃないな……。五匹の狼が現れた。森ウルフか、群れは厄介だな。


 グルルっと唸りながら俺から一定の距離を保ち、円を描くように歩き回る。

 その内、俺の事を警戒するほどの獲物でもないと判断したのか、一匹が俺に襲いかかってきた。そしてその後を追うように残りの森ウルフ達も飛びかかって来た。


 ガゥゥゥゥゥ! ガチッ


 最初の一匹の牙を『パリィ』で受け止め、そのままそいつを他の森ウルフに向かって勢いよく投げつけた。


 キャインッ キャインッ――これでまだ飛びかかって来ているのは後二匹。


「『二連斬り』!」


 ギャンッ ギャンッ


 その二匹の森ウルフの首を前足ごと斬り殺す――残り三匹。

 よし、ここで「『スライムの鳴き声』!」、『ピュー、ピュー』

 ガサガサ ピヨーン


 森ウルフ達は突然現れたスライムに一瞬気を取られた――今だ!


「(スライムの鳴き声マネ解除)、『二連斬り』!」


 ギャンッ ギャンッ


 二匹の森ウルフの首を跳ねる。残り一匹。俺が残った森ウルフに目をやるとゆっくりと後ずさり――そして逃げて行った。それを追うように召喚したスライムも逃げて行った。


「ふぅ」


 それにしてもあいつ一番大きかったし、ボスだったんじゃないのか?

まあいいや、それより他の魔物が来ないうちにこいつらの素材を剥いどくか。

 尻尾と牙と後は毛皮か……。しまった魔物の毛皮剥ぎとかやったことが無い。

 四匹分か、うーん今回は毛皮を諦めるか。盗賊討伐の報酬も貰ったし、それほど金に困っているわけじゃないからな。よし今日はもう戻ろう。


▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽


 その次の日からも討伐依頼を受けたり、毛皮剥ぎの練習をしたりして過ごし、数日後やっと冒険者ランクが『D』になった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る